第52話 巨人族との戦い2

 何とか巨人の一体を倒した瑞樹たちだが、それでもまだまだ巨人たちはどんどんダンジョンの壁からこちらに入り込んでこようとする。

 それどころか、巨人同士で同士討ちすら行う有様だ。巨人たちは他の巨人の首を絞めたり、ほかの巨人に対して噛みついたり肉を噛みちぎったり、まさに戦うところではない大混乱になりつつある。

 となれば、彼らとすれば統率も取れていれず、ただ暴れまわる脳筋の巨人たちなどさっさと回避して逃げるのが一番ではあるのだが、それらの巨人たちを薙ぎ払いながら、背中からさらに手が生えているヘカトンケイルにも似た巨人が他の巨人の頭を握りつぶしながらこちらに迫ってきていた。


「ガァアア!!」


 その巨人は、他の巨人の頭を握ったまま巨人を投げ捨てると質量兵器と化した巨人はこちらへと迫りくる。

 さすがにあれだけの巨体では聖盾では防ぎきれない、と判断した詩音は、自らの剣を振るいその巨人を両断する。そして、その両断された巨人の間を潜り抜けるようにして、地竜と化した元多脚戦車が複数腕巨人へと襲い掛かっていった。


「ゴァアアッ!!」


 さらに巨大化した地竜は、瑞樹の指示により複数腕巨人の喉元へと噛みついていく。人型であれば弱点も人間に似た形になるだろう、という彼の判断である。喉元に食いつかれた巨人はジタバタと手足を動かしながらもがき、その四本の腕で噛みついた地竜を引きはがそうとする。だが、ただで引きはがされる地竜ではない。必死で噛みついていたのを引きはがした結果、巨人の喉もついでにバリバリという音と共に引きはがされ、大量の血が噴水のように吹き上がった。

 そして、さらにこちらに迫りくる巨人たちに対して、地竜が口を開くと喉から多脚戦車に装備されていた無数の魔術砲台がせり出してくる。これが、竜のブレスの代わりの彼の攻撃である。そこから放たれる加速された魔力粒子の光がこちらに向かってくる巨人族たちに叩き込まれ、彼らは次々と粉砕されていった。


「よし!今のうちだ!その巨人の死体を壁に押し込めろ!!」


 瑞樹の指示により、地竜は喉が破れて死亡した多腕巨人を空いた穴に無理矢理押し込めてこちらへと入ってこれなくするための、壁の代わりへとする。

 彼の狙いとおり、死体が邪魔してほかの巨人族はこちらへと侵入できなくなっていた。そして、その隙を狙って、彼はダンジョン内を進行していった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る