Part 5: エーテルの謎

 アストラルオデッセイ号が穏やかな軌道を描く中、ビクトールたちの目の前に、荒廃と静寂が共存する惑星「エーテル」が現れました。

 船は慎重に着陸し、四人は異変の気配に満ちた空気を肌で感じながら、不安と期待を胸に抱きます。

 ビクトールが深呼吸をすると、ミコが不思議そうに尋ねます。

「本当にこれがエーテル? なんかすごい……けど、なんだか寂しい感じがするね」

 イライラが眉をひそめながら外を眺める。

「昔の栄光をちらつかせるだけの廃墟か。エネルギーってやつは見当たらねぇな」

 セリアが神秘的な雰囲気の中で言葉を紡ぎます。

「ここはかつて、星の魂が息づいていた場所。しかし、今は力は失われた……」

 彼女の声は風に乗ってエーテルの静寂に溶け込んでいきます。

 ビクトールは船を出て、廃墟の間を歩きます。

 そこには、自然の中で錆びた技術の痕跡が混在していました。

「エーテルが持っていた力……それは一体どこに消えたんだ?」

 彼の問いかけは空しく虚空に響く。

 イライラが老朽化した構造物を指さしながら、ミコの機械的な好奇心を誘います。

「よーし、あそこのデータプレートを調べてみろ。何か手がかりがあるかもしれん」

 ミコは工具バッグを抱えて走り出し、夢中になって解析を始めます。

「よっと……これは古いけど、何かデータが残っているかも!」

 彼女の指先が技師の真髄を見せる。

 手がかりを追い求めるうちに、突然、彼らの目前で地面が光を放ち始めます。

 ビクトールが驚きながらミコに振り返る。

「おい、お前のやってることって、もしかして……!」

 ミコが眼を輝かせつつ答えます。

「ピンポン大正解! 古いエネルギーグリッドを再起動させちゃったみたいだよ!」

 彼女は技師としての喜びを隠しきれません。

 セリアが優雅に彼らの間を歩み、ビクトールの手をとります。

「それがエーテルの力よ。だけど、制御する者がいなければ、再び破滅を招くだけ……」

 ビクトールの内に湧き上がる感覚が、セリアの言葉を裏付けます。不意に彼の手からは緩やかに光が漏れ始めます。

「もしかして……これが……俺の中に眠る鍵なのか?」

 イライラが腕を組んで冷静に分析します。

「よーし、ビクトール、お前にはじいさんの血が流れてる。エーテルの力を制御できるのは、お前しかいねぇかもしれんぞ!」

 エーテルの中心にある遺跡の前に立ち、ビクトールは深遠な力を感じ取りました。謎に満ちたエネルギーは、彼の中に眠る未知の可能性を呼び覚ましたのです。

「みんな、俺は大丈夫だ。エーテルの力…….これは破壊の道具じゃない。新しい世界を築く希望の力だ!」

 ビクトールは力強く宣言し、エーテルのエネルギーに意志を込め、手を広げます。

 光の洪水がエーテルの地を満たし、廃墟は生命の輝きを取り戻し始めます。ミコが感動の涙を浮かべながら言います。

「ビクトール……本当にやったわね!」

 セリアが神秘的な微笑みを浮かべます。

「ビクトールの内に秘められた鍵は、ただの伝説じゃなかった。彼はエーテルを……いや、宇宙を照らす新しい光なのよ……」

 彼らの旅は、新たな伝説の生まれる瞬間を刻み、永遠に星々の間で語り継がれることでしょう。

 そしてビクトールは、祖父から受け継いだ運命を受け入れ、無限の可能性を秘めた新たな冒険へと歩みだすのでした。


(了)

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【SF短編小説】宙域幻星エーテル、銀河を導く冒険者たち 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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