傘は誰に語りかける?

人々は神を怒らせ、そして神の涙と言われる雨は失われ、それを取り戻すために、人々は傘を失った。
そんな世界で巻き起こる、日常的な何かを描いた作品です。

主人公が語りかける、一人称で物語は進んでいくのですが、それは雨を失わせた神に対する三人称視点なのかもしれません。
傘を使うことは禁忌であり、神に対する冒涜。
そして、ほのかに恋心を抱いている彼氏持ちの先輩に横恋慕するのも、また一種のタブーです。

ひょっとすると、居場所が無くなった傘が語りかけているのかもしれません。
この作品が映像化されると、それはそれは美しく、柔らかい雨の描写が観られるのでは、と思いました。