3・まあそうなるよね、そうさせられるよね

 


 というわけで、私は王族と婚姻することが決まった。

 何せ他人(ただし、国家反逆やらかすくらい、この国が嫌いな人に限る)に愛国心を植え付ける『魅了付与』だ。国としては有効活用したいところだろう。

 しかも私の固有魔法は、洗脳紛いな効果だけじゃない。

 この国に対して嫌悪感を持つ、あるいは無関心な人がわかるようだ。正直、自覚はない。固有魔法調査団の『識別』持ちの人が、他にもまだ効果がありそうですねって言って調べてたときに、国家反逆罪やっちまった人たちに対してそう思ったから、もしかしたらそうかもってだけのやつだし。

 と言っても、その人と会話するまでわからない、ちょっとだけ使い勝手が悪い効果だけど。

 だからこそ、相手がこの国の敵に回る可能性があるかどうかを判別するため、表舞台で動きやすい王族の仲間入りをすることになった。私としては甚だ遺憾である。だって王族ってめんどくさい。

 いやだって、ねえ? 構って構ってな貴族ちゃんが、陳情がどうのこうのと毎日やって来るんだよ? 決済その他の書類とか捌いても捌いても終わらないんだよ? 食事をする時間も寝る時間も安定しないんだよ? 嫌だよ、そんな不健康そうな生活。

 まあ、わがまま言える立場じゃないので従うしかないんだけど。


 私の将来のお相手はなんと、外交を担うことになる第二王子殿下。

 ということを陛下が生家に連絡したら、要約すると「承知しました。でももううちの子じゃないので、そちらの好きにしてください」的なことが返ってきたらしい。下手に擦り寄ってくるような人たちじゃなくてよかったよ。


 「まあ、今更だよねぇ」

 「今更ですねぇ」

 「君の固有魔法の詳細を知って安堵はしたみたいだけどね。『魅了』とだけ聞いて、君を捨てるようにここに置いて行った彼らとしては、案じはするけど関与せず、といったところなのだろう。弁えた家で本当に良かった」

 「無駄に辺境伯やってないですね」

 「信頼できる者にしか任せられないからね。当然と言えば当然だったのかもしれない」


 正直会いに来られても、貴族名鑑で顔と名前しか知らない相手だから対応に困ったと思う。

 血が繋がっていたって、産まれたときから関わることがなかったし、傍にいなきゃそんなもんだよ。


 「それにしても、ほんっとーにやらなきゃダメですか? 婚約披露宴」

 「うん!」

 「わあ、言葉通り光輝く笑顔ぉ…」


 『発光』とか言う、よくわかんない固有魔法の無駄遣いかな?


 「お披露目はしていてよかったよね、本当」

 「陛下に義務だって言われたら、やらなきゃですよねえ?」

 「実際は貴族生家の庇護下にある、12歳になった子女の義務だね。君は王家うちの庇護下にあったわけだけど。まあこの国で一番偉ーい王家が後見人だし? そりゃあやらなきゃね?」

 「ソーデスネ」


 あれは「王命だゾ☆」って言われて国家最高権力者に逆らえるわけがなかった。壁の花が許されてただけマシだった。

 今回もそうなんだけどねえ?! なんで王命で婚約しました会すんの? 暇なの? あんなに忙しそうにしてるのに? たまに私も文官のお手伝いに駆り出されるくらい忙しいのに?


 「これからまだまだ忙しくなるよ? 行儀、作法の復習に衣装選びに…」

 「うげぇ」

 「さっそく淑女としてどうかという反応が出たね?」

 「…」

 「明日から半日みっちり復習、やっとこっか!」

 「ぐわー!目が、目がぁ!」


 光の暴力はんたーい! 今だけでいいから『遮光』の固有魔法がほしいー! 私の固有魔法役立たずー!


 

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私の固有魔法が、思ってたのと違う yu102(あんかけ) @yu102

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