第53話 巨人族との戦い3
そして、さらに同士討ちしている巨人族を掻い潜りながら、瑞樹たちは進撃していった。
狂暴化しているのか、ダンジョンの壁を平気で突き破ってくる巨人族。そして最も恐ろしいのは、散弾のように撒き散らされる壁の破片だった。その高速で降り注ぐ無数の破片は、容易く人体を引き裂ける力を持っていた。
『グルルル!!』
「オタクくんたちは下がっていて!《聖盾》っ!」
その飛び散る破片を防御するのは、地竜と化した多脚戦車に、姫奈の防御神聖術である。
地竜の鱗……装甲はその程度などびくともしない。彼らは戦うよりもすり抜ける事を選び、道を塞ぐ巨人族を地竜が体当たりしてなぎ払ったり、その足元をすり抜けたりしながら走り抜け、何とか奥へと進んでいた。
「うおー!走れ走れー!!とにかく急げー!」
そんな大混乱の中、ワイバーンと化したドローンを先導させ、メカニカルな地竜が盾代わりになり、大狼に乗った姫奈が聖盾を展開、そして詩音先生が迫りくる巨大破片や巨人の手足を切り裂いてひたすら進んでいた。
そして、ついにダンジョンコアが存在するであろうその階層は、異常な光景が広がっていた。
「うわっ!何あれ!マジキモっ!」
それはダンジョンコアを中心に、数十もの巨人の体が融合しており、そこから無数の手足がランダムに生えているという奇怪な姿だった。
恐らくは巨人を生み出す機能が暴走してあのような醜い巨大な肉塊が出来上がったのだろう。
その肉塊は無数の手足をバタつかせながら、轟音を立てながらこちらへと突進してきた。
「皆!地竜の背中に乗れ!回避だ!」
突撃してくる巨体ビルそのままの質量攻撃に、まともな人間など、すぐさま踏み潰されてしまうのがオチだ。まともにぶつかり合いをすべきではない。
そう判断した瑞樹は地竜の背中に皆を乗せて、そのまま跳躍して地竜ごと肉塊巨人へと張り付いていった。
「うわああああ!」
必死になって地竜にしがみつく皆。そして、地竜は必死に肉塊巨人にへばり付くと、爪を突き立て、肉塊巨人に噛みついて肉を噛みちぎっていく。デカブツは逆にへばりついてしまえばその攻撃力を発揮するのは難しい。
それを引き剥がそうと、無数の腕が地竜へと迫りくるが、それらは全て詩音が振るうミスリルの剣による斬撃によってまるで豆腐のように切り裂かれていった。
「生徒を守るのは先生の役割だ!お前達しがみついておけ!ハァアアアッ!!」
詩音の一撃により、100メートルにも及ぶ肉塊巨人は、一刀両断、まさしく真っ二つに切り裂かれる。一刀両断にされて生き延びられる生物などいない。だが、それでも肉塊巨人は二つに別れた傷口同士がくっつき合い、ウジュルウジュルと再生を開始した。
それならば再生が出来なくなるまで粉微塵になるまで切り飛ばすまでだ、と詩音が身構えた瞬間、姫奈はすっとんきょうな声を出した。
「あ!」
彼女は、無数にある巨人の頭の一つの額の部分に埋め込まれている物体、つまり「ダンジョンコア」を発見したのだ。
「オタクくん!アレだよ!ダンジョンコア!あれさえもぎ取れば巨人も活動停止するはずだよ!頑張ろう!!」
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