あとがきおよびメモ

あとがきおよびメモならびに用語解説

こんにちは。

こんばんは。

普段はあとがきはあまり書かないのですが、メモとして残しておきます。

本作は2019年に手をつけ、6万文字ほど書いたあと、途中色々挟みながら2023年末に再開して書き上げたもの(2024/01/04初稿)になります。


藤元杏シリーズを書いていくなかで優斗たちのバックグラウンドとして登場していた「神様事件」を書いたものになります。

ですので、初期プロットは2009年頃になります。

藤元杏シリーズとの設定の相違点は主に二つです。

・月村加耶の現場に水樹がいない。(これは結界的なもので云々で済むかもしれません)

・紫桐芹菜が事件の記憶を保持していることを優斗も認識している。(これは結局吐露せざるを得なかった可能性もあります)



以下、本作品に登場した「道具」の元ネタ、道具としての効果になります。(元ネタと効果とは関連性があまりないものもあります)


蜘蛛の糸……蜘蛛の糸/芥川龍之介

繭状の糸。端を持つ人間の意思通りに動く。超自然物なものに耐性があるため、ぐるぐる巻きにして捕縛することが可能。


佐助の針……春琴抄/谷崎潤一郎

縫い針。持ち主の意思に従い、対象者の、特に眼球に突き刺さる。


ダオロスの光……ベールを破るもの/ラムジー・キャンベル

野球ボール程度の大きさと推定されているが、誰も正しく形状を知覚することができない。淀み溜まり、混血、魔術の痕跡の位置だけを「反射」する光を放つ。超広範囲型。所有者の能力に影響され、賀茂の全力では街一つ分の探索ができた。「反射」の対象となる存在は光を直視してはいけない。この「光」や「反射」が本当は何を意味しているのかは不明。サーチライト。


ニュートンリング……接触させた2つの凸レンズもしくは凸レンズと透明な板に光を当てたときに観察される同心円状のリング(Wikipedia)

淀み溜まりの位置を特定する。近距離限定。


奇妙な遠眼鏡……奇妙な遠眼鏡/夢野久作

黒縁の眼鏡に嵌め込まれたレンズ。度は入っていない。視界や空間認知を利用して干渉する異能、魔術を無効化する。レンズでシャットダウンしているわけではなく、所有者の脳に逆位相の波を発して相殺しているらしく、かけ続けるとその負荷で発狂してしまう。


恋する蘚……第七官界彷徨/尾崎翠

小瓶に入っているコケ。握るとほのかに暖かい。

生命体の欠損部位に寄生して同等の機能をもたらすことがわかった。


サラサーテの盤の欠片……サラサーテの盤/内田百閒

1/4になったレコード盤の欠片。所有者の存在感を薄くする。いたと言われれば確かにいたような、レベルになるらしい。ただしすでに認知されている場合は効果がない。バームクーヘン。


猿の手……猿の手/W・W・ジェイコブズ

本編未登場。猿の手。所有者の願いを、対となる不幸と引き換えに叶える。


ミスリルナイフ……本作オリジナルもしくは他作品「アンダ・ヘブン」より

異端討伐組織「使節」謹製汎用武器。刃に魔術文様が刻まれており、異種や混血に対してダメージを与えることができる。あまり貴重というわけでもない。様々な形状がある。詠唱、聖水、との三点セットで通常は使われる。


こわれ指環……こわれ指環/清水紫琴

宝石のはめられていない指輪。魔術、非物理異能に対して抵抗力を持つ。基本的には使い捨て。ある程度量産が可能らしい。日本製。


忘れな草の露……わすれなぐさ/吉屋信子

青い宝石。ペンダント。魔術、非物理異能の効果を軽減する。「呪い」を軽減するのにも使われた。


ガラスの星……ナガレボシ/新美南吉

ビー玉。指定した対象にどの方向からも「落ちる」。攻撃力自体はそれほど高くはないが、打ちどころが悪ければ骨折はする。玉自体は意思を持たず、単純な命令を実行しているだけのため、不意打ちなどに役に立つ。耐久力もビー玉程度。


反魂香……中国の故事等

タブレット錠。ライターなどの種火が必要。対象者を包み、対象者にとって不快な幻想を見せる煙を出す。視界を遮るのにも使える。体験者によると、自分にとって馴染みのある死者が出てくることが多いらしい。効果時間は約一分。


銀河鉄道のチケット……銀河鉄道の夜/宮沢賢治

細長いチケット。晴れた夜に半券をちぎってもっていると、どこからか蒸気機関車がやってきて、黒い手に引きずられてどこかに連れ去られてしまう。戻ってきた人間がいないため行き先は不明。複数枚の存在が確認されている。


人形遣いの鏡像……本作オリジナル

フルオーダーメイドの人形。本人が眠っている間のみ、自由に活動をすることができる。本人と同様の動きができるが劣化版になってしまう、またダメージを減衰しながらも本人にフィードバックしてしまう。人形製作者は複数人いる。賀茂の人形製作者は連続殺人鬼のため逃亡中。今回街に立ち寄ったのはこの人形を受け取るためでもあったが、あえなくすぐさま喪失することになった。桂花が賀茂を見て「そんななり」と言ったのは人形であることを見抜いていたから。


レーテー川の水……ギリシア神話での黄泉の国にいくつかある川の1つである。川の水を飲んだ者は、完璧な忘却を体験することになる。(Wikipedia)

青いカプセル状。本人にとって嫌な記憶と認識したものを過去一週間に渡って消去する。消えた期間の記憶は齟齬がないようそれらしい記憶で上書きされる。参考取引価格三千万円。


葬式饅頭……夏の葬列/山川方夫

大きめの饅頭。賞味期限不明。非常に美味で一口食べるとついつい食べ切ってしまう。食べると「永遠に続くかのような罪悪感」に囚われることになる。実際は消化しきると罪悪感も消えるため永遠ではない。これを好んで食べる一部フリークもいるとか。


桜の古木……桜の樹の下には/梶井基次郎

15センチほどで枝分かれをした古びて乾燥した木。先端に枯れることのない花が咲いている。「この世でもっとも大切にしているものの死、あるいは完全な破壊」と引き換えに望みを叶えてくれる。ただし、本人が直接手を下してはいけない。誘導することはよいらしく、また願えば運命がそうであるかの様に傾く。一度使うと前提条件の存在が消えてしまうため、複数回の使用が可能かは不明。削った粉を飲むことでも同様の効果があることがわかった。


本編特殊用語

・異種

 妖怪、精霊(の一部)、あるいは化け物などと言われている存在。人間とは異なる特殊な能力を持つことが多い。人間と同様の知性を持つ場合が多く、異種によっては対話もできるとされているが、大抵は人間に悪影響を及ぼす結果になるために使節には存在自体が討伐理由とされている。アメリカでは軍に協力している異種もいるという噂もある。


・混血

 異種と人間が交わった結果生まれたもの。交わる、の方法は様々。総じて身体能力が高く、特殊な能力を持つ。先祖返りのように突然能力が発現する場合もある。長期間の能力使用により、「血に負ける」状態になり、自我が崩壊してしまう。


・魔術師

 純粋な人間のうちでも極一部の人間だけが扱える技術を持つもの。大抵は家単位。ある目的のため、あるいは真理に到達するために研究を重ねている。利己的な人間が多い。


・使節

 ヨーロッパを中心に活動する異端討伐組織。正式名称は不明だが、自分たちも「使節」と名乗っている。異種、混血の排除を主に掲げている。5つのエレメンツと呼ばれる魔術師家系、3つの騎士団、1つの異物管理部門、1つの現代兵器利用部門、および1つの統括家系、の11に分かれている。統括家系を中心に評議会が行われるが、現代兵器利用部門はその席に入っていない。エレメンツ同士は割合仲が悪く、騎士団同士は仲がいい。世界中にコネクションを持ち、資金や異物と引き換えにその地の異端を討伐することもある。この手の組織では古く、また最大手。


・魔法士

 「魔術」を「魔法」として主に「戦闘」の道具として利用する人々のことを指す。魔術師が研究者なら魔法士は実務家。真理の探究を至上命題とする魔術師からは白い目で見られることも多いが、実務に活かすこともない魔術師を軽んじている魔法士もまた多い。


・騎士

「使節」の騎士団に所属する、魔術の素養を持ちながらもそれを剣技に特化させた人間。3つの騎士団があり、それぞれ、対異種、対混血、対魔術師に分かれているらしいが実際はどの任務にもつく。


・統世五見

 日本に存在する、あるいはしていた魔術師集団。日本の魔術師を統括するものとしての機能の他、異端を「管理」する組織でもある。そのため異種や混血との排除については積極的ではなく、時には協力関係になる。日本で混血が多いのはそのため。「神楽」をトップとして、他4つの家、およびそれらの分家等で成り立つ。第二次世界大戦前後に衰退して、日本全体に影響を及ぼすことはなくなった。現代ではその役目を国家組織に委ねており、統世五見が積極的に何かをすることは少なくなった。「月村」は特殊な管理地域、特に神楽が直接管理する地域に異変がないかを監視することを主な任務としており、「夜警」と呼ばれている。


・淀み溜まり

 なんか雰囲気が悪いところ。主に空気の流れが悪い地下、湿地、沼、突き当り、などが該当し、何らかの超自然的なことが起こりやすい。また魔術師が人工的に創り出すこともある。異変を感じたら引き返すこと。


以上です。


結局のところ、人が誰かを助けようと思うのなら、それなりの能力と覚悟が必要で、でも他に誰かがかわりに救いの手を差し伸べそうにもなくて、という状況で、私たちはどうしていけばいいのか、というようなふんわりしたお話でした。

(まあでも、助けたいという意思は尊重したいよね)


優斗と芹菜の物語はこれで終わりです。

さしあたり続編等の予定はありません。

賀茂が出る話、もしくはこれらの設定を利用した何かを書く可能性はありますので、ご要望あれば教えてください。割と人の意見に左右されます。

旧作になり小恥ずかしい気持ちになりますが、使節の話が読みたい場合は「アンダ・ヘブン」、賀茂の話が読みたい場合は「欠陥だらけの多面体と永久なる人形姫」が関連小説になります。 今回出てきた登場人物がサブキャラとして日常に過ごす作品は「藤元杏はご機嫌ななめ」です、こちらが一番おすすめです。


一言でもいいので感想をください。

もらえるととても喜びます。


ちなみに自分の一番好きなセリフは、第五章「こわれ指環」7の

「僕は何をすればいい?」

「祈り」

です。みなさんも好きなセリフや場面があったらレビューとかで書くついでに教えてね!

レビューがいっぱいあると人気っぽく見えるので。


じゃあまたね!

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神様事件、その発生、経過、結末について 吉野茉莉 @stalemate

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