第7話 いとちゃんの思い出(3)

 誕生日プレゼントのトランポリンを、作ってくれるというお父さん。いとちゃんは目を輝かせて尋ねます。

「どうやって作るの?いつ作るの?私も作りたい!」

 いとちゃんは自分もトランポリン作りに加わりたくて、ワクワクが止まりません。

「次の土曜日までに準備をしておくから、いとちゃんはそれまで、しっかり食べて寝て勉強しておいてね」

とお父さん。お母さんは2人のやり取りを見て微笑んでいます。

 「分かった!」

 いとちゃんは素直にお返事をして、晩御飯をきれいに平らげました。


 そして土曜日になりました。朝ごはんを食べた後、さっそくトランポリン作りが始まりました。お父さんは準備しておいたたくさんの枝や木材を、リビングに運んできました。

「さぁて、いとちゃんにも手伝ってもらおう。まず、トランポリンの枠を作るんだ。糸を出してごらん。ネバネバする糸の方だよ」

 お父さんに言われて、いとちゃんは腰のあたりから

〝にゅう〜〟

と糸の束を出しました。お父さんはそれを、枝と枝の繋ぎ目に手際よく巻き付けました。ネバネバした糸は、接着剤の役割もして、枝同士をしっかり固定することができました。

「前、傘を作ったことあるよ!」

 いとちゃんは雨の日に、枝と落ち葉で小さな傘を作ったことを思い出しました。

「そうか、すごいね。じゃあ今日も上手に作ってね」

と、お父さんは枝をどんどん繋げていきました。 その間、いとちゃんは糸を

〝にゅう〜〜〜〟

と頑張って出し続けました。アーチを描くように繋いでいった枝は、円の形になり、トランポリンの枠が出来上がりました。

「さぁて、次は足をつけるよ」

 お父さんは4本の木材を円の形の枠に固定して、トランポリンの土台を仕上げました。

「さぁて、いとちゃん。次はサラサラの太めの糸を出してごらん」

 いとちゃんは、糸を出そうと腰のあたりに気持ちを集中させました。しかし、

〝にゅ・・・〟 

 糸は出ず、座り込んでしまいました。

「おなかがすいたよー」

 いとちゃんのお腹は

〝ぐぅ〜〜〟

と鳴りました。

「ちょっと休憩しようか」

 お父さんは6本の手についた木くずを払い、いとちゃんを抱っこして食卓の椅子に座らせました。食器棚から中くらいの大きさの丸いお皿を出して、カエルのお煎餅2枚と芋虫チョコを5粒、きれいに並べてのせました。冷蔵庫から木の実ミルクを出して、コップに注ぎました。

 いとちゃんは、集中してたくさん糸を出すのを頑張ったので、とってもはらぺこです。あっという間におやつとミルクを平らげました。しょっぱいお煎餅と甘いチョコレートで、元気を回復することができました。 

「どうする?トランポリンの続きは、また明日にしようか?」

 お父さんはいとちゃんに聞きました。

「・・・」

 いとちゃんは、じーっと自分の心の中を見つめます。そして、

「今日はもう疲れたから、また明日頑張る!」

と言いました。おやつを食べたら幸せな気分になって、ちょっと眠たくなったのです。

「分かった。また明日一緒に作ろうね」

 お父さんは、余った枝や木材、完成した枠をリビングの隅に寄せて片付けました。


〜つづく〜

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

くもくも いとちゃん @kiriko_san

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る