リデア・ユークリフの場合

昔から他の人と好みが違うことはわかっていた

一般的にモテると言われる体系は肉だるまのようだと思っていたし、痩せ型といわれるみんなに忌避される姿をしている人に心をときめかせてしまう。公爵家の娘としてなんでも手に入る立場ではあるものの、一般的にモテるといわれるその体系の主たちと婚約を結ぶことになるのだろうから自分の理想の男性と婚約できることはまずないだろうと思っていた


姉のことが嫌いだった

姉を女神のように持ち上げている第二王子の感性を疑っていたし、第一王子じゃなく第二王子と婚約することになって可哀想だからとなんでも姉の言うことを聞く両親の姿に嫉妬していたことも正直ある

だが、何より一番許せなかったことは

姉が自分の物差しで生きていたからだとあの日気が付いてしまった


ある日第二王子に会うために出かけたレデアナは馬車の縁に頭を打って気絶して帰ってきた

家が大騒ぎになっている中その悲報を聞きつけた第二王子が見舞いをしている間に気絶から目覚めた姉は何故か知らないがそのままダイエットなるものを父親と婚約者。はたまた自分の配下の者たちに命じた

拒否するものや拒絶するものを宥めすかして、時には脅しながらも始まったダイエット計画は見る見るうちに結果を出して

家族の者は全員肉だるまから良質な筋肉を持つものへと変貌を遂げた

初めて一般的には美形と呼ばれる父親の瞳の色が桃色だと知ったときは驚きを通り越して思わず吹き出してしまったことを覚えている。正直に言うと私の好みにはそぐわなかったが、生粋の価値観を持っている母親の好みには直結していたらしくメロメロになっていたのもいい思い出だ。ちなみに姉は同じく吹き出していた


私が変わらないと思っていた世界を姉は5年の歳月で自分の周りだけだが変えていった

私があきらめていたもの全てを塗り替えていったのだ

姉は変わったと周囲は言って、姉は変わっていないと両親や王子は言う

私は姉は変わったのだと思っている。その心ではなく、その在り方が変わったのだ


姉の物差しが今までこの世界基準だったが、何らかの原因で別の世界の基準に代わってしまったかのような感覚が一番近いだろうか

性格や感覚が変わってしまったのではない

姉の判断基準が変化して変わって見えているだけでいつだって姉は自分の理想のために自分で行動して周囲を変えていっていた

女神と慕う第二王子の周囲を変えていった時のように今は自分の周囲を変化させている。ただ、変化させていく範囲が広がっただけだ


それを理解したとき思ったのだ

私は姉には叶わない。姉が嫌いだと思っていた部分はここだったのだと


私は私がおかしいと考えて行動することはせずにただ諦めていただけだった

姉のようにおかしいと声を上げ立ち上がろうともしなかった

そんな私にも姉は手を差し伸べる

いつかのように自信たっぷりではないが柔らかい笑顔はあの日。幼いころ迷子になったときに安心させようと浮かべたものと何も変わらなかった


私は姉が嫌いだった

でも、今は大好きだ

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