第4話 カッコイイ上司(女)に迫られます

じゅんさーん。なんであたしは結婚させられたんでしょう?よくよく考えたら一緒に住むのはいいとして、結婚する必要はないですよね?」

「そ・ん・な・こ・と・な・い・わ・よ♡だって、風音ちゃんは警察関係者じゃないから、一緒に住むには結婚して家族になるしか方法はな・い・も・の♡」

「千早、諦めや?人生、楽しんだもん勝ちやで?」

ゆずさん、ここは禁煙です。吸うなら外で!」

「えー、外も吸ったらあかんのよ。なぁ、千早ぁ。どこで吸うたらええ?」

「じゃあ禁煙しましょう、禁煙!健康第一!」


 あたしは柚さんから煙草をとりあげる。


「そんな!口寂しいやん!千早、チューさせて?」

「さーせーまーせーんー。柚さん、そうやってすぐからかうんだから」

「からかってへんよ?いつでも本気やで?」

「へ?柚さん?ふぇっ!?」


 すっと顎に手がかかり、綺麗な顔が近づいてくる。吐息を感じる距離に唇がある。

 え?あたし、キスされちゃうの!?

 柚さんのことは嫌いじゃないし、素敵だと思うけど、ちょっと待ってー!!

 あたし、まだキスしたことないんですー!


「隙ありー。煙草、返してもらうで?」


 ちゅっとキスをされたのはおでこだった。


「ーーっ!柚さんっ!」

「唇が良かった?」

「いや、そうじゃなくて!」

「あ、もう人妻やもんなぁ?略奪愛も燃えるなぁ?柚さんは最後まで千早の結婚反対しとったんやで?」


 ふーといつの間に火を着けたのか、柚さんは煙草をふかしている。あたしはひとまず禁煙を諦め、溜息をついた。


「あ、れ?先輩はまだ来てないんですか?」

「あぁ、あいつはで。千早を見捨てたバチが当たったんと違う?」


 さらりと知らされる先輩の死にあたしは動揺する。


「“死神”に関わるってのはこういうことや。せやけど、千早は大丈夫そうやん?案外“死神”に気に入られたんかもしれんな?」

「……あの子はそんな悪い子じゃないですよ。作ってくれた朝ご飯、優しい味がしましたもん」

「ほー、“死神”は料理上手なんか?」

「……はい。他人の手作りのご飯なんて久しぶりに食べました……美味しかったです」


 あたしの言葉にふうんと柚さんが相槌をうつ。


「……もぉ、したんか?」

「したって何をです?」

「夜の営みや」


 柚さんの言葉に顔がブワッと赤くなる。

 いやいやいや。

 出会って1日でそんなことしませんよ!?

 お互いのことまだまだ何も知らないですし。


「してませんっ!」

「夫婦やのに?」

「夫婦だけどですっ!」

「じゃあ、質問変えよ。……千早はソウイウコト興味あるん?」


 耳をくすぐるように囁かれる。


「ーーっ!わかりませんっ!淳さん、助けてくださいよっ!」

「ジュンにはコーヒー頼んだからおらんで?」


 太ももを撫でられ変な声が出そうになり、あたしは柚さんを睨みつける。


「かーわい」


 柚さんは楽しげに笑っている。


「離婚したかったら、柚さんにいつでも言うんやで?」






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同棲彼女はいわくつき 彩歌 @ayaka1016

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