第14話 村人殲滅楽しい/仕方の無い話

「竜に対する生贄準備出来ました!」


俺はその言葉を聞いてそちらを見た時、この村をさっさと滅ぼすべきだと確信した。


「……その子が生贄?か……ああそうか」


4歳ぐらいの子。そんな子供を乱雑に木に縛り付けてそれにたくさんの貢物を並べる。


「あ〜あれがこの村における生贄ですか……はぁどうします?ジン」


どうもこうもない。助けるべきだろう


「な、何をなさいますか?!我らの生贄」


「まぁお前らが正義か悪かは知らねえけど…………悪ぃけど、仏の顔も3度までなんでな」


そう言うと、静かに唱える


────【迎撃開始】───


俺は弓を構えて村長を狙って撃つ。

当然予想だにしなかった攻撃により慌てて俺を睨み返すが


「ああ済まないな。君たちに明日は無い」


言い終わるや否や、全方位から剣が飛んでいく。

正直こんな奴らに生きている価値は無いと思ったのだが、俺は慌てて気がつく


「あ!やば!あの子無事か?」


どうやらかろうじて無事だったようだが、いまさっきの音に反応して竜が舞い降りてくる。


それを俺は眺めて


「……太った竜だな」


その肥え方は間違いなく自堕落な生活の影響だろう


「な、なんだ?!おでの邪魔するやつは……ああ村人が?!おで怒ったからな!おでお前をゆるピャ?!」


「あ、やっぱり君は来るよね」


後ろから喋っている竜の腹ごと刺し貫く剣があった。間違いなく即死レベルの切られ方をしている竜の叫びはほっておいて


「……なぁお前は……」


話しけるも無視されてしまった。これ地味に気づつくのでやめて欲しい


「……ああ……済まない……すぐにここから離れて……くれ」


だが、今回は彼の様子がおかしかった。

まるで何か吐き出そうな……そんな不思議な様相で、俺は慌ててニクスと見守る



───果たして


筋骨隆々としたその肉体からは、まるで焔がごとく、盛大なオーラが吹き出し

そうして彼の肉体を包み込みながらどんどんと肥大化してくその姿はまるで


「……竜…………なの………か?」


素晴らしく巨大な竜がそこにいた。黒と赤、俺があの日夢で見た竜そのものだ


「「「「「ゴアアアアアア」」」」」


その声からは理性が感じられず、ただ、本能に従うだけの魔物といったその姿があった


だがそいつからは一切の敵意を感じなかった。それが俺は奇妙に感じた


「奇妙に感じてる場合ですか!……あっぶな……!こいつ攻撃してきてますよ!」


ああそれは俺もわかっている。だが、俺のスキルが一切反応しないのだ

【迎撃】は当然ながら相手の敵意を感知して発動するパッシブスキルだ

しかし相手に殺意がない場合、当然効果が起動しないわけだ



「クソ!……まじか」


俺は悪態をつきつつ、ヘイトを稼ぐために弓を撃つが


「んな!?全くスルーだと?!」


依然としてそいつは俺に興味もとい敵意を持たなかった



俺がどうしようかと攻めあぐねていると


「お兄ちゃん!やめなさい!」


そんな声が聞こえた。見るとブリムヒルトがこちらに向かって走ってきていた。


「危ない!」


俺が叫ぶまもなく、竜の懐に入り込むブリムヒルト。

俺は最悪の未来を想像したのだが



「……ブリムヒルト……危ないからそれはやめろ……と言ったはずだが……?」


「馬鹿兄貴!だから戦うなって言ったのに!」


──まさかの動きを止めるどころか、完全に理性を取り戻させていた。




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異世界で起きるフラグは全てスキル【迎撃】により破壊されました。──ある意味平和な異世界転生譚 皆月菜月 @Cataman

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