第2話 何故か近い距離

 昼休み、俺の席でわびさんのアーカイブを横目に弁当を食べる。周りに迷惑を掛けないようにイヤホンをしながら。

 すると、不意に右肩を叩かれた。

 最初は少し驚いたが、よく考えて見ると(こんな事する奴は創一しかいないな)と思い、右を向く。

 ムニッ

 頬を指でつつかれた。

 

「創一、そう言うのマジだる……」


 そう言い、後ろを見るとそこには笑顔のよもぎさんが居た。


「それ、わびのさびさんでしょ」


 へぇー、艾さんみたいな真面目そうな人も、わびさん知ってるんだぁー。

 と、少し関心しつつ、返事をする。


「艾さんもわびのさび見るんですか?」


「うん、全然見ますよ?」


 少し間が空き、気まずい雰囲気になる。


「あのさ、青崎君……」


 気まずい雰囲気の中、艾さんが俺に話しかける。

 艾さんは前髪の触覚をいじっている。返答を待って居るのだろうか。


「……何?」


 少し反応が冷た過ぎただろうか。あまり女子を話す機会が無いので、冷たい反応となってしまった。


「いや、何でも無いや」


「? 分かった。んじゃ」

 

 そう言うと、艾さんはこの場から離れたので、俺は飯の続きを食べ始めた。


           *


「洸太〜」


 放課後、帰りの支度をしていると、創一に呼ばれる。

 丁度、支度が終わってリュックを背負う。


「なに? 創一」


「俺今日日直なんだけどさ……」

 

 創一は手を合わせる。


「お願いします! 今日提出のノートを全員分、職員室持ってってくれないか? 部活があるんだ」


 俺は断れない性格だ。引き受けるとしようか。


「分かった、その代わり今度素材集め手伝えよ」


「ありがたい! お願いなー!」


 そのまま、創一は教室から飛び出て行ってしまった。

 創一は軽音楽部であり、ドラムを担当している。

 彼は努力家で、俺は創一のそういう所が好きだ。


「持ってくか」


 俺はノートの山を持って教室を出ようとするとだれかに話しかけられた。


「えっと、青崎君……で合ってる?」


 後ろを向くと、そこには艾さんが居て——


「おっと」


 危うくノートの山がバランスを崩してノートをぶちまける所だった。

 どうやら、振り向いた時に遠心力で飛んだのだろう。


「大丈夫?」


 艾さんが近づいてくる。


「うん、へーきへーき……どっこいしょ」 


 そう言い、ノートを持ち上げる。


「良いよ、ほら持つから」


 艾さんが手を差し伸ばしてくれる。


「艾さんの仕事じゃないでしょ」


「青崎君だって今日日直じゃないじゃん」


「うぐ……」


 艾さんは俺からノートを15冊ほど奪う。


「……行こ」


 そう言い、艾さんは教室から出ていった。

 そのような様子を見て俺は


「仲良くするつもり無かったってどゆことすか……?」


 と小声で呟くのであった。

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隣の席の転校生が、実は俺の推してる自称清楚系Vtuberだった件 無名の猫 @mumeineko

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