もふドル、始動!
「これより我らは、この男とともに獣人アイドルとして頂点を目指す!」
銃器を構えた隊員が獣人娘たちを包囲しつつあるなか、リオが宣言し直す。
ほっとする男を尻目に獣娘が言葉を続ける。
「だがな、祭りは別だ。我らの力を示せ! 完膚なきまでに叩きのめすのだ!」
「ええぇぇぇぇぇ!?」
一郎の声が新宿御苑の夜空に響き渡った。
結局、突入部隊は獣娘たちからの一方的ともいえる蹂躙を経て、コテンパンにのされることに。
死人が出なかったのは彼女たちなりの心遣いによるものか。
指揮官の目前に迫った獣娘らが、平和的な交渉の後、この世界での権利を確保したとか、しなかったとか。
やがて時は経ち……。
軽快なシャッター音。
「いいね〜、その艶っぽい表情。今年のグラビア女王はメルルちゃんに間違いないね」
「あら、わたくしごときがそんな」
たわわな胸を揺らして微笑む水着姿の羊娘。
「なんていう人間離れしたアクロバット! トリッキーでファンタスティック!
今年のパルクール頂上決戦の優勝者はモッチーだ!」
「へへん、おいらにかかりゃこんくらい屁でもないね!」
涼やかな胸を張り、愛嬌を振り撒く猿娘。
「かかってこいや〜!」
「ああっ! なんと宙に放り投げた〜!」
トップロープから対戦相手に跳びつくと、空中だというのに関節という関節を極め、脳天からマットに叩き落とす。
「黒いしなやかな肢体にチャンピオンベルトが光り輝いてるぞ! その名は……ラビーナ〜!」
高らかにチャンピオンベルトを掲げる黒兎娘。
「俺に勝とうなんざ、万年早ぇんだよ!」
そして、時と場所は変わる。
『イチロー、行ってくる!』
次々と一郎にハグをする獣娘たち。
「ああ!」
獣娘たちの背中を見送る。
たった一言の相槌、それだけで十分だった。
満員御礼の東京ドームはいま、静寂に包まれていた。
小さな音色が聞こえてくる。
音は次第に大きくなり、一斉を風靡した新曲のイントロが始まった。
ステージにさまざまな色彩のスポットライトが光を落とす。
その光の中には、麗らかな衣装に包まれた彼女たちが静かに佇んでいた。
流麗な歌声が響き、聞く者の心に刻まれる。
蠱惑的な踊りが観衆の目を奪う。
時折、観客席まで飛び込む、人間離れしたアクションが大歓声を引き起こす。
「みんな〜! 来てくれてありがとにゃ〜!」
「俺たちのことがそんなに好きか〜!?」
「本日も皆さまのために歌います」
「獣娘が好きか〜〜〜!?」
「そんなに好きなら殴ってやるぞ!」
「今宵! 燃え尽きるまで歌い尽くす! 我らの伝説はここから始まる! 存分に応援しろ、愚民ども!」
「リオちゃん、愚民じゃないよ!?」
間奏の間に間に、次々マイクパフォーマンスを行うミャウ、リオたち。
そのたび、歓声が巻き起こる。
歌が、歓声が……東京ドームを支配する。
リオの宣言通り、ここから彼女たちの伝説が始まったのだ。
もふもふに包まれた獣娘によるアイドルグループ……もふドルの伝説が!
そして……もう一つの伝説がまた、生まれようとしていた。
彼女たちが紅組だとしたら、白組と言える存在。
代々木公園の中ほどに突如現れた建造物群。
獣娘たちと同じくもふもふに包まれた……容姿端麗な獣男たち。
アイドル活動を皮切りに、グラビア界、プロレス界、スポーツ界、お笑い界などなど、多岐に渡って獣人たちが活躍する世界、それがいまの地球だ。
彼女たちの可能性は果てしなく、夢と希望にあふれ、突き進むのみ。
誰も思いつかないような未来が待っているのかもしれない。
「みんなに愛を届けるお仕事、アイドルって……楽しいにゃ〜!!!」
東京の空にミャウの一声と大歓声が響き渡る。
何者にも止めることができないほどの熱狂的なライブは、まだ終わらない。
もふドル 〜異世界からやってきたモフモフ獣人娘たちが現代社会でアイドル無双する!〜 こい @k_o_i
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