ヨークシャーテリアの花屋第1話

@peacetohanage

第1話

この世界の秘密の森に、一軒の花屋が有りました。

その花屋には一年中全ての花が揃うのです。

だから毎日お客がやって来ます。

店主のヨークシャーテリアが、一人でせっせと仕事をしていると、今日も一人のお客がやって来ました。

それは一匹のハリネズミでした。

さて、ハリネズミはどんなお花を買いに来たのでしょう?


「こんにちは、ヨークシャーテリアさん」

「やぁ、こんにちはハリネズミさん。今日はどんなお花をお探しかな?」

ハリネズミは一息吐くと共に、背中の針を撫で下ろします。

「季節はもう12月!友人のトカゲは大忙しなのさ。クリスマスにはサンタがプレゼントを届けに煙突を降りてやって来るから、一年の汚れを大掃除しなきゃ。そんな煙突掃除人のトカゲに、花をと思って」

「そんなトカゲにはコーヒーの花がぴったし!コーヒーの花言葉は、まさに働き者だよ」

そう言ってヨークシャーテリアは側にあったコーヒーの鉢を指差します。

枝には沢山の白くて小さな花が咲いていました。

「良い香り!まるでジャスミンの様だ。気に入ったぞ」

「その通り。でも2日で花は枯れてしまうんだ。贈るなら2日以内にね?その後は緑の実がなり、半年掛けてコーヒーチェリーになる。そうしたらその実を食べても良いし、収穫して種を採取しても良い。種は乾燥させたらコーヒーが飲めるよ」

それを聞いたハリネズミの針は、これだ!と意気揚々と逆立ちます。

「ありがとう!ヨークシャーテリアさん。僕は今日これからトカゲさんを訪ねて行って、日頃の労いの言葉と共に、コーヒーの木を贈ろうと思う」

「それはどうも、どうも。お買い上げ、ありがとうございます」


こうしてハリネズミはコーヒーの鉢を抱えるなり、その足取りでトカゲの家を目指す事にしました。

一方花屋の店主のヨークシャーテリアはと言うと、次のお客に備えてせっせと仕事に戻るのでした。

さて、次はどんなお客がやって来るのでしょう?


おわり

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