第12話 とある指輪の物語/その村の名は

「邪魔だ!どけ!……ええい邪魔だって言っているだろうが!」


ニクスはまるで相手にされなかったようで、かなり涙目で帰ってきた。人間怖いとぼやくニクスを撫でながら俺は深いため息を着く


「すまんな……俺が見に行ければ良かったんだが……場合によってはになりかねないからなぁ……」


俺のスキル【迎撃】の効果は基本的に見知らぬ人に対する敵意にも反応する。

そういう意味ではよくさっきのジークやらブリムヒルトやらはこのスキルに引っかからなかったな……と


そんなことを考えつつ俺は頭を悩ませる。困った、どうにかして村人と仲良くなる……もとい彼らからあいつの……ジークの情報を聞き出したいのだが


──如何せん村に入れないわけだ。


俺は溜息をつきながら天を仰ぐ。まさかここまでニクスが頼りにならないとは……


「わ、私だって夜になれば当然頼りになります!……まだあと数時間ありますけど……」


「そもそもそれで中入っても逆に怪しまれるだけだ!……はぁ……こういう時のために舐められない男の人がいると良いんだろうけどなぁ……」


そんなことを呑気に考えていた、その時であった



「野郎ども!かかれぇ!……」


そんな声が山奥から聞こえた気がした。流石にそんなわけがないと思い、俺は再び辺りを眺める。


「綺麗な星空が見えるらしいぞ?……まぁあと少し時間はかかるだろうけどな……あ!あっちの方に綺麗な火だ……火?」


その火の数は明らかにただ事では無い。その事に気がついた俺は慌てて臨戦態勢をとる。

間違っても、村人を攻撃しないように細心の注意を払いつつ俺とニクスは高い木の上に登る

戦場において、高所は有利ポジだ


ガサガサ、キーキーと言う鳥のなく声と、獣のざわめきから間違いなく多数の人間が押し寄せているのがはっきりとわかる。

俺は耳を静かに尖らせて音を聞こうとするが


「どしたの?〜もしかしてお腹すいた?」


んなわけないだろ!とツッコミかけて俺は慌ててもう一度聞き直す


「ねえー退屈!退屈なんだけど?」


夜の神様が静かに出来なくてどうする!と切れそうになったが、まぁ結果論から言うとそいつらに気が付かれると言うオチだ。



「なんだ!お前はやっちまえ」


みたいなことを言われた気がするのだが、俺が反応する前に


────【迎撃開始】─────



俺の周囲に展開された弓矢が次々とそいつらを撃ち殺していく。


「悲鳴が奏でるシンフォニーは案外悪くないね」


何処のサイコパスだよ?と俺がツッコミを入れている間にも次々とそいつらは倒れていく。

最早慣れた光景だ。赤子の手をひねるよりも簡単に勝手に人々の人生を終わらせていゆく。

こうしてしばらく続いた攻撃の音が終わりを告げ、そこに残った死骸を眺めてから


「で?これどうするよ」


俺は溜息をつきながらその眼前に広がる光景を眺める

と、どうやら音を聞き付けた村の住民が集まってきたようで、俺は慌ててその場を離れようとするが


「お、おお!貴方様はこの村を救ってくださった英雄じゃ!皆の者ぜひこの方々をお迎えしろ!」


そう言われてしまっては困る。


まぁそんなこんなでこの村に無事入ることが出来たのだが


「(なぁ、ひとついいか?)」


「(何?)」


「(余りにもこの村気持ち悪くないか?)」


俺たちが入って第1に思ったことが、死ぬほどこの村が気持ちが悪いということだった。

まるで怨念が渦巻き、巨大な蠱毒を見ているようなそんな感覚


何がそう思わせているのか、それは分からなかったが、ただ1つ言えることがあった。


だ。


それはどうやらニクスもまた同感だったようでさっさと出よう?と合図をしてくれていた。


俺は当たり障りのない言葉で聞きたいことを早めに聞こうとする


「─ああジーク……いや悪鬼にあったのかい?」


悪鬼?いや人でしたが?と俺が聞くと


「あやつはこの村で育った子でのう……はははまぁいい子じゃったわ……あやつは兄弟、姉妹、両親と幸せに暮らしておったっけな……」


あ、これ長話が始まるパターン


「……あやつの家族が皆竜に食い殺されたのはいつの事じゃったか」


「……食い殺されたんですか?」


確かに、ここは竜の里に近い。それ故に巻き込まれることは……いや?そもそも竜に巻き込まれる以前に竜は人に興味を基本示さないはず?


何が俺の知っていることと矛盾している村長の話を聞きながら俺は辺りをぐるりと見回す。


「その時……でしたのじゃ……あやつの父親が最後の力を振り絞ってのう……あの槍を見よ……あの槍で竜と相打ったのじゃ……じゃが……あやつの父は……おや?どうかなさいましたか」


「……なぁあの槍は誰の槍だって?」


「だから今話しておったじゃろうが……


……そうか。と俺は頷き、改めて話を聞き直す。


──誓って言うが、あの槍はのものだ。あいつが誰かに譲り受けた落下もとい誰かに渡した話など聞いていない


つまり、この村のやつが竜の里から持ち帰ったものということになる。


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