暇つぶしに読む短編集

@hurusuna

第1話 バラバラの時計

僕は友達が少なかった。

その日は唯一と言っても差支えが無いような友達と話をしていた。

すると僕は友達が不思議な時計をつけていることに気が付いた。

その時計の針は先端にピンクの可愛らしい星が、文字盤には木目調のデザインが大人びた雰囲気を醸し出し、文字盤を囲むベゼル部分には中心から右側が黒色、左側が白色のモノトーンなデザインになっていた。

まるで様々なパーツを継ぎ接ぎして作ったような時計だった。

僕は時計が気になり、友人の時計を見ていると、

「お、この時計気になるか?カッコいいだろ」

僕の視線に気づいた友達は言ってきた。

「これな、バラバラの時計って言って、いろんなパーツを好きな奴らと交換できるんだぜ」

「へーそんなのがあるんだ」

適当な返事をしつつ、そのまま話を聞いていた。

どうやらこの時計は、好きな友人や恋人と互いのパーツを交換することで、大切な人たちと共に時を刻み、友情だとか愛情だとかを表現するものらしい。

僕はこいつとだったらパーツを交換したいなと思っていた。


僕は帰り道に書店によると、雑貨コーナーでその時計が売られているのを見つけた。

価格は8000円と、中学生の小遣いとしては少しお高めだった。けれど僕はあいつとパーツを交換できればいいなと思い、奮発して買った。

早く開けたいなーだとか、わくわくした気持ちを胸に秘めながら、どこか足早に帰路に就いた。


僕は自宅に到着すると、制服を着替える前に時計の箱を開けていた。

よくよく説明書を見ると交換可能なパーツは3つまでであった。

僕は手に持っていた時計を天高くつき上げ、地面にたたきつけた。

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