最終話 モノローグ

そこには美しい景色があった。


誰かを想う事の大切さや厳しさそして幸福があった。

深く深く潜るとそこには見た事がない景色があった。


上ばかり見ていた。

だから深さがある事に気が付かなかったのだ。

たくさんの人との別れがあった。

たくさんの人との出会いがあった。


星がまわっていく。



何度まわったのだろう。

もう覚えていない。


地面からの高さと水平線を見つめる視点。

そこに深さが加わって奥行きが出た。


今の僕には大切ななにかや守らないといけない約束が増えた。

嫌な気は。特別しない。


僕は満天の星空が見たかったんだ。

それしかいらないとさえ思っていた。

確かに満天の星空だってとてもとても素晴らしい光景だ。


しかし瞬間でしかない。瞬き一つでなくなってしまう。

幸福も瞬間でしかないが鮮烈な記憶でいつでもそこに君がいる。


それは15年前の記憶だ。

あの時君は虹の橋に行った。



そこから今の僕がある。

いつだって思い出せる。

けどいつでも忘れてしまう。


たくさんの人との思い出だって全て思い出せるわけではない。

しかしその時誰かがいてくれたから


もしくはそのときの誰かの言葉から始まったことで

今の僕を形作っていく。


無言だって言葉だ。

強く大切に思う人に何もしない事は難しい。

なかなか難しい。


たくさんの人に支えられている自覚を強く持つ。


満天の星空とは理想だ。

ただひたすらに海の深くまで潜る事は探求だ。

水平線とは未だそこに到達していない地図をみているにすぎない。

だけれど。あの時、僕はすごく悩んだのだと思う。



だから星空も深海も世界地図も求めたのだと思う。

そうして今の僕がある。私がある。


美しくなりたいと願う気持ちは少しも小さくなってくれない。

時間はすぎて。すぎて。すぎて。


どれだけ酷い事をしてしまったであろうか。

どれだけ良い事ができたのであろうか。

足し算ばかりしてしまう。


求道とは。こればかりを繰り返す行為だ。


やっぱりあの頃の私が信じた自分は正しかった。

だってこんなにも人に恵まれていくには

人を変えるのではなくて

最初に自分を変えなくてはいけなかったんだろうから。


――本当に。皆さま。この本を手に取ってくれた皆様。


この本を手に取ってくれた皆様。


どれだけ感謝を申し上げても尽くすとは程遠く

大切なお時間を私たちの作品に。


いいえ。



私がはじめた事に使ってくれた。協力してくれた。

一時であろうとも。それは私の理想が叶ったのです。

本を作る間の数年で。その過程で海の深さも知る事ができました。

遠くが描いてある地図は立体的になりました。


きっと少しだけ距離が近づいたのだと思います。


本当に本当にどうもありがとうございます。

辛い事も悲しい事も楽しい事も嬉しい事も。

全て作品に昇華させることができました。


本当に本当に。

私たちの作品に触れてくださいましてありがとうございます。

またいつかどこかで会えるといいなと思います。

みんなに会えるといいなと思います。

本当にありがとうございました。

それでは。またいつかどこかで。

2023年夏


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