クリスマスプレゼント

金子ふみよ

第1話

 12月25日、朝目覚めると伸ばした手が固いものに触れるのを感じました。ポータブルDVDプレイヤーは昨日置かなかったし、置いてあるとしたら左側だけれども、触れたのは右手だった。ぼんやりしながらそちら側に目をやるとカラフルな柄の箱が枕元にありました。目がすっかり覚めてすくっと起き上がりました。

 ベッドに腰を下ろしたまま、その箱を持ち上げる。ラッピングされたそれはクリスマスプレゼントと呼ぶのが適しているだろう。

 けれども、私は一人暮らしのアパート住まいなのです。施錠はしているし、ましてや煙突なんてない。ましてや、今年49歳になった私にどこの誰が置いたというのでしょう。親は違います。母親は二十年前に亡くなっていますし、父親は今年の夏に亡くなりました。だから、誰がこの箱を置いたかと言えば、私以外にはなくなるのですが、そんなセルフプレゼントのサプライズなんてわざわざこうしてお書きするなんてことはありません。

 不審物で警察に電話するにしても、どう説明するべきか頭が回りませんで、結局は開封してみることにしました。ラッピングをはがすと何のデザインもない箱がありまして、それをゆっくりと開けました。中にはクッション材が詰め込められていました。指先でそれを避けてみたのですが、他に何もありません。ただ、なんだか匂いがしました。アロマとか芳香剤とかではない、どこか懐かしいような香りが漂った気がしました。それによって何かしらの記憶が喚起されるようなことはありませんで、ただただ訳の分からない物に戸惑うばかりでした。この匂いがサンタクロースが届けたプレゼントかい、なんてぼやきながら箱を置くと、洗面所に行って顔を洗いました。

 ベッドに戻ってみると、はがしたラッピングも、放った箱も何もなくなっていました。

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クリスマスプレゼント 金子ふみよ @fmy-knk_03_21

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