第33話 トラップ
やはり、全然眠れなかった……。
俺は霞む目で、自身を睨んでいるリックスを見詰める。
「……お前言えよな? 善意なのかもしれないけどさ、結局一人で夜通し見張りやるとかバカなのか? それでお前のパフォーマンスが落ちて、みんなに迷惑かけたら元も子もないだろ」
「……すまん」
リックスの言うことはもっともで、耳が痛かった。
「まったく。起きて見たお前の顔、目の下の隈がひどくてアンデッド化でもしたのかと思ったぜ!」
「以後気を付ける……」
地下迷宮探索二日目。
早速、俺の身に睡眠不足の悪影響が表れる。
「あっ、そこ足下罠あるから気を付けろよ! って言うまでもないか……」
そんなリックスの注意が聞こえてはいたが、ついうっかり石を蹴飛ばしてしまった。
「あっ」
次の瞬間ブオンという物凄い風切り音が背後から届く。
「はっ!?」
「きゃっ!?」
俺達第三小隊パーティを分断するかのよう、岩壁の切れ目から振り子のように斧が飛び出してきたのだ。
完全に生徒を積極的に殺しに来てるな……。
皆そうドン引きする。
そしてこの罠のせいで――。
俺は取り乱しながら言った。
「た、タリア!? 怪我はないかッ!?」
「えへへ、驚いて転んでちょっと尻餅ついちゃっただけで、別に怪我とか大したことないよっ? 大袈裟だなぁ」
「そんなことあるものか!? 斧が当たったのではないのか!?」
「あんな遅い斧、転んでたって当たらないよ?」
「しかし……胸がえぐれてッ!?」
そう指摘した次の瞬間、ライナライアが怒鳴る。
「ハルノ貴様! タリア様の胸は元から絶壁だ殺すぞっ!?」
するとこれを聞いたタリアの顔が恐ろしい形相に変わった。
どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
「あ? 自分はちょっと乳がでかいからってなんなのかな? ララちゃん?」
「はいっ!?」
「そんなに偉いの?」
「い、いえっ!? そういう訳では!?」
「魔王死ぬの?」
「お、落ち着けタリア、色々と破綻してんぞ!?」
そう間に入ったリックスにも矛先が向く。
「リックスもリックスだよ。これみよがしにおっぱいアピールしてなんなの。なんで男のくせに私よりおっきいの意味わかんない」
「これは胸筋だっつーの!?」
「筋肉が偉いの? キモい」
「キモッ――!?」
リックスはキモいの一撃で意気消沈。
俺が寝なかったばかりに、大変なことになってしまった……。
睡眠不足による悪影響、恐るべし。
そう大きな責任を感じてしまう。
キザ貴族はブレない 兼定 吉行 @kanesada-yoshiyuki
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