美少女霊能探偵団〜義妹を庇い事故に遭った俺が憑依した小学生女児のママは義妹で、身に覚えないけどパパは俺らしくて、俺はまだ死んでおらず、なぜかTSして美少女になってしまったので、義妹から処女を守りたい〜
第5話 純真無垢な巫女の聖水は非売品であり、製造方法も明かされておりません
第5話 純真無垢な巫女の聖水は非売品であり、製造方法も明かされておりません
士道は事故に遭った横断歩道に来ていた。
レイハの身体に憑依して、美少女霊能探偵団とともに。
「伝説のゴーストハンター神楽士道さんがレイハちゃんの身体に憑依しているとは驚きやわ」
『リンちゃんは幽霊は見れないけど殴ることができる子なの』
美空の書いた小説の大ファンらしい。
士道にゴーストハント経験はないのだが。
「レイハちゃんのお父様ですわね。レイハちゃんのお友達……いえ親友の四宮美咲と申します」
『ミサキちゃんは友達に月謝を払おうとする残念お嬢様なの。友情にお金はいらないの。情報収集や車は出してもらっているの』
お嬢様らしいのだが、人間関係が不器用らしい。
あとレイハからはママに似ていると思われている。
「あ、あの! 私に浄化されない生霊さんに会えて光栄です」
『ミコトちゃんは神社の娘さんで巫女なの。強い浄化の力があるの。ただ問答無用で浄化する体質だから霊を見ると興奮するの。あととても恥ずかしがり屋なの』
一人だけ見上げる形で憑依している俺の顔を見てくるミコトちゃん。
巫女装束にランドセル姿で毎日登校しているらしい。
恥ずかしがり屋とは一体。
全員レイハのクラスメートで、レイハを含めた四人で美少女霊能探偵団らしい。
『なあレイハ。あと二人は誰なんだ?』
『本日のゲストなの。細いのがリンちゃんのお兄さんの琢磨さんでお兄ちゃん役。筋骨隆々でパツンパツンの女子高生姿の男性がミサキちゃんのボディガードの近藤さんが義妹役なの』
『配役に無理ありすぎるだろ!?』
士道を襲った悪霊は血の繋がらない兄妹に強い敵愾心を見せるらしく、正しく浄化するためには血の繋がらない兄妹を用意する必要があった。
そこで代役を立てたらしいのだが。
「お兄ちゃん私怖い」
「じゃあ手を繋ごうか」
「うん」
お兄ちゃんと呼んでいるのは身長二メートルの女装した大男の近藤さんであり、手を引いているのは女性と見間違うほどの美少年の琢磨くんである。
戸惑いのない琢磨くんが凄い。
「……気を取り直して浄化するか。封印はこの石に巻かれた縄を切れば解けるんだよな」
『そうなの。そして琢磨さんとボディガードの近藤さんがイチャイチャして実体化したところを浄化するの』
「あの二人がイチャイチャ。……俺は浄化の方法とか知らないんだけど」
『秘密兵器があるの。ミコトちゃん聖水持ってきているの?』
「う……うん。ちゃんと用意したよ」
「えっ? ミコトちゃんにはレイハの声も聞こえているのか」
「は、はい」
緊張しているミコトちゃんから綺麗な香水瓶を渡された。
中には黄色い液体が入っている。
「これが聖水」
「……あまり見ないでほしいの」
「ああ悪い」
『パパ……デリカシーないの。その清らかな巫女の聖水は非売品なの。浄化の力たっぷりなの。レイハたちも製造法を知らないけど深く突っ込んじゃいけないの』
「清らかな巫女の……聖水? それっておし……」
その言葉に顔を赤くするミコトちゃん。
「デリカシーないわぁ」「本当ですわね」と会話をするリンちゃんとミサキちゃん。
そしてレイハはダメ押しする。
『レイハたちはシ瓶と呼んでいるの。けれど本当に製造方法はミコトちゃん以外知らないの。だから深く追求しないのがマナーなの』
「尿瓶!?」
『パパ……メッなの!』
「わ、悪いミコトちゃん」
「尿瓶じゃないですからね!?」
ミコトちゃんの否定に説得力はないが信じよう。
とりあえす武器は手に入れた。
気を取り直して、悪霊の封印された石のしめ縄を切る。
すると見覚えのある黒いモヤが出てくる。
同時に横断歩道では三文芝居が始まる。
「待てよ!」
「お兄ちゃんはどうせ私のことを妹としか思ってないくせに」
「……それは」
横断歩道で振る舞われる無駄に高い演技力。
けれど義妹役は胴ほどありそうな太い筋肉質の太ももをさらけ出しているミニスカ女装男だ。
それでも悪霊は『義妹』の気配に反応し、実体化して……固まった。
二度見した。
そして周りに助けを求めるように見回して、レイハに憑依している俺を仲間と思ったのかすがるように見てくる。
悪霊もさすがにアレはなかったのだろう。
『パパ今なの! シ瓶は霊体に当たると勝手に砕けて消えるの。それでパパが悪霊に勝ったことになるの!』
「お、おう! わかった」
悪霊を早くあの地獄から開放しなければ。
……ではなく、悪霊を浄化するために黄色い聖水を投げつける。
するとレイハの言葉通り、砕けた聖水が霧状に広がり浄化されていく。
『ふれ……ぐらんす』
最期に謎の一言を残して悪霊は天に昇る。
途端に士道の魂が強く輝き出した。
囚われていた士道の魂の欠損が修復されたのだ。
『あ……れ?』
『魂が元の身体に戻りたがっているの』
『そうか……色々とありがとうなレイハ。お前は自慢の娘だ』
『ふふん。もっと褒めるの』
最後はレイハのドヤ顔に見送られて、士道は元の身体に帰っていく。
十一年の眠りから目覚めるために。
◯ ◯ ◯
士道の病室。
医者と美空。そして娘のレイハが驚愕の表情を浮かべている。
意識不明の患者が十一年ぶりに目覚めたのだ。
ある意味当然のことだが、レイハまで驚いているのがおかしくて。
サイドテーブルの鏡を見ると……また見知らぬ美少女がいた。
「だ……誰? また憑依した?」
『パパ落ち着くの。その身体は間違いなくパパなの』
脳内に直接話しかけてくる声。
レイハの霊能力だろう。
『……レイハの幸せ家族計画は成功したの。でも想定外なの。最後の悪霊は義妹を狙うタイプで陰の魂を大量に持っていたの』
『陰の魂?』
『陰陽なの。男性は陽で、女性は陰なの。パパはつい先日ママに大量の陽の気を絞り取られて、弟ができた直後だったの。そこに大量の陰の魂が入り込んだの』
『つまり?』
『パパは奇跡の性転換を果たしてしまったの! しかも魂の量が多かったから若返ってもいるの! まるで女子高生なの! レイハもビックリなの!?』
「俺もビックリだよ!?」
大混乱。
説明しているレイハも大きく目を見開いて困惑している。
医療関係者も受け入れられないだろう。
けれど美空だけは違った。
「お兄ちゃん……おはよう。十一年ぶりだよ」
「……おはよう美空。でも今はそれどころじゃなくて」
「どんな姿になってもお兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。私はお兄ちゃんのことを愛しているから。だから……だからよかった」
涙を流したながらの抱擁を素直に受け入れる。
寝たきりの状態からの帰還。
たとえ性別が変化していようと士道は目覚めた。
美空が受け入れてくれている。
ならばそれでいい。
そう自分を納得させようとしたが。
『パパ……それともママ?』
『パパでお願いしていいか』
『了解なの。パパ貞操に気をつけるの』
『貞操?』
『ママはパパの精子を冷凍保存しているの。つまり今のパパの卵子にパパの精子で受精卵を作れば、パパパパクローンが作れるの』
『すまん……なに言っているのか理解したくない』
『ママのパパのことを遺伝子レベルで愛している。たぶんパパを襲ってパパパパクローンを作ることに躊躇いはないの』
「そこは躊躇えよ!?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「なんでもないよ美空」
『なあレイハ……男に戻る方法はあるか?』
『陽のオーラを注入すれば? 魂のことなら美少女霊能探偵団にお任せなの。パパも仲間入りするの?』
『……頼む。俺を男に戻してくれ。』
こうして士道は能美少女探偵団の一員になり、十一年のブランクを埋めるべく、高校に復学することになった。
女子高生として。
美少女霊能探偵団〜義妹を庇い事故に遭った俺が憑依した小学生女児のママは義妹で、身に覚えないけどパパは俺らしくて、俺はまだ死んでおらず、なぜかTSして美少女になってしまったので、義妹から処女を守りたい〜 めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定 @megusuri
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