AIへの伝言

榊 薫

第1話

 はじめに

 異世界での魔術によるファンタジーなどで若者の創造力を掻き立てる小説が後を絶たないことで、AI(人工知能)は本当のことであるような錯覚を起こし、数少ない真実は見過ごされます。これから技術分野で働こうとする人にとって、魔術は使えず、その組織が解決困難で行き詰った話やその対応の仕方についての情報は極めて少なく、AIでも見抜けない謎を解く技術の仕事に追われる日々が待ち構えています。

 働き盛りの人が解決したくて分析機関に行っても、分析機器のオペレータは異口同音「測定はするがその後の解析はご自分でどうぞ」と自分の解析力がないことを棚に揚げて追い返されます。技術には金のかかる時代で、各種分析機器を使って数百万円かけて依頼研究しないと糸口がつかめません。「ドラマのような捜研の人が居たならなあ~」とため息が出ます。

 ドラマの鑑定や推理小説に登場する探偵、捜査官の多くが難問解決する時に、組織から言われたことだけでない発想で推理力を働かせて解決しています。

 問題解決する人は、組織の意向を汲んで連携・行動しますが、一心同体化することなく、自己の感情のまま自分の価値観に従って取り組んでいます。人の心には無意識的な領域の働きがあるとした、ユング(1875-1961年)の心理学における内向的思考が働いています。

 科捜研の榊マリコが生まれる前に筆者が取り組んだ推理の手順には、原因と結果の関連性を因果関係から見出せるものがあり、また、全く関連性のないものから見出せるものもあります。

 砂、土、塵埃などはごく身近で有り触れた素材ですが、品物を放置していたことが原因でトラブルとなる事例が多く、放置していた時に付着した砂、土、塵埃がその保管や場所の特定につながることがありました。

 そこで、砂の因果関係を解析するものからご紹介します。


 川砂

 河川の岩石や砂について、

「上流の大きな岩石は下流に流れて行く間に小さくなって石や砂になる」

 と学校などで教わった人が多いようです。

 また、

「川の石は、流れる間に角が削られるため、下流へいくほど、丸く、小さい」

 と教わった人もいます。

 しかし、実際にそれを測定した人はほとんどいません。

 砂の粒は、さまざまな場所に存在していた上流の石または岩が流れ流れて、下流に運び込まれると言うことになります。

 もし、上流の岩石が運ばれて下流の石、砂が成り立っているのであれば、上流の痕跡が下流に現れるはずです。

 一般論にとらわれず、新たな価値観に従って取り組んでみることにします。

 因果関係を知るために最も近いものに、統計的には相関係数があります。

 相関係数が高いということは、どちらが原因でどちらがその結果生まれたことであるという根本的な因果関係は不明ですが、何らかの関連がある可能性を示しています。

 相関係数は1から-1の範囲の数値で、有意差判定はデータ数により決まりますが、通常、絶対値が0.6以上あれば何らかの可能性があることを示す根拠となります。

 そこで、上流と下流の岩石と砂の相関性を成分について調べて見ました。

 F山麓から流れるSG川とSK川の2つについて、約4kmごとにそれぞれ10箇所採取して調べました。

 その結果、その上流の岩石と下流の石や砂との相関性は0.2から0.5で認められませんでした。

 相関性が認められたのは、岩石または石とそれを採取した場所の砂との相関性で、0.7以上でした。相関性は、4km以内でしか影響しないことを示しています。

 どのくらいの距離で相関性が見られなくなるのか調べるには4km以内でよいことになります。

 また、海に注ぐ河口の砂の中には、約50km上流のF山麓特有の赤い岩石の小さくなった赤い砂も含まれていますが、その量は1/1000以下で極めて僅かです。

 もし教わったとおりなら、上流から河口まで赤い砂で埋め尽くされているはずですが、そうではありません。

 これらのことは、

「川の石は、流れるあいだに角が削られるため、下流へいくほど、丸く、小さくなる。」ということを考え直すべきであることを示しています。

 ところで、摩擦力は見かけの接触面積に依存しないで荷重に比例します。

 この法則を最初に発見したのはレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519年)でフランスの物理学者クーロン(1736-1806年)が提唱したとされています。

 丸くなるということは、

 丸く削る力=摩擦発生原因となる流れによる搬送速度×流れてくる石の重さ

 です。

 下流はゆっくり流れることから、同じ大きさの石であれば、上流は力が強く、下流は弱い力で削られていることになります。

 残存する大きさの重さ=上流から下流に搬送できなくなる限界の重さ

 です。

 石の密度は変わらないと仮定すると、ゆっくり流れる下流ほど搬送できる大きさは小さいため、削る力は弱くなります。

 同じ大きさの石なら、下流ほど長い時間その場所に留まって、大きさの小さい石が弱い力で削ることで丸くなります。

 川底には予め大きな岩石が埋まっていて、その岩石の上を搬送できないぎりぎりの大きさの小さな石が積もっていることになります。

「搬送できないぎりぎりの大きさの石、砂は、その近辺上流の岩や石が砕けたものが主体となっている。」とすべきです。

「上流から下流に流れるあいだに角が削られる」とだけ教えてくれた「教師」は、知識の伝達という学校教育の在り方に対して疑問を抱くことなく学習指導要領に沿って、自己の感情から沸き起こる発想がなく、対応していた可能性があります。

 人の心理には大別して2つの無意識的な領域の働きがあるとしたユングの分類では、常に周囲のできごとへの関心が高く、すぐにそれを受け入れる「外向的対応を重視する人」と周囲にとらわれることなく自分の思考価値観を育成する「内向的意識を優先する人」に分けています。

 発想のひらめきを働かせることなく学習指導要領に従った人は周囲への関心が優先した「外向的な思考型」です。一方、独創性を発揮した建設的意欲を働かせて問題解決できる人は「内向的な思考型」に相当します。

 課題に取り組む集中力は解決に役立つはずです。

 そこで、集中力は個人の行動と組織連携力でもたらされると仮定します。個人の行動は、「発想がひらめかない」か「独創性を発揮して建設的意欲を示す」かのどちらかで現れるものとし、組織との連携力は、解決を望んでいる組織の意向を汲んで連携する対応力が「低いか」「高いか」のどちらかであるとすることで事件・事故に取り組む集中力が示されることにします。

 数値で示すと

 独創性を発揮した建設的意欲を働かせて問題解決できる人の独創的意欲を2とすると、発想のひらめきを働かせることなく、部分的な過去の事例に捕らわれて学習指導要領に従った人の独創的レベルは1であり、

 組織の意向を汲み取る対応力はどちらも高いのでレベル2、

 集中力は問題解決できる人を2とすると、部分的な過去の事例に捕らわれ学習指導要領に従った人は集中した発想がなくレベル1で低いものとします。


 依頼者

 トラブル解析には、解析する者が建設的に必ず解決しようとする意欲に基づいて、組織と一心同体にならずに、組織から言われたことは、ほどほどにして独自の対応力を働かせて推論を行う集中力が大切です。

 適切な要因を選定することができれば、解析すべきプロセス、作業の関わり方、組織の日常対応力などからどの程度の集中力を働かせているのか見て取ることができます。

「組織力」の差は、その組織に属する一人ひとりの行動と集中力の違いから生まれてきます。適切なデータを積み重ね、集中力の高い人材に匹敵する解析を行うことで、何を見直したら良いか明らかになり、技術レベルの向上が期待できます。

 そうなれば、集中力の高い人材はもっと創造的な仕事に携わることができ、組織の力量も向上できます。


 ところで、分析機関に依頼に来る人は独自で解析できないことから、課題解決の集中力は0以下のマイナスレベルです。

 組織が解決できないため、外部に依頼する人の多くはパニックに陥っています。

 そのストレスから脱却する不安解消のための行動もあり、その人が本来持っている行動とはかけ離れて、別人のようになっている可能性もあります。

 不安な心理状況は周囲の人に伝わりやすく、組織がパニック状態に陥っていると依頼者もそれを受けやすいようです。

 危険・事故解決には未解決の不安な状態になっていても思考して対応することが重要になってきます。

 そこで、元仮想研に務めていた現役時代を振り返って、依頼者の行動と集中力の関係を確かめることにしました。


 付着砂

 付着砂を持ち込んだ依頼者は眼光の鋭さの中に、どことなく熟年の穏やかさが感じられました。

 複数の箇所で採取した砂の成分を蛍光X線で測定し、もっとも近いものを探して欲しいとの依頼を受けました。

 その依頼者は、国内の砂の標本を持っているという埼玉の人を訪ね、衣服に付着していた砂が国内の海岸の砂の中で、S湾に最も近いという情報を得て、さらにその湾のどこのものか知りたいとのことでした。

 その場所が分かれば、聞き込み捜査人員を集中できるとのことです。

 元素ごとのX線強度に質量係数を見込んで、半定量値を得ると、主成分から極微量成分までのそれぞれの濃度が得られ、それらの開きは10,000倍以上になります。

 得られた濃度測定値を対数に置き直さないと主成分以外の少量・微量成分はいずれも0付近に集中してしまい、2点の相関性となって、ほとんど差異が認められなくなります。

 そこで、比較するもの同士を対数に換算して相関性を調べて見ました。

 付着試料以外の測定試料数はS湾の20箇所ですから、相関係数を求める数は20通りです。

 相関性0.9以上高かったのは、M崎の近辺5箇所で、砂の幾何学的な形状とも一致しました。

 事件が起こったのは3日前の未明で、M崎の近辺に、古びた船が接岸した際、黒塗りの車が出迎えていたそうです。

 車のナンバーを記録していた人を探しだすことができたのだそうです。

 密航を斡旋する蛇頭(snake head)の手引きで上陸する際、深手を負った一人が暴力団のアジトで死亡し、付着した砂とともにH岸壁に投げ捨てられて発見されたとのことでした。


 付着砂依頼者の行動と動機

 この依頼者は、周囲の意向に合わせて葛藤を避け、実態よりもいい方に理想化して考える傾向があります。

 周囲がトラブル解析に取り組んでいると蚊帳の外にいるのがいやで、一体感を好みます。

 通常、平和で安定した心を保っていますが、解析に欠陥などが生じて緊張や軋轢が起こると耐え切れず、ほどほどにして遠ざかる傾向があります。想像力に富み、結果に対して楽観的です。

 自分はこれ以上解析できないと思いがちで、深刻な変化に立ち向かうといった積極的な行動は起こしません。

 さらに、まわりの人と自分の気持ちが離れると、問題に直面することなく、心地良い空想や趣味・嗜好などに走るため、問題に対して「出来なければ、出来なくてよい」といった無感情・無感覚に陥りやすいです。


 依頼者の行動と集中力

 人の行動に左右する無意識の心の領域を示したユング心理学における8タイプのうち、

 外向的または、内向的直観型で、自分の価値観で主観的に関心を示すことなく、直感を働かせて、標本収集力や分析解析力などあちこちの特徴ある組織力に関心が向き、組織の一体感を大切にしながら物事をとらえていますが、周囲の物事に関心が高いため、組織の働きかけに対して自己の感情を抑えて受動的に対応しています。ひらめきを思いついても、組織に順応するため直感の建設的範囲が限られることから、集中力は高くありません。

 そこで、独創性の程度と解決を望んでいる組織の対応力の高さとで事件・事故に取り組む集中力を数値で示すと

 独創性意欲の程度は1.5で、指導要領に沿った「教師」より少し高いレベル、

 組織への対応力は2で、指導要領に沿った「教師」とほぼ同レベルで高いです。

 しかし、この依頼者は自分で解決できないで依頼に来るレベルですが相関性の試料を選び出すことが出来ていることから、指導要領に沿った「教師」に比べて少し高く、集中力1.5です。


 靴下

 土に係る事件として、一見したところ因果関係がなく、不連続になることで得られるものを取り上げて解析しました。

 依頼者はがっしりした体格のスポーツマンタイプで、試料を入れたビニール袋をブラブラさせながらやってきました。

 ビニール袋に入っていたのは薄茶色の古びた靴下で、その色を確認したいと言うことでした。

 靴下を製造した会社のその色の販売経路から調査範囲を絞り込むことができるそうです。

 靴下の色に含まれる成分は有機物か無機物か不明です。

 非破壊で有機物か無機物か分からないものを調べるための分析装置は少ないです。

 一般的にどちらかが得意なものが多く、分析機器が発達していなかった頃は、燃焼するかどうかで判別していました。

 今では、有機物が得意な装置と無機物が得意な装置を両方使って非破壊でその種類を識別できます。

 その靴下は長いこと、土に埋もれていたので洗って持ってきたとのことですが、それにしても、「泥がないのはどうして」と思いながら、調べることにしました。

 転写プリントマークと呼ばれているメーカー名、サイズが足の土踏まずに相当するところに印刷されていて、マークの色が白の場合には、靴下の色は黒、紺、茶系、マークの色が青い場合には、その色は白、黄、空色系だそうです。

 長いこと埋もれていたため、変色しているが、転写プリントが白いのに、繊維は茶系であることが一致しません。茶色が褪せたのか知りたいとのことでした。

 X線回折やラマン分光分析を使うと、有機物と無機物の両方が調べられる可能性があります。劣化して、染料、顔料などの化学結合が緩くなって分子の格子間隔が広がっていると、回折光や分光ピークの幅が広くなり、低角度または低波数側にピーク位置が移動することが知られています。

 そこで、ラマン分光を使い、新しい茶色の繊維と古びた繊維のピークに違いがあるか調べてみましたが、両者の結果に違いは認められませんでした。

 その他の色も比べてみましたが、違いはありませんでした。

 このような機器分析で染料の識別は難しいことがわかりました。

 選定した分析機器で全体を眺めていて判断できないときには、局所的に眺めることが大切です。

 そこで、転写プリントをルーペで眺め直してみました。

 ルーペを使うと視野が狭くなるため、そこに集中して「異常があるかどうか」周囲との因果関係のない箇所が見出しやすくなります。ことに不連続なところは、「なぜ不連続になったのか」知る上で重要です。

 もし、転写プリントの表面と内部とで色に違いが生じている場合、破面から判別できるはずです。そこで破面がないか端から眺め始めました。

 すると、一見して肉眼では白色していた転写プリントの極一部に割れた箇所があり、その隙間内部の色が紫色している部分があることに気が付きました。

 依頼者は「白い転写プリントに違いない」と言っていました。その人の判断を鵜呑みにし、その色のところだけ眺めていたら、誤った結果になるところでした。

 全体を見るだけでなく局部的に眺めることが大切ですが、重点的に眺めないと調べる箇所が膨大となり、結論を得ることは困難を極めます。そのため、仮説を立てて眺めることが重要となります。

 紫色している部分の測定結果は青の転写プリントに使われる硫黄系顔料と一致し、白の転写プリントに使われる酸化チタン系顔料とは一致しませんでした。

 おそらく、付着していた泥を洗濯で洗い落とした際、表面の顔料は脱落し、それをつないでいた接着剤成分だけが残ったために白く見えていたと推定できます。

 青い転写プリントですから、靴下の繊維の色は白、黄、空色のいずれかです。

 そこで、靴下メーカーに、青色の転写プリント上に白色を重ね塗りすることがあるか確認するよう提案し、終了しました。

 のちに、メーカーでは重ね塗りすることはないため、白、黄、空色のいずれかになるとのことでした。

 なお、新しい茶色の繊維と古びた繊維のそれぞれの断面を拡大して比べてみました。新しい方の断面はそら豆型と呼ばれている中央がくぼんだ形状であるのに対し、古びた方の断面は円形でした。

 前者はM社の特有のもので、後者とは明らかに異なるメーカーのものでした。

 そのことを依頼者に伝えたところ、繊維メーカーが違っても転写プリントの色と靴下の色とは同じであるとの回答でした。

 依頼者の解析しようとする意欲、集中力が見て取れます。

 その靴下は、山林で山芋堀が発見した白骨死体の履いていた靴下だったとのことです。

 靴を履いておらず、付近の状況から、事件があったと判断されるとのことでした。


 靴下解析依頼者の行動

 集中的に頭を使うことは苦手で、靴下を洗濯して大事な証拠も洗ってしまった気後れがあり、過去の失敗に囚われています。繊維メーカーが違う比較品を持参するなど洞察力に欠け、斬新な発想はできません。

 まわりの環境が理解しにくく、興味対象が集中できずに、没頭できません。

 上司や大勢の影響に依存し、秘密が漏れるのを防ぐため、世の中とあまり関わりたくないと思っています。

 自分の知性を信じないで、常に周囲と運命を共にすることを好むことから、ユング心理学における8タイプのうち

 組織の働きかけに対して常に受け身で、自己の感情を抑えて対応し、縦割り組織の下支えとなる労働者型に近いことから、外向的または内向的感覚型と言えます。

 組織への集中力は、各個人が独創性を発揮した建設的意欲の程度と組織の意向を汲んで連携する対応力から、集中力を示すと下記のとおりです。

 独創性の程度1、(指導要領に沿った「教師」と同程度)

 組織への対応力1、(指導要領に沿った「教師」や付着砂の依頼者に比べて低い)

 集中力0(指導要領に沿った「教師」に比べて低い)となります。

 一方、ユング心理学における8タイプには以上のほかに、

 外向的感情型、内向的感情型があり、自分の好き嫌いだけで物事を判断する人がいます。自己の感情を抑えることができず、程度の差はあっても、組織に対して言うことだけは一人前で、組織にとって役に立たない非貢献者です。これらのタイプの中でも好奇心旺盛で行動的な人はその組織に留まることなく独立して起業します。そのため、これらのタイプは組織の構成員にはほとんど含まれていません。

 これらのタイプ以外はいずれも組織の一員として組織の目的に何らかのかたちで貢献します。

 以上のことから、集中力は個人の行動と組織連携力でもたらされると言えそうす。

 既に述べたように、事件・事故に取り組む依頼者の集中力は解決に役立つことが多いですが、依頼に訪れる人の集中力は高くありません。組織の目的を達成しようとするレベルに幅はありますが、集中力はそれほど高くないことから提供される資料・情報は疑って掛かる必要があります。


 リスクと優先順位

 昨今、本業以外に自宅でインターネットなど使って副業できる企業も多くなってきました。また、親の介護にかかわらざるを得ない若年介護など過酷な環境で働かざるを得ないケースもあることが知られています。

 複数のやるべきことを同時並行して進めるためには、優先順位をつけて取り掛かる必要があります。

 少ない損害でも頻度が高いなら優先すべきで、たまにしか起こらなくても人命に関わるといった優先順位が高いものは、頻繁に起こる問題対処の合間に対策を立てるべきです。

 リスクの大小を数値分類したシステム安全性のための標準作業として、米軍MIL規格があります。その方法は、課題のリスクを見極めるため、頻度と影響度の要素に分けています。

 さらに使いやすくするため少し簡略化してみました。

 頻度の要素について、どれだけ頻繁に起こるか大まかに、多、中、少に分け、それぞれ3,2,1点とします。

 影響度の要素についても、どれくらいの損害になるのか大、中、小に大別し、それぞれ3,2,1点とします。

 例えば、頻度が中の2の場合は月一回程度、影響度が中の2の場合は数10万円程度とします。

 これは、ほぼ月給程度に当たります。

 頻度が1の場合2の1/10で数年に一回程度、頻度が3の場合2の10倍で2、3日に一回程度、

 影響度が1の場合2の1/10で数万円程度、影響度が3の場合2の10倍で数100万円とすることで分類します。

 課題のリスクは頻度と影響度の数値を足して1引いた値とし、数値の大きいものから優先して対応する順序が決まります。

 同じ数値であれば、頻度の高いリスクを優先し、その間に頻度の低いものの対策を練ります。

 課題のリスクは上記の範囲以外も起こり得ます。

 巨大地震のように頻度が数十年に1回で、影響度は数千万円以上の人命規模の場合では、上記の分類を延長し、頻度0、影響度4とすることで、リスク3となることから、常日ごろ対策を練る必要があることが分かります。

 リスク4以上は即刻対策を立てる必要があります。

 なお、福島第一原子力発電所の事故当時、人命に係る影響度4で、数時間の頻度4に相当し、両数値を足して1引いた値リスク7は、米軍規格MIL-STD-882Cに準じた値で、発生翌日から「トモダチ作戦」が実行されました。

 優先順位はリスクの大きさを求めることで決めることができます。

 上述した、付着砂の依頼者、靴下の依頼者から持ち込まれた解析は、何れもめったに起こらない死体ですが、死体遺棄からの経過時間を考慮すると付着砂の頻度4、靴下の頻度0、人命が絡むことから何れも影響度4です。

 頻度と影響度の数値を足して1引いたリスク値は付着砂のリスク7、靴下のリスク3となり、付着砂の依頼は明らかに優先します。


 まとめ

 トラブル解析依頼者の独創性と組織対応力により、その人の集中力を推定しました。

 高い集中力で事件・事故に取り組むと焦点が絞られ、解決につながりやすくなります。

 組織で解決できずにトラブル解析を依頼しようとする人から提供される資料・情報は、解決のリスクがあり、疑って掛かる必要があります。

 それによって、依頼者のレベルに合わせて対応することができます。

 テレビに登場する刑事の仕事は通常一つの事件を映しますが、実際は常に5、6件抱え込んでいます。どの会社でも一人の取り組む仕事数は同様で、忙しい人との会話は短時間で済ます必要があります。

 リスクに基づく優先順位が分からない上司や顧客には、異世界での魔術は通じません。時には、気の合った複数の人と「とっちめる」ことも必要ですが主導権が取れるまで頑張ること。

 そうでなければ自分が飛ばされるか、注文がなくなるので、怒りをぐっとこらえて一呼吸、その場の雰囲気に左右されずに優先順位に目を向けて集中力を磨いて下さい。 以上

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AIへの伝言 榊 薫 @kawagutiMTT

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