最終話 さあ発掘だ

 埋葬組の悪事は明るみになる。カメラには、古田が根蔵を銃で撃った映像もしっかりと収められていた。

 警察は埋葬組を逮捕し壊滅に追い込んだ。記者会見で警察が発掘隊のお手柄と感謝の言葉を述べた。

「しかし、埋葬組とはけしからん!」

 けしからんが口癖の警察はさらに出世するだろう。


 仇を取った根蔵と沈芽は、それぞれ母の葬式へ出た。沈芽は義理であったが母に変わりはない。埋葬組を倒したとはいえ、払った犠牲も大きかった。


 それから、大道発掘隊は解散。皆それぞれ自分の燃やされた家へ帰って行った。


 木枯館長の家に世話になる根蔵と沈芽。その隣に引っ越してきた環状線家。全ては終わり、また前と同じ生活が戻ってきた。


 ホームページで校長がどうなったか調べてみたら、1度破産した後盛り返したらしいのだが……。その浮き沈みの激しい生活がもたらした多大なストレスが原因で、高血圧の彼は亡くなったと記してあった。

 ホームページの最後の言葉は『やっぱり金があれば盛り返せる。世の中は金だ』であった。

「校長……金に振り回されて死んだら元も子もないだろ」

 根蔵はパソコンの電源を落とした。


 この夏、根蔵らが発掘したニャランチュラが商品化され、爆発的に流行した。ニャランチュラのバッグにニャランチュラの帽子など、数え上げたらきりがない。火付け役は、北村能天気である。


 夏ももうすぐ終わる。風鈴の音と夕方の涼しい風が寂しさを演出していた。

 大冒険は終わった。この思い出を胸にこれからもたくましく彼ら彼女らは生きていく。そんな感傷に浸るほど発掘隊は繊細ではない。


 夏の終りの涼やかな風の吹く朝。根蔵とその腕に蛇のように絡みつく沈芽、牛麿と木枯館長は計画を練っていた。

「よし! 今度の発掘はここで決まりだ!」

 元気よく根蔵たちは立ち上がる。その足で京都へ向かった。新幹線から降りると、共に戦った発掘隊が全員集合していた。


「クククク、酒呑童子に玉藻の前。思えば京都こそやばい奴らのたまり場。すごいのが掘れそうだなあ」

「でもよ、今までみたいに変な目にあったらおいらは嫌だよ」

「さて、京都へ今日と」

「おいどん張り切って行くでごわす」

「お歯黒は最高や」

「拙者も楽しみでござる」

 皆で京都の山で化石掘り。もちろん、許可はすでにとってある。根蔵は牛麿と沈芽と新・我武者羅発掘隊を結成していた。


 山の奥深くで競争する。開けたところに根蔵は何かを見付ける。

「あそこだ!」

 3人は草原を駆けていく。地面を掘る3人の間を爽やかな風が通り抜ける。ドーピングの影響でまだ少し第六感が鈍っているので何が埋まっているのかはっきり視えなかった。

 しばらく掘ると、ガチンという音が響いた。穴を覗き込む3人。

「俺は酒呑童子だと思うぜ」

「根蔵君、酒呑童子もいいけど玉藻の前じゃない?」

「まあまあお二人さん、ワイはなんでもええんやおもろければな」

 慎重に掃けで化石の土を払う。期待に胸膨らませる瞬間。この瞬間に代えられるものはない。

「さあ、取り出すぜ」

 根蔵がその化石を取り出し確認する。その中身は……。

「ニャランチュラかよ!」

 澄んだ夏の青空に根蔵の声が吸い込まれていった。


『「」』

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幻想・化石発掘隊 化け猫ニャン吉 @18315

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