『国際男根連合』に纏わる幾つかの出来事と考察

真狩海斗

1.『国際男根連合』とは

 ◯国際男根連合(こくさいだんこんれんごう)

 ネット上で発祥したムーブメントを起源とする冗談組織。


 国際社会に秩序を。

 国際社会に平和を。

 国際社会に男根を。


 〇概要

 彼らは某中学校勤務の教職員"男根"の言動と、当時ニュースで話題になっていた"国際連合"をなぞらえて"国際男根連合"と名乗っている。


 〇すべての始まり

 2019年12月2日、SNS上にとある口論(教育指導?)の動画が投稿された。

 その内容は担任教師と思われる長髪オールバックに髭面・細目の男性(以下、"男根"という。)と数名の男子生徒が教室内にて口論をする、という50秒ほどの動画であった。

 口論の原因は、①くじ引きで教室内の席替えを実施、②一部の女子生徒から不満が発出、③上記女子生徒らの要望に従い、"男根"が独断で再度の席替えを決行、と思われる。実に些細な事、更に言ってしまえば、くだらない事であり、これだけでは何が話題になったのか、何が"男根"なのかわからない。


 彼が"男根"と言われる所以は、動画の最後で彼が書いた"座右の銘"にある。男子生徒らからの批判の嵐に耐えかねた彼は、突如として逆上して叫ぶと"座右の銘"として、"女は愛嬌 男は根性"と黒板に書き殴った。なぜ唐突に"座右の銘"を表明したのかも謎だが、不幸なのは彼が記載した文字の並びが次のようになっていたことである。


 女 は


 愛 嬌


 男 は


 根 性


 書き終えた彼が、腕組みをして黒板の右側に立ったことで、半分が隠れ、動画上では残りの"女愛男根"だけが確認できる状態となった。腕組みをした成人男性の真横に"女愛男根"と書かれている様はさながら自己紹介のようなシュールさもあり、以降彼の愛称(蔑称?)として"女愛男根"、"男根"が定着していく。


 「そもそも何故反論として”座右の銘”を書いたのか」「何故"女は愛嬌 男は根性"と書いて論破したような勝ち誇った表情をしているのか」等のツッコミどころや、動画で出てくる「男女平等は何処に行ったんや?」「うああああああ!!座右の銘いきます!!!」などの日常生活でも使える発言(以下、"男根語録"という。)、そして叫んで"女愛男根"を書いた後にドヤ顔腕組みポーズをする流れのシュールさなどからネット上で大人気となり、ネットの定番ネタとなってしまった。


 ◯派生した悪ふざけ

 上記動画を基に派生したネットの悪ふざけとしては、「某衛星予備校のCMに繋ぎ合わせる」「東大を目指す某学園ドラマの名場面と繋ぎ合わせる」といった王道のものや、や、アダルト動画・アダルト画像等で抜いたことの暗喩として"男根"のドヤ顔腕組みポーズ(以下、"男根ポーズ"という。)の画像を貼るという尊厳凌辱的なものまで、数多のものが発明された。


 また、上述の「男女平等は何処に行ったんや?」に関してはSNS上の男女論の際に用いられることが多く、リプライに「うああああああ!!」と返信することが定番となっている。


 余談だが、とある尖った漫才コンビが漫才日本一を決める大会の決勝戦において「うああああああ!!座右の銘いきます!!」等の"男根語録"を多数盛り込んだネタを披露した。しかし、当時の審査員の反応は芳しくなく、確実視されていた優勝を逃すこととなる。

 これに対し、ネット上では「こんなん全国ネットでやるもんちゃうやろ」「優勝と"男根"の天秤で"男根"を取ったコンビ」「"男根"に頭やられてる」等の厳しい意見が相次ぐ。特に、失望したファンからの非難は強く、当時人気絶頂だった彼らが"メス堕ち"呼ばわり始末であった。

 まさに「"男根"の呪い」と言っていいのかもしれない。


 "男根"の派生ネタについて詳しくは、「男根MAD」「男根語録」を参照。


 ◯更なる悲劇

 "男根"がネットで話題となってから1週間後の2020年12月9日、男根を更なる悲劇が襲う。

 SNS上である投稿が話題となり、爆発的に拡散されたのだ。その投稿は、「ちょっと待ってwwwこないだ会った人たぶん"男根"なんだけどwww」という文章とともに某マッチングアプリのトーク画面のスクリーンショットを添付したものであった。(※ 2020年12月末時点で、5.6万いいねを記録していた。)

 トーク画面には、確かに"男根"に酷似した男性の写真と、趣味に関する話題、デート前後のやり取り等が赤裸々に記録されていた。

 "男根"というネットミームの成り立ち自体が、職務中の様子を生徒に盗撮・拡散されたという"男根"に非のない経緯であったこともあり、この流出にはネット上にも同情の声が多く、「これは流石にやりすぎ」「"男根"が何したんだよ」「"男根"だってマッチングアプリくらいするだろ」等の擁護が多数見られた。


 しかし、次第にネット上では、トーク画面における"男根"のある特徴に注目するものが増えていく。それとはすなわち、"男根"の一人称にあった。

 "男根"は、投稿主の女性(@lub_shacho ※現在削除済み)とのやり取りにおいて、全て「われわれ」という主語を使用していた。おそらくは、「われわれ="男根"&投稿主」を意図したものと推測されるが、これがネット上で嘲笑の的となる。

 大量のツッコミが溢れる中、何処からともなく現れた「われわれってなんだよ 国連かよ」の投稿が火種となり、ここにおいて、"国際男根連合"の名称が誕生する。

  

 ◯"男根"と投稿主との結末

 "男根"と投稿主のやり取りについてだが、先述の投稿の約4時間後に終結したことが、投稿主からの投稿により確認されている。

 それは、次のようなやり取りである。


 投稿主「もしかして、"男根"ですか?」


 "男根"「😂😂😂」


 男性が退会しました。

 (※ 2020年12月末時点で、3.2万いいねを記録していた。)


 投稿主の質問から"男根"の退会までは、わずか6分であり、"男根"に生じた衝撃がいかに大きかったかが伺い知れる。松岡洋右以来の国連脱退であった。


 ◯国際男根連合による問題行動

 "国際男根連合"と名乗ってはいるが、国際的な組織でも、組織としての明確な規律があるわけでもない。ただ、アカウント名に"@国際男根連合"をつけて、"男根語録"や"男根MAD"の拡散をするだけである。

 大きく問題となった契機は、ネットの炎上事案に対し、"国際男根連合"を名乗って抗議文を送る者が現れたことである。当初は、"国際連合"からの正式な抗議文と勘違いするものも多く、瞬く間に拡散された。ついには、企業側が謝罪文を公表する事態となった。"国際男根連合"の影響によるものとは到底思えないが、この件は、"国際男根連合"の勝利と記憶され、以降、同様の悪ふざけが繰り返されることとなる。

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