隣の席の転校生が、実は俺の推してる自称清楚系Vtuberだった件

無名の猫

第1話 転校生はVtuber

隣の席の転校生が、実は俺の推してる自称清楚系VTuberだった件

第1話 転校生はVTuber


『んじゃ、あじゃじゃしたー』


 長い茶髪の猫耳娘——わびのさびが、にこやかな笑顔を残し、生配信が終わる。


「あー今日の配信もおもろかったなぁー! 下ネタ多めだったし、今日アーカイブ残るっかなぁ」


 イヤホンを外し、ベッドに寝そべる。


「ま、一応コメント残しとこ」


 そのまま、スマホを向き合うこと数十秒後、配信アーカイブに


【今日の配信もお疲れ様でした! 俺の嫁はやはり今日も可愛ええなぁ!】


 と、コメントを送る。

 

 わびのさび——個人勢のVTuber。

 とあるゲームの参加型配信をやっている自称清楚系の子。

 持ち前のトーク力とゲームセンスによって段々と人気を集めているVTuberで……


琥太こうたー、明日学校でしょう? 早く寝なさい」

 

 母親に自分の名前を呼ばれる。

 ふと、時計を見るともう12時過ぎ。寝る時間だ。

 

「いや、俺もう高校生だからまだ平気なのに……」


 全く、親の過保護には困ったものだ。

 その後、俺は歯を磨き、寝る準備をした後、就寝したのであった。


          *


 翌日、学校にて。


 俺は自分の席でスマホをいじっていると、誰かに話しかけられた。


琥太こうた


 たまたま、ゲームが終わった頃だったので、スマホの電源を切ってからポケットに仕舞った。


「ん、創一そういちじゃん。どした?」


 彼の名前は神無木かんなぎ創一そういち。俺の同級生の隠れヲタクだ。

 少し長めのツーブロックで、いかにも『陽キャ』っぽい見た目をしているが、彼は自分の事を『中身は陰キャ』と自称している。


「昨日の配信見た?」


「あー、昨日の猥談配信?」

 

「そうそれ」


 そんな創一に、俺は指パッチンを挟み……


「見たで」


 とキメる。

 そんな俺はお構い無しに創一は話を続ける。


「良かったよなー、セーフそうでアウトな配信。ガッツリアーカイブ残んなかったし」


「そりゃそうだろ。アーカイブ残る日なんて2分の1位だろ」

※個人の意見です


「確かに、最近アーカイブ全然残んねーよな」

※個人の意見です


 昨日の配信の話をしていると、創一そういちが少し真面目そうな顔をする。


「そういえばさ、琥太こうた


「な、なんだ創一そういち……?」


 真面目そうな目、真面目そうな声で言われた為、ガチな話題だと思ったのもつかの間……


「今日の登校中、バカ可愛い子電車に居た」


「くだらね」


「いいや話はこれからだって! それで、その子の制服がここのだったんだよ!」


「だとしてもくだらね。勝手に告ってろよ」


琥太こうた酷すぎだろ、昨日何かあった?」


 創一そういちが俺の肩を持つ。

 俺はそんな創一そういちの手を払う。


「残念、本日も通常運転、いつも通りです」


「失恋した訳じゃ……?」


「まだそれ引きずってるの? もうそれ飽きた」


「やっぱ今日の琥太こうた冷たいっt……」


『キーンコーンカーンコーン』


 創一そういちが何か言ってる中、HRのチャイムが鳴る。


「やべっ、琥太こうた、また後で」


 そういい、創一そういちは自席へ戻った。


           *

 

 HRのチャイムが鳴り止むと、サラリーマンのようなメガネの先生が前の扉から入ってくる。

 教卓の前に行くと止まりだし、息を大きく吸う。


「これからHRを始める。起立、気をつけ、礼!」


「「「「おはようございます」」」」


「それでは、今日は——」


 生徒達が座りだすと、先生が話を始める。

 俺はそんな先生の下らない話を、右から左へと流して行く。

 

「今日は、そんな感じですね。……っあ後、」


 先生が何かを思い出したかの用に言う。


「今日から転校生が来るぞ」


 その瞬間、クラスがザワつく。

 ざわつき方は2通り。


「男子かな!? イケメン!?!?」


 と騒ぐ女子と

 

「いや女子やろ! 完璧美少女求む!!」


 だった。

 別に、俺は「2次元しか勝たん」と言う属性なので、可愛い子が来ていても「可愛い子来たな」位で、友達で収まる。まぁ、女友達0だけど。

 何故かって? 2次元こそ正義だからだよ。

 んな感じで皆が転校生を楽しみにしていると、教室の扉が開いた。

 

「可愛い子ぉ!」「イケメンんんん!」


 期待の嵐の中、教室内に入ってきたのは……


「うおおおおおおお!」


 男子の願いの通り、美少女だった。

 黒いストレートの効いた長い髪、少し明るめの茶色い瞳。

 彼女は、教室に入るなりお辞儀をし、黒板の前に立つ。

 そして、チョークを手に取って黒板に文字を書いていく。自己紹介……だろうか。

 草冠に、「メ」? 艾と書いてある。

 続きの文字は翡翠ひすいとあり、こちらは読めた。

 名前を書き終えると、チョークを黒板の縁に置き、こちらを向いては


よもぎ翡翠ひすいです、よろしくお願いします」


 と言う。何処か聞き覚えのある声だったが、そこは触れないで置こう。変に聞いて変な空気になったら嫌だもんね。

 ってか、高校になっても転校生ってくるんだ。受験はどうやってんだろ。

 ここの学校も馬鹿ではない。

 だからこそだ。どうやって入って来たのだろうか。

 転校についての学校の制度なんて知ったこっちゃないが、翡翠このこは頭が良いと言う訳だろう。

 あーゆータイプはアニメとか観なさそうだし、関わらなさそうだな。可愛いけど。

 俺だって、「可愛い」だとかは思ったりする。ただ、2次元には勝てないってだけだ。別に、関わりたいって訳じゃ無いけど。

 こうして、翡翠という子の自己紹介が終わると、先生はこちらを指差す。


よもぎは、そこ。青崎の隣の席に座ってくれ」


 俺の隣の席にはなんの席もないで?

 そう思いつつ左の方を見ると案の定、隣には机があった。

 俺の席は1番後ろの席であり、1人だけ飛び出ている。まぁ、転校生のテンプレートとしてはイメージ通りなんだけどね。

 周りに興味が無さすぎて知らなかったぜ……

 そう言うのも当然、昨日までは隣に席なんて無かったのだから。


「わかりました」


 彼女はそう言うと、こちらに向かって歩いてくる。

 まぁ、厳密に言うと俺の隣の席に向かっているのだろうが。

 艾さんが隣の席に付くとHRの終わりを告げるチャイムが鳴る。

 先生が終わりの挨拶をすると同時に、クラスメイトが一斉に此方に来た。

 男子と女子と、男子男子男子……

 男子率が高い気がするがそこは気にせず行こう。

 

「何処の学校から来たの!?」


 や、


「友達なりませんか?」


 など。四方八方から質問をされている。

 そんな中、彼女は1つ深呼吸をして


「すみません。私、人付き合いが苦手なので友達とかそう言うのはちょっと……」


 と控えめに言った。

 そういうの、人付き合いが苦手だと断る事すらままならなさそうだけどなー。

 と思いつつ、人混みが苦手なので俺は創一の所へ向かった。

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