この涙を止めてよ
ナナシリア
この涙を止めてよ
真っ暗な世界で、僕は何故ともなく涙を流した。
溢れた涙に自分でも驚きつつ足を進めながら考える。
一体何故だか僕自身にもわからないが、定期的に涙が零れてしまうことがある。
僕自身でもわからないうちに疲弊しているのかもしれない。そうだとしたら、現代とは恐ろしいものだ。
現代の大衆向け文芸では、こういう状況を解決するのはいつだって”出会い”だが――出会いなんてそう都合よくあるものじゃない。
そもそも、この世界でなにと出会ったとて”自分”が孤独であることに変わりはない、というのが僕の持論だ。
いくら複数人で固まって集まりを作ったとて、いずれ壊れる。
だから僕に、は何故ともなく流れだす涙に見て見ぬふりをする以外の選択肢がない。たとえその涙に気づいたとしてもなにも出来ないのだから。
暗闇の夜空を見上げる。
こんな真っ暗な世界では人工の明かりを求めるより空の星を眺める方が幾許か効果がある。
”出会い”が根本的な解決にならないからといって、僕がこの状況を放置するのは心を病むのに充分な問題だ。
僕は足を止めた。
誰もいない夜空に、独り言葉を投げかける。
誰か、この涙を止めてよ。
この涙を止められるような人がいれば、その出会いは孤独からの逃げ道となるかもしれない。
期待に反して孤独の空に反芻する声が誰かに届くことは無く、僕はいつまでも孤独に生きるしかないみたいだった。
この涙を止めてよ ナナシリア @nanasi20090127
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます