第6話 あのガキどもも喜ぶだろう。

ガキどもを引率しながら、廃墟から帰った伊千果は、わたしに告げた。


「あの老人はバブル期の想念に侵食されてる」

「想念に侵食」

「あのままだとあの老人、地場に憑りつかれる。きっとその想念に引寄せられたんだと思う」


正確には解らないが、最初にドローン春号が撮った、あのキラキラと妖しい赤い光は、そのバブルの想念によるものなのかもしれない。


「どうする?」

「うん」


そして結局、動画を配信した。

その動画を偶然見てしまった家族によって、警察に通報され、老人は保護された。



●☆*:..。o○●☆*:..。o○●☆*:..。o○●☆*:..。o○●☆*:..。o●



わたしと伊千果は、1週間後に、老人の病院を訪れた。


伊千果は、お見舞いの果物を渡すと、

「すいません、こんな事になって」

と。伊千果の言葉から、かなりの間が開いた。そして、

「いいよ。あのままだと家族に心配かける所だったから、感謝してるよ」

「それは良かったです」

「コーヒーはいるかい?」

「ええありがたく」


伊千果は、珈琲のボトル缶を受け取った。

今度のはちょっとだけ微糖だった。

 

あのガキどもも喜ぶだろう。



病室を出ると、明らかに出来る女であろう女が、声を掛けてきた。

「わたくし、磯山五円先生のマネージャーをしている者です」

「「はあ」」


あの爺さん、磯山五円って言うんだ。

なんちゅ名前だ!

わたしと伊千果は、目で語り合った。


「磯山先生は放浪系&憑依系画家でして、ああいった怨念の籠った場所に出かけて、憑依状態に陥った上で、斬新な絵画を描く作家なので、なんて言いますか、先生の言った事は、あまり本気にしないで下さいね」

   

「このバブルの廃墟のオーナーだったとか、青春だったとかは嘘?」

「嘘と言うか、憑依されていたと」

と出来る女系マネージャーの公式見解だろう。

さらにマネージャーは、

「磯山先生は、バブル当時はまだ子どもですし、それとこれは磯山先生からの感謝のイラストです。受け取ってももらえると、磯山先生も喜びます」


わたしと伊千果は目を合わせて後、

「「もちろん、ありがとうございます」」


部室に帰ったあと開封すると、楽しげな部員がパステル画で描かれていた。

3人の少女は、綺麗なドレスを着ていたが、由貴人は違った。


「この小便小僧がぼくですか!?」

「「「そのようだね」」」


「折角だから部室に飾ろうね」

わたしの提案に2人の女子は賛成した。


「嫌です!絶対嫌です!」

と思春期の少年は反対した。



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始めて入った部活は、動画配信部でした! 五木史人 @ituki-siso

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