Gravitation ~ 月が惹く

Eternal-Heart

都会の濃青の水平線に、月が浮かんでいる。

漆黒を背に君の街の月は、より強く輝いていた。

送られた写真。


互いに引き合い続けるのに、近付く事は出来ない。

やるせない同じ月を見上げている俺達。



きらめく粒子が二人の空間に舞っている。

どうしていつも君との時間は。

オレンジゴールドが乱反射し輝く海。


俺達の足元に、静かに寄せて返す波。

それは月の引力によるものだと。

遠く紫のグラデーションに浮かぶ白い月。

君は、ぼんやりと視線を向けてながら言った。

終わりを告げるように、陽は落ちてゆく。



寄せて返す波の振幅は一分間に18回

人の呼吸は18回

倍の36度は体温

倍の72回は脈拍

倍の144mmHgは血圧

満月の夜に出産が多いと、昔から言われている。

我々は、月と地球の引力が織り成す、バイオリズムに支配されている。



喪失は、時に哀しいくらい、時が浸食する。

ふとした瞬間に、遠く疎遠になった知人を思い出す。

同時に心の穴が埋まっている事に気付く。

所詮、その程度の縁だったのだ。



二度と逢う事のない 20年間。

君という心の穴は埋まる事は無かった。

そこに大切なものが有ったという証なのだ。

君のシルエットをした傷であっても

喪失の哀しみであっても、埋めたくはなかった。

誰にも埋められない

誰にも埋めさせない喪失の傷なのだ。


俺達は繋がる事はない。

そういう宿命なのだ。

なのに

どうして

これほど惹き合うのか。

無意味な刹那であろうとも、俺達の引力が惹き合わせるのだ。



キーを掴む。

走り出す。

たとえ逢えなくとも。

輝く粒子が乱反射していた___

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