第54話 巨人族との戦い4

「うぉおおおお!!あれを取り外すしかない!行くぞ!!」


 波打つ肉の海とも言える巨人肉塊の上に降り立つ地竜を爪を突き立てながら前進していく。ここで瑞樹たちが直接降り立ってしまったら、まるで巨大な波のように蠢く肉やランダムにボコボコと生み出される暴れまわる腕の波などここから降りたら間違いなく振り落とされて地面に叩き落されてトマトのようになるのが落ちである。

 さらにそれだけではない。その肉の地面から生えた無数の腕は地竜に乗った瑞樹たちを絞め殺さんと言わんばかりに一斉に迫ってくる。


「はぁああっ!!」


 その迫りくる巨大な無数の腕に対して、詩音が剣を振るうとまるで豆腐のように次々と切り飛ばされていく。切り飛ばされた腕は振るわれる剣の衝撃波と真空刃で切り裂かれていく。そして、その腕の肉の残骸はべちゃりと次々と肉の地面に落ちて次々と吸収されていき、さらに再生していく。

 それだけではやはり足りないと思ったらしい肉塊巨人は、今度は肉の地面がいきなり縦に割れ、そこが左右にいきなり開き巨大な「口」へと変化する。その口は地竜諸共彼らを飲み込み、かみ砕こうというのだ。


「うわぁああ!!回避しろぉおお!!」


 瑞樹の指示により、とっさにサイドステップを行うことでその口を回避した地竜。だが、それだけではなく肉の地面が割れ、次々と口が出現してがちがちと地竜を飲み込んでかみ砕こうとする。縦横無尽肉の床が口まみれになっているのを見て、これ以上無理矢理肉の地面を進めるのは危険である、と判断した瑞樹はホバリングを行うように地竜に指示を出す。


「グァアアアア!!」


 いわば落とし穴だらけのこの場所をこれ以上歩いていくのは難しい、と判断した瑞樹は地竜にホバリング……匍匐飛行を行いながら接近しろ、という指示を飛ばす。空竜ではない地竜ではあるが、それでも最低限の飛行能力程度は有している。スレスレを飛行する地竜に対して、今度は目標であるはずのダンジョンコアを有した巨人の頭は肉の中に一度引っ込み、全く違う場所にボコっと姿を現す。

 そして何度もボコボコと引っ込んだり出たりするその姿に思わずもぐら叩きか!と瑞樹は心の中で突っ込んでしまう。まるでこちらをせせら笑うようなその動きに、思わずパーティの皆はイラッとしてしまう。だが、こちらもそれを指を加えてみているだけではない。

 それに対して、魔狼が飛び出して大狼へと変貌し、無数の大小様々な口が存在する肉の床を疾走する。恐らく、ダンジョンコアの魔力の匂いをその鼻で探知した彼は、次に出てくる首の的確な場所を探知できるのだろう。大狼はそのまま生えてきた頭の首に全力で噛みついていく。そして、噛みついて固定されてしまってはもう無理矢理自分の肉の中に頭を引き戻すことはできない。無理矢理引き戻したら自分の首を自分で引きちぎる羽目になってしまうからだ。

 固定されながら大声で吠える巨人の頭。その首にさらにあちこちに機械の光沢を宿した地竜と化した多脚戦車も突撃し、さらに首へと噛みついていく。


「よし!このまま突っ込むぞ!!」


 瑞樹はそのまま地竜の首を足場にしながら駆け抜けて、そのまま巨人の首へとしがみつき、手足を使って必死で顔をよじ登る。そして、その額にあるダンジョンコアをナイフでえぐり取ると、巨人たちはいっせいに悲鳴を上げた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 19:00 予定は変更される可能性があります

現代無能冒険者、最強のダンジョンコアと命を共有して魔物使役スキルで迷宮災害侵攻に立ち向かうようです。 名無しのレイ @rei-rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画