LADY―Mの誓い
綴。
第1話 LADY―Mの誓い
私はLADY―M。昔から何となく付けられたあだ名が気に入っていて、今も使い続けている。きっかけ? そんなのは覚えてないし、そもそも何でLADY―Mになったのかも覚えていないのだ。
ちっちゃなことは気にしない、ようにしている。
身長は164cm。
母親はいつも私を羨ましいく思っているらしい。
「いいねぇ、あなたの身長はちょうどいい! 色は別として、どんな服も似合う! ロングスカートもパンツも!」
確かに、パンツ類の裾は切ったこともないし、ワンピースもロングスカートも履けばそれなりに形になるし靴のサイズも豊富にあってお洒落は楽しめる。
そんな私の欠点は、細すぎる事だ。
……決して嫌みなどではなく、私にとっては大きな悩みなのだ。
「LADY―M、細いのはいいけどさー、胸がないよね? もう少し太ったら? 色気がでるんじゃない?」
「なぬー!」
「だってさー、前と後ろの差がないじゃん!」
って、親友には笑われている。
「胸がないのは親の遺伝だからねー!」
「あー、確かに!」
「あー、って言うな!」
母親はひとりで私をここまで育ててくれたので、こんな私でも感謝をしている。
けれど、私は少々困った娘だろうと自分でも自覚がある。服が好きでたくさん買ってしまうし、化粧品やアクセサリーを集めるのも大好き! そして、推し活に使うお金も惜しまない。毎月のお給料もほとんど残らない。
まぁ、何とかなるだろう精神でいきているから。
推しの為に地方へ出かけ、美味しい物をたらふく食べて帰ってくる。
「結構な量がありますけど、大丈夫ですか?」
「はい!」
「お姉ちゃん、無理せんと残していいからね!」
「はい、ありがとうございます!」
そんな店員さんとの会話はほぼ毎回だ。
「あらっ、キレイに食べたねぇ、大丈夫?」
「はい、ごちそうさまでしたー!」
ほら、今日もまた言われた。
そして、新しい年を迎えた。我が家では何となく毎年目標などを決める時期。
「さて、今年は旅行でも行くお金をためようかねー」
母親はそう口にした。
「うーん、私はどうしようかなぁー」
しばらく考えて決めた。
「よしっ!」
「おっ? 何?」
「無駄遣いをする前には、ちょっとだけ考える!」
「えっ? はっ? 考えて買うのを辞める?」
「いや、考えるだけっ!」
「なんやそれ!」
母親には笑われた。
そんな会話をしながら、母親とうどんを食べて帰宅をする。
「あ、もういっこ決めた!」
「何?」
「うどんは特盛からにする!」
私はLADY―M。
新しく迎えた年の始めに誓いを立てた。
無駄遣いをする前に、とりあえずちょっとだけ考えてから新しい服を買った。
うどんは大盛では足りなかったから、次からは特盛で注文することに決めた。
―― 了 ――
LADY―Mの誓い 綴。 @HOO-MII
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