銀星中学野球部
練習試合から2日後俺は親から転部の許可を得ようと必死だった。なんとなくで選んだサッカー部では下手すぎて幽霊部員だったし、なんか野球部が楽しかった。迷う理由はない
「だからと、オレはもう一度野球がしたくなった!それだけだ」
「野球部に転部したいはよくわかった。」
しかし我が家には致命的な問題がある。
「でも、モスには悪いけど、その、お金が…ね」 そう。金がない。俺の実の父親は、すでに病気で死んでいて、半年前に再婚した父親がいわゆる結婚詐欺師で、一時は借金まみれとなった。母親や、親戚が、必死になって返してくれたが、貧乏生活は、今でも続いている。
「道具なら小学校 時の使えばいいから!」
小学校の時のグラブだが、練習試合の時使ってみたが、意外としっくり来た。
「ごめんね。モス」
そんなこんなで親の許可をもらい無事転部した。
―転部初日―
「先日の練習試合でもお世話になったが、橋岡くんが改めて新しい仲間として加わってくれる。」
顧問からあいさつと、一通りの説明をされたあと早速練習だ~と思ったのだが、今日は(というかほぼ毎日)高校が、グラウンドを独占しているらしい。これは意外と中高一貫あるあるだったりして!
なんてのんきなこと言ってる場合じゃない。どうするんだろう
「えー今日は、パーバで。M、穴、クラッシュ2周で、」
どうやら練習メニューの相談してるらしいが、まるで暗号だな。
とりあえずバットを持って真也についていくと
半屋内といった感じの小さな駐車場付いた。
「ここが俺等のメイン練習場所つーしょパーキングバッティング略してパーバ」
いや略し方に無理ありすぎだろ…
その後他の暗号についても説明を受けた。MはM球というボールを打つ。穴は穴開きボールを打つ。クラッシュは、タイマン壁当て。交互に壁当てをして先に3回エラーしたほうが負けらしい。なぜクラッシュかは名付け親の先輩しか知らんらしい。試しに真也とやってみたが意外と面白い。なんだかんだで2周が終わった。
「やっぱ野球はいいな。」
「とりあえず今日は、こんなもんでいいかな」
真也とそんな話をしていると
「先輩、今日こそは声出しやりま しょうよ!」
谷井くんが不意に真也に向かって言う。声出し、それは部外者の俺でも聞いたことがある。うちの学校の、野球部は、弱さでも、一人あたりの声量と元気の良さでは、県1位(なお、後半2つは真也調べ…)
ということで、みんなで応援歌の練習をしてるとかしてないとか…
それにしても谷井くんは、野球もうまいし、ムードメーカーだし将来大物になりそうだな。と、勝手に想像した今日このごろだった。
「やろうよ!こないだの練習試合では私遅刻してできなかったし。それに橋岡くんに教える良い機会ジャン。」
佐竹真菜を中心に他のメンバーもすげーやる気だ。もはやこれが一番の楽しみなのでは?
「真也、アナウンスして− 一番セカンド中林で」
佐竹がみんなにどこからか取り出したメガホンを配りながら言った
「橋岡くんも、なんとなくでやってみて!少年野球やってる人なら何となくわかるよ!」
「一回の表銀星中学校の攻撃は一番セカンド中田さん」
真也がアナウンサーのように読み上げると、佐竹がみんなの前に立ち、
「初回からどんどん攻めていくぞ-!」
「オー!」
「では、新曲中田ヒット2行きます!」
中田ヒット2ってオリジナル曲だよな。なんとなくわからねーよ
「そーれ!銀星のグラウンドに疾走る稲妻!音速の弾丸!飛ばせ銀河まで!かっとばせ-中田」
―三十分後―
「オーオオー魅せろ奇跡を起こせ!放てよ会心打てよ大川!かっとばせ修司!イェーイ」
やっと終わったっぽい。適当にメガホンを三十分ぶっ通しで叩くのは結構きついな。
「続いてチャンテシリーズ」
「イエーイ!」
「待ってました-!」
うそだろ…試合中はこんなんじゃなかったよな(笑)
てゆーか真也は普通にこれを毎日やってるの!今更だけど全部オリジナル曲だよねこれ!作曲部かよ!こんな部活やだー!
明日はストライク モス @mosu2009
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