DAY? マッシモ・ゴディグラーグの場合3

 二人のテンションの高さもやがて落ち着いてくると、お腹がぐううっと鳴って空腹を訴えてきた。

 気が付けば、こちらに来てからずっと何も食べずに錬金術の講義や作業とかに没頭してた。


 えーっと、学校から帰宅途中、だったっけ?

 だとすると午後だった筈だけど、こっちに来た時は、午前の早めの時間だったような・・・?


 まあ、そんな些事は、晩飯をおごってくれるというアドルーさんの一言に意識からきれいさっぱり消え去った。

 宿も取ってないと聞いた彼は、ギルド員には貸し出している作業用個室に泊めてくれた。


「1グァロの純水を5回作ったから、500ダル。

 一日100ダルの使用料にまけておいてやる」

「それって安いんです?」


 1ダル=1ドルなら100ドルってことで、そこまでお安くないように感じた。


「ギルドに販売する用の素材なら、いくらでも使い放題なんだぞ?魔法陣や魔道具なんかも含めて。

 そこでいくらでも買い取ってもらえる素材などを作って、自分自身の錬金釜や魔道具なんかを揃えていくのが、駆け出し錬金術師の鉄板ルートなんだよ」

「なるほど!」


 登録したばかりの初級錬金術師向けに、格安に販売してくれる魔法陣の内、半円形の土壁と土の円柱を構築する物をチョイスして、それぞれに100ダルずつ支払った。

 食事は、数ダルも払えば、屋台とかでそこそこの味と量の物が買えると教えてもらえた。水は井戸水が飲み放題だったし。


 帰宅するというアドルーさんと別れ、個室に入り鍵を閉めた後、ステータス画面を確認。

 ゴーレムを構築した時にレベルがまた一つ上がって、8に。ユニークスキルのクールタイムは8分になっていた。


 それと、アドルーさんに晩飯を奢ってもらって飲み食いしてる間に、土壁を構築する指輪と、土円柱を構築する指輪を、それぞれ分析させてもらっていた。

 だけでなく、レシピで必要とされた魔銀ミスリルや魔法陣、中級魔力結晶なんかも、ユニークスキルの<取得>でゲットしておいた。


 うん。万能錬金術、すごいね。

 しかもだけど、これまでに作成した何かのレシピは、魔法陣の詳細な内容を含めて、全部保存して、後から参照可能だったし。

 至れり尽くせり?


 土の壁を瞬時に構築する指輪を分析した結果がこちら。


<中級錬金術師の指輪>

 魔銀と中級魔力結晶を組み合わせ、魔力結晶内に魔法陣を仕込むことで、魔法陣に記載された内容を瞬時に構築可能。

 魔力を込める量を増減することで、効果を調整することも可能。


 で、万能錬金術によると、今すぐ試すことは可能なんだけど、作成に成功するかどうかは、五分五分というのが何となく分かったので、もうちょっとレベルを上げておくことにした。


 まず、ここの使用料とかを稼ぐ為に一番手っ取り早くて、魔力消費も控えめな、純水を1グァロx3回済ませた。


 それから、ゴーレムの構築と消去を何度か繰り返してると、レベルが9に上がって、ユニークスキルのクールタイムは7分になった。

 合間に、<取得>で魔銀ミスリルをゲットしたりしてたし、魔力をほぼ使い果たしたらしい自分は、長椅子に倒れ込むように寝落ちした。



 で、普通に、というのもおかしいけど、ゲーム内?異世界?で目を覚ました。

 魔銀を<取得>してから、井戸で顔を洗い、外の屋台で適当な朝食をみつくろって個室に戻って食べたら、純水を6グァロ分作成して日銭を稼いでおいた。


 休憩を挟んでから中庭に出て、土壁の魔法陣を杖でなるべく早く描き込む練習をして、早くて1分くらいかかってたのが、30秒くらいでほぼ失敗せずに描けるようになった。

 次に、土の円柱の魔法陣を地面に描く練習を繰り返している内に、レベルが10に上がり、ユニークスキルのクールタイムが6分になるだけでなく、新しいサブスキルもゲットした!


<複製>

・錬金術で何かを構築する際に、1個ではなく、2個同時に構築可能。

・消費される素材は一個分

・レベルが上がっていくと、一度に複製可能な数も増えていく


 え、これ、マジで、蓄財とかって意味で、錬金術じゃね?と思ったよ。

 でもさ、ふと冷静な自分が囁いてくれた。

 自分の錬金術部屋とか素材を使ってるならともかく、道具の素材も全部レンタルというか錬金術師ギルドからの持ち出しなら、速攻ばれるよね?、と。


 っぶな~!

 1個分のポーションの素材しか消費してないのに、倍のポーションが出来上がってたら、誰だって気付くよね。

 存在しない叔父さんからのもらいものにするにも限度があるだろうし。


 あと、<取得>で得られた魔銀の様な素材そのものは、複製できないとかも注意しないといけなかった。

 <取得>で得られた素材は転売とかも不可だから、お金はまっとうに稼がないといけなかったし。


 レベルが10という区切りの良いところまでに上がったのと、ゴーレムで戦ってみたいという欲求は強かったんだけど、自分自身の武器が必要だった。

 いろんな魔道具に描かれていた転写の魔法陣を使えば、防御はそれなりに出来ただろうけど、攻撃手段が無いといざという時に困りそうだったしで。


 午前10時前頃に、アドルーさんがやってきた。ギルドにはもう少し早く来てたいだけど、他にも仕事があるみたいだしね。


 中庭で、土壁と、円柱の構築の手際とかを見てもらってから、今日の予定を訊かれた。


「今日はどうするつもりだ?

 そろそろ中級錬金術の中でも難易度が低い物なら作れるようにはなってるだろう」

「えっと、ゴーレムを使って戦ってみたいな、とか思ってるので、素材集めに外出とか、お勧めな場所とかありますか?」

「錬金術も万能な様で、究極的には、無から有は生じられないからな。素材集めは錬金術の基本だ」


 それからアドルーさんは、効果の高めなHP回復ポーションと、初級MP回復ポーションの作成に必要な薬草が採れる場所を、地図や、薬草の絵図付きで教えてくれた。


「ゴーレムがいればたいていの敵は倒せるか追い払えるだろうが、もしも複数の敵相手に戦闘になった時の倒す手段はどうするんだ?」

「それなんですが、アドルーさんの武器の似たようなのを作ろうかと。でも、それには回転と加速の魔法陣があると、さらに良いかなぁと」


 アドルーさんは自分のアイディアを聞いて、ギルドからまた格安で魔法陣を販売してくれただけでなく、壊れた魔道具の捨て場みたいなところに案内して、武器の構築に必要な鉄や木材とかを確保までしてくれた。

 

 自分は仕事に戻るアドルーさんと別れて個室に戻り、壊れた魔道具とかをユニークスキルの<分解>で素材に戻し、腕に取り付ける武器を作成した。


 中庭で何度か試射を済ませてから、ギルド備品の背嚢も借り受けて、町の外へとぼくは出発したのだった。


 ノームの町ということもあって、建物とかは低めの高さのも多かったけど、人間とかも訪れるので、特にお店とかギルドみたいな建物は普通の大きさ。

 町の門も外壁も、自分を五人分重ねたくらいの高さはあった。


 ギルドから借りた方位磁石みたいな魔道具(ギルドに基点となる魔道具があって、そこからの距離と方角が分かるので、GPS的に使える便利道具!これも中級錬金術のレシピなので、すでに<分析>済みだった)と地図を比較参照しながら、町のそばに広がる森に入って、手頃な空き地を見つけ、そこで土ゴーレムを構築した。


 ゴーレムには周囲の警戒をしつつ、自分を守るよう指示。


 安全を確保してから、いよいよお待ちかねの錬金術タイム到来!


「さてさて。取り出したりますは、中級の転写魔法陣シート!

 続いて、土壁の魔法陣、そして魔銀ミスリルの指輪ベース、それから、中級魔力結晶(小)!」


 一人で気分を盛り上げながら、最初に魔法陣を魔力結晶への転写を成功させた。

 魔力結晶の指輪へのはめ込みは、マジックアイテムということで、特別な手順は必要無かった。(魔力的なスイッチのオンオフ切り替えで、魔力結晶の付け外しが出来る感じで、実に合理的だった)


 ということで、中級錬金術師の指輪はあっさりと完成したので、早速、地面に何度も半円形の土壁を発生させてみた。

 高さは、立ってても自分の頭上までがカバーされる感じ。厚みは、およそ3センチってところ。厚くもなく薄くもなくだけど、込める魔力量で、厚さか高さのどちらかを倍に出来た。


 土壁を何度か作ったり消したりしたら、今度は円柱の方の指輪を作成。

 工程の大半は一緒で、魔法陣だけがもうちょっと複雑だったけど、こちらも一度で成功!


 土の円柱の方はとりあえず一人用ということで、そのままなら1.5メートルくらい。倍の魔力を込めれば3メートルくらいの高さにまで出来た。


 ここでレベルがまた上がって、11に。ユニークスキルのクールタイムは5分に。


「さて、次は、弾を作ろうか」


 ここに来るまでに道ばたに落ちてる小石を拾ってきた。


「<分析>、弾丸作成のレシピ」


 ユニークスキル、万能錬金術を構成する各サブスキルは、本当に有能。

 なぜか?

 すでに存在する何かを見て、構築する為のレシピを調べることだけが機能じゃない。

 この世界に存在しない何かでも、自分が知っていたり、イメージできる物なら、構築する為のレシピを調べることが出来る。

 例えば戦車とか。

 例えば核爆弾とか。


 それぞれ各工程で必要になる物が多すぎて、到底今の段階じゃ作れるとは思えないけどね。


 弾丸作成の為に<分析>したのは、小石から、一定の大きさと形状の弾丸を削りだして、余計な部分を除外する為の魔法陣。

 これは、井戸水から純水を取り出す、水の記号を、石の記号に置き換えて、形状がどんな物であれ、どんぐりのような形状と大きさに削り出す二つの命令文が主要素。

 小石自体の質量が小さいせいか、地面に描いた魔法陣に小石を置いて、わずかな魔力を流すだけで、さくさく目的の弾丸が作成されていく。

 ちなみに、素材を示す記号だけ入れ替えれば、岩とか、銅や鉄といった別の何かで同じ物も構築可能。

 今回の弾丸は、小石が素材ということもあって、<構築>する際に、<複製>も同時に機能させて、一度に二個ずつ作った。


 さしあたり50個も作れば十分かなと思ったけど、予想してたより魔力を消耗しなかったので、近くの石や、木の枝とかも拾い集めて、石の弾丸は計百発、木の弾丸は三十発くらい作ってみた。


 アドルーさんが使ってた魔力イシユミを参考に作った武器で、魔力を弾にして木の幹に発射すると、直径1.5センチ、深さ1.5センチくらいの凹みが出来る。

 込める魔力を倍にすれば、倍くらいの深さの凹みが出来るので、打撃力が無い訳ではない。

 けれど、それを連発するとけっこう魔力を消費するのがわかっていた。


 木の弾を武器の溝にセット。

 回転と加速、二つの魔法陣へつながる経路に魔力を流し込むと、弾丸が回転し始め、狙いをつけて発射を意識した瞬間に発射され、さっき魔力弾が当たった凹みの側に命中した。


「うわ。軽く3センチ以上は食い込んでる。弾自体が2.5センチくらいの長さはあるから、腹部とかに当たれば突き抜けそうだな」


 魔力を倍込めて打ったら、やっぱり倍くらいは深めに食い込んでました。木の弾でも殺傷力は十分。

 むしろ、規定の半分の魔力で打ってみたら、1センチちょっとの食い込みだったので、殺傷したくない場合にも使えそうだった。その場合は、魔力弾でも良さそうだったけど、木の弾の方が消費魔力は小さくて済みそうだった。


 そして今日の本命の石の弾丸。

 規定量の魔力だけでも、簡単に木の幹を貫通していきました。直径が30センチ近くはありそうな幹を。

 

「こわっ!」

 とか言いつつ、今度は二本の幹が照準先に重なるように調整して、発射。一本目の幹を貫き、二本目の幹にも10センチ近く食い込んでました。


「こりゃー、金属製の弾は、オーバースペックかな」

 とか言いつつ、廃材を利用した銅製や鉄製の弾も何発か作っておきました。


 まだ作りたい物もあったけど、ゴーレムによる戦闘も見たかったので、地面に転がってた適当な長い枝を持たせて、薬草の採取地へ向けて再出発。


 方角計もどきからすると、目的地まであともう少しといった辺りで、ゴブリンと出会ったけど、ゴーレムを見て逃げ出してしまった。

 逃げる背中を石の弾で撃とうとしたものの、逃げ足が早くてすぐに木々の合間に姿が消えてしまったので断念。


 やがて、中級HP回復ポーションの素材となるエモフの群生地に到着。

 元の世界のヨモギに近い葉の形をもらった絵図で確認してから、根っこごと引き抜き、薬草輸送用のフラスコに根から差し入れた。

 フラスコの底にわずかな水分を発生させる魔法陣が仕込んであって、薬草を新鮮な状態で持ち運べる便利な魔道具。

 ちなみに、初級HP回復ポーションの素材となるセンギの場合は、単に引っこ抜いたのを束で持ち込めば良いだけなので、ここまでの手間はかけないそうだ。


 依頼のあった三十本分を群生地のあちこちから引き抜いてフラスコに納めると、太陽が空の頂点を過ぎたくらいに来てたので、屋台で買っておいたパンに肉と野菜を挟んだサンドイッチとハンバーガーの中間的な何かを食べて休憩。


 お腹が落ち着いたら、もっと遠くにある、MP回復ポーションの素材となる薬草リルムの群生地へと移動を開始。


 道程の約半分くらいを消化した辺りで、ゴブリン5匹の集団と遭遇!

 ちょっと多いかなと焦ったけど、あちらはすでにやる気になってたので、逃げられないかなと覚悟を決めて、左手を地面について、倍の魔力を魔法陣に込めた。


 すぐに視界がぐぐっと3メートルの高さに上がって、ゴブリン達が到底届かない、って柱に爪立てて登ろうとしてきてるし!


「ゴーレム、柱にとりついてる以外のゴブリンから倒せ!」


 そう命令したのは、ゴーレムの力と太い木の枝で円柱を強打したら、円柱は倒れないにしろ、その上にいる自分が揺さぶれて最悪落下してしまうのが怖かったから。


 自分の方に向かってきてるゴブリンは二匹いたので、近い方に武器の照準を定めて、石の弾丸を発射!

 眉間から地面までを容易く貫通して、額からお尻まで直通の穴を開けられたゴブリンは落下していった。


 もう一匹は逆側を登ってきてたので、振り返り、円柱の上の平面に手をかけていたゴブリンの額に発射口を押しつけるように石弾を放ち、後頭部を破裂させたゴブリンも落下していった。


 立て続けに二匹の仲間をやられたゴブリン達は浮き足だって、ゴーレムが一匹の背中を棍棒的な枝で強打して倒した。


「踏みつけて逃がすな!」

 と言えば、ゴーレムは素直に従ってくれた。


 勝ち目が無いと判断した残り二匹はばらばらの方向に逃げ出した。

 ぼくは遠い方のゴブリンの背中に石弾を放って命中させたけど、肩の辺りだったせいか、また立ち上がって逃げ始めた。

 見えなくなってしまったので、もう片方と思ったけど、そちらもすでに逃げおおせてたので、ゴーレムに踏みつけられてたゴブリンの頭を打ち抜いてから、土の円柱を解除して地面へと戻った。


 より森の奥深くへと進んでいく。

 目指す方角が正確に分かってるので、ゴーレムを先に進ませて、下草を踏みしめ、枝とかを払ってくれるので、それなりに歩きやすかった。

 途中で、狼と遭遇したけど、ゴーレムに怖じ気付いたのか逃げていった。


 やがて、少し開けたところに出た。

 百合よりは小さめだけど、鈴蘭よりは大きな花がいくつか連ねて咲かせている草、初級MP回復ポーションの素材となるリルムが群生していた。


「ゴーレム、周囲を警戒してて。リルムは踏みつぶさないようにね」


 ゴーレムはうなずきも返事を返しもしないけど、命令がちゃんと理解できたように、あちこちをきょろきょろ見渡した。

 まあ、ゴーレムには目が無いというか基本的に飾りで、ゴーレムコアの魔力で周囲の存在を感知するんだけどね。


 ぼくはギルドから借りてきた背嚢から、摘んだリルムの花を保存・運搬する為の大きめのフラスコを取り出した。中には、中級錬金術で生成可能な保存溶液が入ってて、一日くらいは素材を新鮮なまま保ってくれるそうだ。


「えっと、一本の草から全部の花を取るな、だったかな。花を取られた跡が無い草から、一つか多くて二つまでってアドルーさん言ってた」


 あちこちの茂みの陰に隠れるように数本から十本未満生えていて、そこからだいたい五個ずつくらいを摘んで、次の茂みへと移動してて、そろそろフラスコがいっぱいになるって時だった。


 次の茂みのリルムの元にひざまずいた自分の背後に、頭上から何かが降り立った。んだと思う。


 驚いて振り返ろうとした時には、喉が切り裂かれてた。


 かっ、はっ!

 視界を鮮血が飛び散ってた。

 喉笛をかき切られたらしく、声が出なかった。

 痛みよりは、驚きが先に来ていた。痛くないわけじゃなかったし、変な言い方になるけど、痛くて死ぬほどじゃなかった。このまま死ぬのかどうか分からなかったけど。


 ゴーレムが、握り込んでいた太い枝を振り抜いて、自分を攻撃した誰かを弾き飛ばした。


 それは、自分よりも少し背丈が高い、でもノームではない種族に見えたけど、人間の子供には見えなかった。背の極端に低い大人だけど、ノームでもドワーフでもない、たぶんハーフリング。


 自分は地面に倒れ込みながらも、腰のポーションホルダーからHP回復ポーションを抜いて、詮を外して首の傷に振りかけた。


 あー、このゲーム?世界?

 HPバー、無いのよね。

 でも、真っ赤に染まりつつあった視野の赤みが少し薄まった、ような?

 次のポーションも抜いて、ふりかけようとした時に、ゴーレムの走るような足音が近づいてきたと思ったら、さっきの人影が自分の傍らに立ってて、短剣を振りかぶり、思いっきり胸、心臓の位置に突き刺された。


 そして、ぼくはこのゲーム?異世界?での死を迎えた。


 ここでは、初めての。


 落ち着いてられたのは、たぶん、自分が幽霊みたいになって、自分の死体に出現して、自分の死体を傍らから見下ろせたのと。


――あなたは死亡しました。

――すぐにセーブポイントに戻って復活するか、それとも蘇生措置を受けられる限界まで待つかを選んで下さい。


――第三の選択肢として、最初からやり直すことも出来ますが、時間は取り戻すことができません。


 そんなシステムメッセージぽいものが視野に表示されてきたから。


 まだここに残れるなら、自分が死んだ後ゴーレムがどうなるかは見ておきたかったので、即座の復活は選ばなかった。


 ゴーレムは、ぼくを殺した相手を追いかけて倒そうとしてくれてたけど、相手はまともに相手をせずに逃げ回ってたこともあり、たぶん1分か2分後くらいに消滅した。


 逃げ回ってた相手は戻ってくるとゴーレムコアを拾うだけでなく、自分の死体から指輪や背嚢や武器なんかをごっそりと奪った。


――蘇生待ち時間が尽きたので、セーブポイントに転送して蘇生します。



 復活を待つ間に思ったのが、もしかして即時復活を選んでれば、何も盗られずに復活できたのかも?

 というのも、胸に穴を開けられた服というかローブは元通りに戻っていたから。


 復活した場所は、昨日泊まらせてもらった錬金術師ギルドの作業用個室だった。


 ステータス画面を見て、レベルが下がってないことを確認したぼくは、とりあえずユニークスキルから<取得>を実行して、中級魔力結晶を再度入手してから、アドルーさんになんて報告しようか迷ったけど、いくつかの装備も構築し直してから、正直に告げることにしたのだった。

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アリスティア興亡史(仮題) @nanasinonaoto

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