外伝その一 キゼツノアテミ
「教えてくれませんか?あの、相手を無傷で気絶させる技を」
真田大輔が意を決し、
襲撃の最中ずっと、何も出来ず、ただただ守られているだけ、そんな自分に、なんとも言えない歯がゆさを感じていた。
「そんな技は存じ上げませんが」
と、
予想外の答えに、大輔の口調が早くなる。
「いやだって、やってたじゃないですか、第一話の冒頭、初登場直後のシーンで、あの
「そういうメタな発言、どうかと思います」
「すみません、ええと、初めて会った日、最初に僕を助けてくれたときに使ったじゃないですか、あの
「だから、そんな技は存じ上げませんと申しております」
「あーそりゃ無理もねえ、
すぐそばで聞いていた
「あのな、普通、人間が一撃で昏倒する程の衝撃を頭部に受けた場合、まったくの無傷ってのはありえねえんだよ、ボクシングとか見てりゃ分かるだろ?」
「でも……」
「気絶するほどぶん殴られれば、最悪の場合、そのまんま目を覚まさねえなんてこともしばしばある、頭部への攻撃ってのはそれぐらいの
「――ところがだ、もし相手を簡単に気絶させられて、しかも死亡させたり、何らかの後遺症を残したりする
「……悪い事をする人たち、ですか?」
「その通り!そんな技が本当に有れば、犯罪者連中にとっちやこの上なく便利だ、悪用された場合の社会的影響は計り知れねえ……だから、
「――もしそんな技が本当に存在したとしてもだ、実際にやるとなるとおっそろしく難しいぜ、最小限のダメージで脳を揺らす力の加減、方向、角度、そして
「「お
「その通り!」
と、
「まあ、そういう訳だから、良い子のみんなはフィクションを真に受けて、出てくる技を真似したりしちゃダメだぞ」
「……そういうメタな発言、どうかと思います」
少女舞闘綺伝 ジュウトハチ 柊 太郎 @hiiragi_taro
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