意識の高い人の芸術に関する悩み

エリー.ファー

意識の高い人の芸術に関する悩み

 まず、その、あれなんですよ。

 芸術にはコンプレックスが必要じゃないですか。

 で、ほら。

 僕って、あんまりコンプレックスとかないから芸術できないんですよ。

 分かりますかね。

 その、そういうことなんですよ。

 だから、芸術をやってる人って皆コンプレックスとかを持ってて。

 あっ、皆とか言っちゃうと、例外があった時に色々言われるから、そういう傾向があるってことにしておきましょうか。ねっ、ほら、コンプレックスとか持ってる人って、こういう細かい所に突っかかってきて面倒くさいじゃないですか。

 ね、だから、しょうがないけど丁寧に表現しておかないと。

 で、話を戻すんですけど。

 そういうことなんですよ。

 僕って、ほら、控えめに言ってもセンスとかはあるじゃないですか。

 で、才能もあるし、まぁ、頭も悪くないって言うか、かなり良いじゃないですか。

 それでも、芸術とかに手を出さなかったっていうか。

 いや、その実は芸術とかやってみたんですけど、上手くいかなかったっていうか。

 でも、それって、ほら。

 あれですよ。

 僕の人生が上手くいってるから成功ができなかったってことなんですよ。

 良い芸術家には強いコンプレックスが必要で、そういうコンプレックスを持たなくてもいい人生を歩むことができたから、僕は芸術家として上手くいかなかっただけで、別に才能がないとか、能力がなかったとか、芸術をやるに値する人間じゃなかった、とかじゃないんですよ。

 あくまで、その、ほら。

 僕って生きるのが上手いから。

 強いコンプレックスを持てなくて、たまたま、その歌手とか、小説家とか、詩人とか、歌人とか、役者とか、芸能人とか、お笑い芸人になれなかっただけなんですよ。

 まぁ、その芸術的な視点で言えば、逆に運が悪かった的な感じですよね。

 ほら、暗い過去とか必要じゃないですか、芸術家って。

 いやぁ、僕って、幸せな人生を送れちゃってるから、たまたま上手くいかなかっただけって感じですよね。

 本当に、たまたまなんですよ。

 まぁ、でも、ほら。

 芸術に関する知識は沢山あるんで、他の人よりも広い視野で、その、なんていうか、その客観的な視点的な感じで喋れるっていうか、そういう感じなんですよね。

 だって、ほら、僕って結構器用な感じだったりするじゃないですか。

 家も金持ちだし。

 結婚もしてるし。

 もうすぐ子どもも生まれるし。

 めっちゃ人生が上手くいってるし。

 だから。

 歌手とか、小説家とか、詩人とか、歌人とか、役者とか、芸能人とか、お笑い芸人とかになれなかっただけなんですよ。

 ねっ、信じて下さいよ。

 あーあ。

 コンプレックスとかがあったら、凄い芸術家になれたのになぁ。

 あーあ。

 コンプレックスみたいなのがあれば、強いヒキみたいなのになって、皆が興味を持ってくれるから、僕の創り出した作品が認知されて、魅力が伝わりやすくなるのになぁ。

 あーあ。

 幸せな人生を過ごしているせいで、逆に上手くいかなくなることがあるなんて。

 くぅーっ、逆に大変ですよ。

 もう、逆不幸。

 逆不幸ですって。

 これじゃあ、逆不幸ですよ。

 あーあ、もう。

 羨ましいなぁっ、もうっ。

 トラウマとかっ、コンプレックスとかっ、そういうのが僕にもあったら、それがガソリンになって、歌手とか、小説家とか、詩人とか、歌人とか、役者とか、芸能人とか、お笑い芸人としてエネルギッシュに活動できて、一流の人間だってことが世の中にようやく伝わるのになぁ。

 あーあ。

 これじゃあ、逆不幸ですってぇ、もうっ。

 もうっ、もうっ。

 これ逆不幸じゃないですかぁっ。

 コンプレックスさえあればなぁ。

 ちっくしょう、もうっ、悔しいなぁっ。

 僕っ、一流だってっ、伝わるのになぁっ。

 あーっ、もうっ、もうっ、もうっ、もうっ。

 欲しいっ、欲しいよぉっ。

 僕は全部持ってるんだから、あとは僕にコンプレックスを加えれば凄い人間だって社会に伝わるのにぃっ。

 あーあ。

 僕は実力もあって、才能もあって、魅力もあって、何でもかんでもできちゃうわけだからぁ、後はコンプレックスさえあったらぁ、成功人生が大成功人生になっちゃうんだけどなぁっ。

 それだけなんだけどなぁっ。

 もうっ、もうっ。

 逆不幸っ、逆不幸っ、逆不幸っ。

 僕って、もうっ、逆不幸体質っ。

 僕のバカバカッ。

 もうっ、もぉうっ、もぉうっ。

 もおぉうぅぅっ。

 ぼっ、僕は、僕に向かってぇ、怒っちゃうぞおおぉっ。

 ぷっ、ぷっ、ぷっ、ぷんすかあぁっ。

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