救世主

救世主

私は歯並びは良くないほうです。

コンプレックスのひとつでもあります。

しかし、日常生活で特に困ることもないので、

このままにしています。

それに歯並びを直すとなると、

お金も時間も少なからず奪われてしまうでしょう。

そう考えると、

今のままでいいのではないかと思ってしまうのです。

一方、テレビに出てくる芸能人の

ほとんどの人たちの歯並びは、不自然なくらい綺麗です。

特に、白い歯が整然と並んでいるのを見ていると、

まるで骨の一部が剥き出しになっているようで、

ぞわぞわぞわっと鳥肌が立つほど

怖く感じるときがあります。

むろん、健康や見た目の印象などを考えると、

圧倒的に歯並びがいいほうがいいに決まっているのですが…。

そんなふうに私の心が揺れまくっているとき、

現代のジャンヌ・ダルクのように

テレビに突如として現れたのが、あのさんでした。

あのさんは「歯並びの悪い人が好き」と、

正常性バイアスをぶっ壊すようなことを

平然と言い放ったのです。

あのさん自身は歯並びがいいようなので、

その優越感から発せられた言葉とも考えうるのですが、

仮にそうだったとしても、

その一言は金言のようにきらきらと輝いていました。

そして、ガリレオ・ガリレイの

「それでも地球は回っている」

という言葉に匹敵するくらい衝撃的でした。

（ガリレオはこの言葉を言っていないという説もありますが…）。

恐るべき令和のちから。

恐るべきZ世代のちから。

とか言って、

時代や世代のせいにしてしまいたいのは山々なのですが、

実際のところは、

あのさんという１人の人間の強靱な個性のちからが

生み出した発言だったのでしょう。

ともあれ、

あのさんの「歯並びの悪い人が好き」という

逆転の発想のような一言に、

そのたった一言に、

私は驚き、私は喜び、

私は何より救われる思いがしたのでした。