第13話 滅ぶべき村/竜の顎
その夜、俺たちはゆっくりと止めてもらった家を抜け出し……辺りを散策する。
目的はもちろん、あの槍についてだ
「まぁ言っちゃ悪いけど、こんなとこに村立ててるヤツらが頭おかしくないわけないからね」
辛口なニクス(大人モード)と俺はこっそりと歩いていると、会話が聞こえてきた
「……で?あの男と女は眠ったか?……」
「ああ……やはりジークについて聞いてきたか……あヤツめ我らを巻き添えにするつもりではないだろうな?」
「まぁジークはあの強い男に何とかしてもらうとして……さてどうする?今回の贄は」
贄?……つまり誰かを捧げている?ということか……いや考えすぎだろう。おそらく神絵の供物として動物を捧げている……くらいだろ
「ああかっさらってきたあの子供ならば竜をおびき寄せるいい
前言撤回、こいつらはさっさと倒すべきかもしれない。
俺がそう言いながらもスキルを発動させないようにしているとニクスが
「はあ……まどろっこしいですね……私の力見せてあげますよ」
そう言って一瞬で彼らの前に飛び出し、そのからだを闇夜に沈めた。
「何を?」
俺が聞くと、ニクスはさも当然のように答える
「ああ彼らには夜に溶けてもらいました……へえ?こんな知識を持っていましたか……ちょうどいいです、あなたも見ますか?ジークの過去を」
「ジークの過去?それはジーク本人しか分からないだろ?」
俺がそう言うと、ニクスはため息をついて首を振りながら
「あのですね……私の力『
◇◇
そこには1人の少年がたっていた。外見は今よりもはるかに幼く、そしてその顔には絶望がのしかかっていた
少年は1人、焼け焦げた家の前で倒れた少女を抱いて泣いていた。
傍らに横たわる父親と母親は見るも無惨な様相で。そのそばに倒れた騎士がまるで彼らを守るように鎮座していた
「……約束は護ったぞ?……ああ……われも長くない……ジークよ、せめてお前だけでも……逃げ延び……る……」
「ダメだよ!……ロウおじちゃん……僕は……僕は……」
「さらば……だ……」
◇◇
場面が変わり、男がひとり佇む様子が映し出される。
男は体に無数の傷を負っていたが、それすら無視して歩いていた。
歩く度体の傷からは焔がほとばしる
「竜は滅ぼさねば……ならないのだ…………妹の、母の、父の…妻の……皆の仇なのだ……!」
男の脳裏には、昨日まで笑顔で自分を迎えてくれた妻と子供の姿が思い浮かぶ。しかしそれはもう見ることが叶わぬ夢なのだ
「ああ……安心しろ……お前たちの悲しみは俺が背負う……だから……」
男はゆっくりと剣を……妻から譲り受けた魔剣を背負い歩き出す。
目的地は……竜の里……あそこが元凶なのだろう……だから俺は倒さねばならんのだ!
◇◇
「?意味がわからんが……彼は2度竜に襲われて家族を無くした……ってことか?」
俺は首を傾げる。前も言ったが、基本竜は人など襲わない。
それは何故か?……竜とは神秘の塊であり、人と関わることでその神秘が失われ
そうして竜は竜としての力を失う羽目になるのだ……
そしてそれは竜にとっては耐え難い屈辱とも言えるはず……そんなことをわざわざ竜がするか?
「しないでしょうね……だから誰かに騙された……とかでしょう」
急に喋るな怖い。
まぁそれはともかく、だ。少し村長に問い詰めるべき案件が増えた
───その夜、俺は黒と赤で染った竜を見た。いや?実際に見たのでは無い、夢に出てきたのだ。
その雄叫びはまるで俺を呼んでいる……そんな気さえした。
「また寝言ですか?うるさいですね」
◇◇
──次の日
俺は村の中にあるものを散策することにしたのだが
「……これは(バルバロッサの髪飾り……なんでここに)?」
「ああそれは我らが村の英雄に助けられた少女のものですな」
「これは?(北天竜ベイアの剣?……あいつは剣を墓の中に埋めろって言ってたよな?)」
「ああそれは我が息子が王都の方で見繕った剣ですな」
「……これは?」
「これはこれは……素晴らしい切れ味を誇る我らが村の宝剣ですぞ!」
その剣はラパスノアの右手に持っていた剣だ。
その後ろの寂れた剣は左手に持っていたんだよ
「なあ?……お前ら嘘の話をでっち上げるのはやめろよ?……流石にお前らのやっていることはシンプル害悪だぞ?」
と言いたかったが、根拠なく集団殺人犯になるのはごめんだ。
まぁ割とぶちギレかけていたが
そんな時であった……
「そ、村長!またしても竜が来ました!」
「なにい?貢物はまだできておらぬぞ?!……ええい時間を稼げ!急げ!」
慌ただしく走り回るその姿を俺は眺めながら呟く。
お前ら走れたんかい。と
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