第5話


『レベルが上がりました』


その文字が視界に出て来る。

確認する東條要人は、次はどんなスキルを手に入れたのかを確認する。


「…射撃補正?」


神経拡張強化性能と言う項目に、その様な文字が浮かび上がっていた。

詳細を確認すると、どうやら射撃に関する能力に対する補正が行われる、との事だった。


「成程…じゃ、指弾も同じか」


指弾も、指で弾くが、相手を狙って、撃つと言う動作が必要だ。

だとすれば、指弾もまた、射撃として換算されるのではないのだろうか。

そう思った東條要人は、教室の中へと入った。

教室の中には、未だゾンビが居る。

二人、三人程ではあるが、東條要人は、一番遠いゾンビに向けて、小銭を構えた。

よく、狙って打つ、と言う感覚ではない。

単純に、目測で位置を確認して、指で弾くだけ。

弾いた小銭は、高速で回転していくと共に、ゾンビの頭部に当たった。

額の皮膚に減り込み、頭蓋骨が陥没する。

強力な一撃を、一発で命中させる事が出来た。


「…これが射撃補正か」


さっきまで、ノーコンだった東條要人。

レベルが上がれば、能力が強化される事を理解する。

レベルを上げれば、東條美月妃を元に戻せる可能性も出て来た。


「…沢山、ぶっ殺せば良いんだ、簡単だ」


取り合えず、教室の中に居るゾンビを殺して経験値を稼ぐ。

小銭を弾いて、ゾンビを殺し、再び廊下へと出て行く。

廊下には、先程、東條要人が殺したゾンビで溢れていた。


「…」


それを見つめる東條要人。

それらは、ゾンビであろうとも、自分と同じ年代の学生だった。

数時間前までは、普通に生きていたのだ。


「…」


その亡骸を見て、東條要人はふと思い出す。

こんなにも、簡単にゾンビを殺せる自分は、もしかすれば、かなり異常なのではないのだろうか、と。


「…あー、考えなきゃ良かったなぁ…」


自分が殺人に手を染めた気分だ。

ゾンビと認識していたからこそ、殺す事が出来た。

だが、元を正せば、彼らは元人間。

ゾンビでは無く、ゾンビになった人間だ。

それを殺すなど、普通の人間ならば出来ないだろう。


「まあ…」


自分が抱き締めている、東條美月妃を見る。

虚ろな瞳で、東條要人の姿を映し込んでいた。

…彼女が元に戻るのならば、なんだってする。

そして、その行動によって、心を痛める事等無い。


「美月妃か、それ以外か、…なら、美月妃だ」


そう断言した。


そうして、再びゾンビ退治を行おうとして廊下を歩いた時。

外から、喧噪が聞こえて来た。

その音を聞いた東條要人は、外に視線を向ける。

外はグラウンドだった。

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レベル・オブ・ザ・デッド~ウイルスに適合した主人公はゾンビになったヒロインやゾンビに襲われたヒロインを連れて生き永らえる~ 三流木青二斎無一門 @itisyou

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