やりきれない、それゆえに「リアル」

本作を拝読して驚いたのは、これほどの濃密な内容を見事に構成された作者様のご手腕についてです。
具体的にはご自身の目でぜひご確認していただきたいとしか言いようがありません。

内容は実にやりきれないものですが、それゆえに「リアル」であると思うのです。
あたかもそれは現実世界の縮図であるような……

それぞれがそれぞれの理念や正義を持っている、しかし――
これ以上の文言はむしろ無粋でしょう。
それほどの名作です。

「モーツァルトのオペラには端役がいない」という言葉がありますが、それを思い出した次第です。
多くの方に読んでいただきたいと思います。