突然選択肢が目の前に現れたんですけど!?

@hamakinosukima

第1話 そもそもこれって何ですか?

貴族といえど跡取り息子である長男、そのスペアである次男が揃っている家の娘の使い道は他貴族家との繋がり強化程度しかないはずなのに城で働いていても文句一つ言われない。これはどれほど幸運なことだろうとティア・ディーラは同僚の話を聞いて考えていた




「もう、本当に嫌になっちゃう。適齢期のいい男はいないのかって…城で会えるのはメイド仲間くらいよ?王子様にだって早々会えるものじゃないし、騎士様や魔術師様だって私達が声をかけれるわけないじゃない!」


「本当にそうよね。たまに声をかけられたと思ったらこれを洗濯しといてくれって…トキメキもないもの」


「家から連絡が来るのは大変よね」


「あーあ、ティアはナサールはいいわよね。ナサールは婚約者いるし、ティアは家から連絡来ないんでしょ?」


「私は…諦められてるもの。ミルバまだこれからの年齢でしょ?親御さんも心配してるのよ」


「……もう、この年になって心配するなら婚約破棄になったときに相手見つけて欲しいわよ!」


「ほら、そんなに不貞腐れないの。可愛い顔が台無しよ?」




ティアは一般的には行き遅れといわれる20代後半の年齢だが同僚仲間であるミルバが言うように結婚を勧められたり勝手に決められることはない。ナサールは年若く最近メイドになったばかりだが婚約者の方が年下で適齢期になるまで行儀見習いとして働いている。ミルバはティアと同年代だが10年前にとある事件があって婚約を破棄してから婚約者が空席のままになっているらしい。勿論ティアも幼少のころには婚約者がいた。いくら田舎で山しかない土地を収めているからと言って伯爵家の一員である彼女は10代のころ婚約者を選定することになり、幼馴染であり淡い恋心を抱いていた隣の領地の息子と婚約をした。だが、彼とは死別という形となり別れることとなった。17歳という成人を迎える前に去った幼馴染であり婚約者との別れは当時15歳だった彼女に受け入れられるものではなく、1か月間部屋から一歩も出ずに涙でベッドを濡らしたものだ




「あ、いけないわ。私たち大広間の掃除を任されていたのよ」


「じゃあ、私が洗濯干しちゃうわね」


「そんな、この量は大変でしょ?ミルバ先に行って掃除を始めてて。私が洗濯干すまで手伝うよ」


「大丈夫よ、ナサール。これくらいの洗濯は一人でできるもの。それよりも、二人が遅れて行ってメイド長のお説教タイムが始まっちゃう方が夜ご飯の時間が遅くなっちゃう」


「…それはそうだけど」




暫く迷っていたようだが再度言い募れば何かあったら呼んでねという言葉と共に立ち上がる二人に手を軽く振る。実はメイド仲間と言えど二人の持ち場は掃除中心だ。その二人がこうして一緒に洗濯をしていたのは騎士団公開訓練がある月の日が洗濯担当のティアの一番忙しい日だからに他ならない。7日周期で訪れる月の日は騎士団の活動をPRする一環で自分の婚約者や婚約候補を見つけようとする貴族令嬢たちが招かれる公開日だ。頻繁に会えていない婚約者にいいところを見せようとしたり婚約者がいない目当てのご令嬢にかっこいいところを見せようとするのは構わないが、そのせいで変な汚れをつける騎士が続出する最悪な日なのだ。あの気遣い屋の優しい二人が自分のせいでメイド長に怒られることはあってはいけないとそんなことを考えながらもちらりと横目で洗濯物籠を見る。その量なんと7個。これに加えてたまに道あるく騎士たちに呼び止められてボタン付けなどもお願いされるのだから公開日に黄色い悲鳴をあげている令嬢たちが騎士たちに話しかけられるメイドに対して陰口を言う姿に殺意がわく瞬間があるのは仕方のないことだと思う。それこそ、メイドになるものは主に平民や王族に連ならない貴族令嬢が主でありその令嬢たちが自分の大好きな人たちの近くに行きたくてもいけないのが辛いのはわかるがその方針がとられているのは結婚前に夢が壊れないようにだと踏んでいる。どこの世界にボタンをつけてくれと頼まれてときめく女性がいるものか。メイドたちの中で一番優良物件だと言われ黄色い悲鳴をあげられるのは第一王子でも、第二王子でも騎士団長でも、魔導士長でもなく副執事長であることがその証明である。因みにその副執事長は30代前半だが一途に思い続けていた40代前半のメイド長を口説き落として最近ようやく婚約できた。そのおかげでちょっとだけメイド長が絡みやすくなったことも追加で今もなお好感度は急上昇中だ




「よいしょ」そんな声を出しつつ籠を一つ持ちあげそのまま立ち上がる。とにもかくにも運ばないと終わらない。今は太陽が少しかげる時間だから頑張ればギリギリ夕食時間に終わるはずだ。夕ご飯の時間が遅くなるという理由で追いやったのにティアがこないとなればあの二人に顔向けができなくなる。それは嫌だ


そして、物干しがある庭と本館に向える道がある回廊へと足を一歩踏み出した時ピコンと聞きなれない軽い音がした




何処に行きますか?


【庭】 ??


【本館】  ??




「は?」


それと同時に現れた目の前のそれは長方形を横にした形で言葉が中に入っている。そんなものが浮かんでいたのだ。思わず声が出ても許して欲しい

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