本作の概要を読むと、現代日本女性・美也子にしてみれば「やっちまった」事案。ちょっとした出来心でした。まさかそんなことになるとは思ってもみませんでした。そう弁解しても、お決まりの文句「もう遅い」に至ります。
さて、ここから話がどう転ぶのか。
小説は、美味しいところは事前に明かさないもの。概要を終えたところから、出来心の愚かさと恐ろしさが真に明かされます。
人間って怖いです。男女の仲は特に怖いです。欲を突き詰めるとどこに至るか。俯瞰してみれば戯画的ではありますが、現実を振り返ると絵空事ですまないものがあります。
全体としては題材に比してむしろ明るいムードです。それはファンタジーつまりおとぎ話の力によるものです。しかしおとぎ話の真実は怖いのが常です。まずは楽しんだ後で、その裏に背筋を冷やし、二回味わうことをお勧めします。