題名「見えない鬼をつかまえるはなし」

中村翔

第1話

「鬼ごっこすーるもーの」

「このゆーびとーまれ」

「最初はグーじゃんけんポン」

「あいこでしょ」

「次はあなたが鬼の番」



時は2222年夏・7月31日

私の名前は秋。亜紀とか有紀とかはたまた安芸とかと間違われるのだがわたしは秋だ。

私の彼は有名Vtuberの中の人だ。今回、Vtuberの企画でかくれんぼをすることになったのだ。

秋「ほーい。撮るよー。」

僕「はい。朝でも昼でもこんばんは!〇〇です!今回は~?廃墟でかくれんぼ、やってみた。です。」

2:37「はーいでは、隠れていこうと思います」

3:00「ここなんていいんじゃないかなー?」

4:55「・・・キンチョーする~・・・」

秋「はい!ではここでカットっと。おつかれー!あとは見つかった時の反応を撮ろうか?」

僕「いや、なんかこなれてるね?」

秋「そんなことないですよー。僕くんのアシさんは几帳面ですよねー。撮る手順なんかをメモして残してるところなんてね?」

僕くんに驚かれるが、そんなことないアピールも忘れない。完璧な彼女よりあざとい方がいいに決まってる。

僕「秋ちゃんは終わらない秋って知ってる?」

秋「知らないよ?」

僕「これ」

僕くんがスマホを差し出してきた。

~~~終らない秋~~~

終らない秋とは———2030年に米空軍が開発、施策したウイルスのことである。

生物から二酸化炭素の排出を許さないウイルスであるとしていた当初であったが、その副作用についての米空軍の供述は以下のとおりである。

米空軍:このウイルスは空気中に飛び散ることで酸素濃度が21%を上回ると雪が降るというものである。問題はその雪の色だ。赤いのだ。この雪については後述するが赤いというのは危険信号を表してる。信号の赤。血の色の赤。様々な危険信号に用いられるので非常にややこしい。さらに、雪はやむことがなくなるので積もり続けるとも予想される。今のところはそのようなことは確認されていない。


秋「へー。僕くんこんなサイト見てるんだ?マニアックだね。」

僕「どう思う?今は2222年で赤い雪は降ってないけど興味深いよね。こういう都市伝説のサイト。」

秋は感心しながらスマホを返した。

ちらっとだけ見てしまったが・・・”ブックマークにHなサイト”が挟んであった。

僕くんもそういうお年頃なんだなーと感心する。

秋「あっそろそろ撮影始めようか?Vtuberのサイト開いて?」

僕くんがスマホを操作してVtuberのサイトを起動する。

秋がキューサインを送る。

1:22「こ、怖いな・・・誰も来ないとはわかっていても」

2:23「ねえ。何分ぐらいこのままで待てばいいかな?」

3:00「えっ?夜明けまで?またまた~」

4:00「眠くなってきたな」

5:00「少し目を閉じるだけ......うん」

30:00「ZZZ......」

秋(寝息助かる・・・スパチャ10000・・・30000・・・50000・・・)

1:30:00「・・・」

2:00:00「・・・」

秋(そろそろ帰りたいんだけど・・・)

4:00:00「・・・ふあ~~~あれっ?寝ちゃってた・・・」

4:01:31「じゃあこのあとスパチャ読みをして配信を終わるよー。」

秋「お疲れ様。しかしよくあの狭い空間で寝られたね?」

僕「あたぼうよ・・・うん・・・眠い・・・」

秋「大丈夫?変な格好で寝ると癖になるよ?」

僕「うん。大丈夫。」

秋「ところでこれってひとりかくれんぼにあたるから今度は鬼役をやってもらうことになるんだけど・・・」

僕「ええ~!聞いてない・・・。」

秋「大丈夫手順さえ間違えなければあとは放置して帰るだけだから。まず・・・」

僕「まず?」

秋「この用意してあったグーピー人形ちゃんを始めた位置に置きます」

僕「それでそれで?」

秋「グーピーちゃんグーピーちゃん。”次の鬼はあなたに決まり”。はい繰り返して?」

僕「グーピーちゃんグーピーちゃん”次の鬼はあなたで決まり”はい」

秋「次はえーっとグーピーちゃんを誰にも見つからない位置に置きます。」

僕「こことかどう?」

秋「私の知らない所じゃないとだめだよ。」

僕「・・・わかった。」

秋「で、帰るといいらしい。」

僕「これって、取りに来る必要とかないよね?」

秋「大丈夫だと思う。帰ろうか?」

僕「うん」

赤い雪がちらついていたので傘を差して車に乗り込んだのを覚えてる。


秋『端的に報告しようと思います。この度はVtuber〇〇が失踪したことのお詫びとスパチャ返金対応をしたいと思います。この度は”ひとりかくれんぼやってみた”の動画を撮影した後、原因不明の機器トラブルなど皆様には不安と損失を与えてしまったと思います。〇〇は家財道具などもそのままに行方不明になり、はい、はい。〇〇は捜索願いを出したことで引退という形を取らせていただきます。はい・・・はい。行方不明になったのは撮影の3日後で、どこに行ったのかは皆目見当もつかない状況です。アシスタントの△△も行方不明で・・・はい。ご迷惑をおかけします。では。』

がちゃん!電話を切るとチャット欄を覗いてみた。

『ひとりかくれんぼが原因』

『鬼の交代をやらないから・・・』

『あーあ、〇〇好きだったのに』


秋『 』


秋はこの時までは気付いて無かったのだ。”自分も参加していたことに”

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

題名「見えない鬼をつかまえるはなし」 中村翔 @nakamurashou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ