エピローグ


「記憶、戻らないの?」

「戻らない。ホッとした?」

「まさか」



 結局ユータは成仏することも記憶を取り戻すこともなく、以前と変わらず探偵をしている。

 彼が全てを思い出せば成仏してしまうのか、思い出さなければ成仏しないままなのかもわからない。

 でもきっとユータがいなくなったら寂しいと思うのだ。もちろん教えてあげるつもりは無いが。


「あ、ヒナ。依頼人だ」

「え」


 振り返るともう依頼人は現れ、ユータと話し始めている。

 今、ヒナと呼ばなかっただろうか?

 ユータは私のことをそんな風に呼んだことはない。呼んでいたのは、雄介だけ。



「……本当は、忘れてなかったりして」


 だとしたらいつか暴いてやろう。


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こちら幽霊専門探偵事務所 多崎リクト @r_tazaki

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