第12話 聖サイン王国
日が沈み、今日の仕事が終わった美優たちはこの地で過ごす間に寝泊まりする豪華な家に帰っていた。もちろん各部屋、豪華絢爛な装飾品が施されているのだが、美優は今、その豪邸の外にある小屋に連れてこられていた。
先程とは違う質素な服を着せられ、ジオロールとその配下数名に囲まれている。もちろん用件は昼間のこと。あの子供を助けたことに対する罰を与えようとしていた。
「さて、聖女様。覚悟は出来ていますかね。少々教育が必要なようですから。それに聖力の使い方は知っているはず。私が罰してもきちんと回復してくださいね。」
ジオロールは右手に持つ杖を掲げて魔法の準備をする。この1ヶ月間で美優は聖力の使い方を学んでいた。だから彼の言う通り傷の回復は簡単に出来るが、痛いものは痛い。
「まってください。ジオロール様。」
するとジオロールの配下であろう黒く長い髪に片眼鏡の男性がジオロールの行動を止める。ジオロールは不機嫌に魔法を止めた男の方を見る。
「なんだ?言ってみろ。」
「はっ!失礼ながら今までの魔法による罰を行っても聖女にとってはあまり効果がないように思えます。
私に考えがあります。どうか彼女と私2人きりにしてくれませんか?改心させてみせましょう。」
ジオロールは嫌そうに男を見つめる。彼の言っていることは一理ある。フリガシラにはあと5日間は滞在する予定だ。1日くらい彼に任せても良いのかもしれない。
「わかった。では我々は席を外そう。」
ジオロールたちはその発言した男を1人残し、その場を去ったのだ。すると男は美優の前に跪いた。
「聖女様、大変失礼しました。私はシン・バーテット。聖サイン王国の者です。」
男は丁寧に挨拶をするが、美優には何が何だか分からなかった。それを察したシンは丁寧に自分のことを、というより自分の国について説明をする。
「本来、異世界からの聖女召喚は我々聖サイン王国が取り締まる手筈なんです。ですが、力を得ようとしたサルベキア王国は独断で異世界召喚の魔法を使用してしまったのです。
それに気づいた聖サイン王国は元々潜入捜査をしていた私に聖女及び、異世界召喚によって巻き込まれてしまったもの達の保護を目的としました。
遅くなり申し訳ありません。」
深々と頭を下げるシン、とりあえず今の話を聞いた感じ、聖サイン王国は自分たちのことを大事にしてくれそうだった。
「あなたは...私をどうしたいんですか?」
美優は自分の疑問を問いかける。それにシンは正直に答える。
「はい。美優様には1度聖サイン王国に来て頂こうと思っています。
もちろん香織様や司様も時間はかかりますが我が国にお呼びしようと考えています。
・・・ただ...。」
シンは気まずそうにして覚悟を決めてから話を続けた。
「首輪の解除方法が分かりません。聖女サイン王国には首輪をつけたまま連れ帰ってしまうかもしれません。
それに...司様の行方が分からなくなってしまいました。」
前半部分は別にどうでも良かった。ただ後半が、司の安否が現状分からない状態に美優は酷く恐怖を覚えていた。
「安心してください。我々が必ず見つけ出します。サルベキア王国のような非道な扱いはしません。ですからあなたの意志を確認したいのです。聖サイン王国に来てくださいますか?」
美優は少し考える。彼の言うことは正しいのかは分からない。ただもしそれが本当ならもっと自由に動けるかもしれない。もっとこの世界について知ることが出来て家族とも会えるかもしれない。
・・・少なくとも今より酷い環境はなかなか無いだろう。
「・・・わかりました。あなたと共にその聖サイン王国に行きます。」
美優は自分の意思を告げるとシンはこれからの事を伝えた。彼曰くこのフリガシラの遠征は続けるらしい。ただその最終日に聖サイン王国のもの達が逃走の手引きをしてくれるらしいのだ。
そこから少し各所を周りながら聖サイン王国を目指すようだった。
話を聞き、美優は家族の安全を祈りながら眠りにつくのだった。
魔王と聖女と英雄と カマキリキリ @kakaki0820
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