25話『事件概要』
昼食を挟んでビル内の大まかな案内が終わった後、翔と凛は執務室に戻った。
執務室には机が五つ置かれている。四つは田の形で置かれており、一つは窓際に置かれている。
入って右手側には、冷蔵庫やパーテーションで区切られた小休憩室のような場所が設けられている。左手側には会議室という札の下がった扉がある。比較的質素な内装ではあるが、所々に観葉植物なども置かれている。
その執務室から会議室に移動する。楕円形のテーブルに隣り合って座ると凛は説明を始めた。
「早速だけれど、今私達が担当している事案について説明するわ」
そう言って、凛はテーブルの中央に設置されている装置をリモコンで操作する。中央から画面が空中に映写され、凛は画面を翔と自分の目の前へと移動させた。
最新のVR型モニターだ。翔はそう理解して、凛がそうして変わっていく画面を見つめる。凛が暫く操作して手を止める。画面にはいくつかの事件のファイルが表示されている。
「まず、あなたの席にもあるパソコンでもこれらの事案は見られるから、詳細とか気になる点は後でも確認できるわ。ただし、他のチームが取り扱っている事案にはアクセスできないから注意して」
「分かった」
「それじゃあ早速だけれど、この案件――『新橋惨殺事件』から」
凛は言いながらリモコンを操作して表示を変える。
「文字通り、これは新橋駅地悪の空き地で起きた殺人事件よ。事件は三月三十一日の深夜に起きているわ。殺された被害者は、大手金融起業で係長をしていた田中洋一さん四十八歳。新橋にある勤務先から帰る途中で何者かに殺害されたと見られているわ。写真は今ここでは控えるけれど、勇気があって見たかったら後でどうぞ。被害者は惨殺されていて、臓器一式などが取り抜かれた状態だった」
「え、臓器一式っ――?」
翔が思わず声を発して驚くも、凛は平然とした様子で話し続ける。
「ええ。その事から見るに犯人はかなり凶暴性を持っているサイコパス、いわゆる猟奇殺人鬼と考えられているわ。今現在は担当の所轄が全力で捜査している状況。凶悪事件の一つね」
「なんか、凄い事件なのにサラっと言うよな」
「まぁね。こういった事件を主に扱っているからだけど、そこは生憎変われないわ」
「そ、そうか……」
このテンションで事件の説明をされるのか。そっこになんだか居た堪れない気持ちになる翔が居た。
「次に――」
凛が変わらぬ声色と調子で事件の概要を説明していく。翔は真面目に聞いているのだが、何とも単調な抑揚のない説明だ。
正直、覚えるのも精一杯な程に――。
VRND’S-バーチャルリアリティニューデイズ- 狐狼 @korou25
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