5、プロや日本代表を目指す人への提言 世界を意識して
1998年というとウィンドウズ98が発売された年ですから、まだまだインターネット環境が整っていませんでした。今でこそ、インターネットで世界中のサッカーの試合を観戦出来ます。しかし当時は、ネット回線も下手したらダイヤルアップで、良くてISDNやADSLといった程度でした。中田選手の試合を観るのも一苦労です。それ以前の時代に育った中田選手は、海外サッカーを観ようと思えば、衛星アンテナを用意してテレビ中継の限られた試合を観戦するしかなかったでしょう。或いは、どこからかビデオを入手しなければいけません。そのように悪い環境だった時代でも、中田選手は海外のトップレベルの試合を観て、Jリーグのパススピードでは通用しないと悟って、世界水準でのプレーを続けていたのです。現代の選手が、その気になればどこの国のどんな試合でも容易に観れる環境にあって尚、世界のパススピードに全く対応出来ていないのは、一体何故なのでしょう。パスを強く正確に出す、この程度はプロならば誰にでも出来ます。そんなに難しい話ではありません。つまり、これが出来ないというのは、単純な意識レベルの問題なのです。世界を意識してプレーしているのか、いないのか、その違いです。世界を見据えて、このぐらいのパススピードでなければ通用しないと考え、実行し続けた中田選手。あれから25年、日本人選手も海外に出て世界と戦うようになり、どこでも世界トップの試合を観れる環境があり、何故まだあの領域に至っていないのでしょう。
自分が思うに、育成環境に問題があるのではないかと。日本のプロのトレーニング環境、教える監督やコーチ陣。もっと若い時代の、例えばユースや高校年代、更にはその下のジュニア世代のトレーニング環境、その監督たち。中田選手が世界に出てから25年が経過し、当時の世界を知る選手たちが監督やコーチとして戻り、教える側に回っています。高いレベルを知る選手が子供たちに、もっとパスは強く出すんだ、という基本から教え育てていけば、やがて台頭してくるプロ選手たちも変わってくるかも知れません。元日本代表・内田篤人選手が、日本代表のロールモデルコーチに就任し、アンダー世代等に教えています。ある大学か高校のチームに行って、学生たちを指導する動画を見ました。走り込む選手にパスを出し、シュートの形を作る攻撃の練習風景でした。「パスはもっと強く、このぐらいでいい!」と手本を見せて、全力で走り込んだ学生がそのままシュートを打つというような。こうした環境で教わった選手がプロになるのは、いつになるでしょう。ちょっと意識を変えるだけで、明日すぐにでも出来る事です。しかし、ぬるま湯に浸かった選手たちでは期待出来ないでしょうか。やはり中田選手のように、子供の頃から世界を見据えて、自ら意識してプレーしていないと難しい話なのかも知れません。今現在、プロを、世界を、日本代表を目指している子供たち。または教える監督やコーチでも構いません。もちろん、既にプロとしてプレーしている選手でも構いません。もしこれを見た、知った、そうだったのかと気付く事があるなら、明日からでもパスを強く正確に出す、という一点のみを意識してプレーして欲しいと思います。もう一度言いますが、決して難しい要求ではありません。意識を変えるだけで、プロなら誰でも簡単に出来る事なのです。元日本代表・遠藤保仁選手は言っていました。「止める、蹴るの技術だけは誰にも負けない」と。この基本を愚直に繰り返す、少しでも速く正確なパスを味方に届ける、それが第一歩であり、それだけでも見える景色が変わるのです。Jリーグのレベルから、世界のレベルへと。
日本サッカー全体の底上げが進み、Jリーグと日本代表のレベルが上がり、世界のトップと対等に戦えるようになり、そしていつか追い越していく日が来るのを、心待ちにしています。
【サッカー】浦和レッズ対マンチェスターシティ 世界との差 武藤勇城 @k-d-k-w-yoro
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