第32話 新たな扉(終話)

俺とリアナはまた、乗合馬車に乗って今度は実家へと戻る。

ゴトゴトと乗り心地が悪いったらありゃしない。

あのエルフ2人にはもう会わないだろう。

しかし何だったんだあいつら。


****


「ただいま~」

俺は義母ナタリアに声をかける。

「おや?早い帰りだねぇ。帰る方法は見つかったのかい?」


「大きいな何それ?」

俺はテーブルに置いてあるキラキラした物を発見した。

「ああ、水晶だよ。大きいだろ。こんなのでも結構値がするんだよ」

「へええ」

「占いとかするイメージだけど」


何だか不思議の感じのする物だな。

リアナは覗き込んでいた。

「昔使った物みたいでね。木箱に入っていたよ。それと何かの資料と一緒にね」

「何かの暗号みたいだな」

「古代文字だよ。なんだろうねぇ」


「あれ・・?」

文字が読めるぞ。

「・・異世界への移動方法・・」

「へ?」


「帰れるかもしれない!」


****


それから、ノアとナタリアさんは必死に解読をしていたようだった。

まさか帰還方法が見つかるなんて・・・。

諦めていただけに、何というか複雑な心境だった。


「ノアと一緒に行くか、残るか・・」

私は用意された寝室のベッドの上で目をつぶる。

「ノアと一緒にいたいな」

一度実家に帰って、お別れを言ったほうが良いのだろうか。

それとも何も言わないほうが良いのか。



****



「ねえ、ノア私1回実家に帰った方がいいかな?」

「え?何で?」

「ほら、もう帰って来れなくなるでしょ。お別れの挨拶っていうか・・」


「・・・・」

「大丈夫だよ。また帰って来れるから」

「え?」


「調べてみたら、行き来出来ることがわかったんだ。俺が一緒じゃないと出来ないかもだけど」


「帰って来られるの?」

「そういうこと」

「なあんだ。悩んで損した」


俺もそのことは心配していた。

リアナにとって、一緒に行くことは家族に会えなくなることだから。

行き来出来れば何の問題も無い。

都合よすぎな気がするけど。


「魔法はこの通り。ちゃんと覚えたね」

資料をもう1回見て確認する。

「うん」


「じゃあ、行っておいで」

まるで、すぐそこの町に行くように促す義母ナタリア

失敗したら戻ってこれないというのに。


「またおいで」

俺は、水晶を手に抱え魔法を使う。

詠唱は必要なくて、頭の中でイメージする。


道よ開けオープンゲート


目の前に白い道が出来る。

手を振るナタリア。

リアナは怖いのか、隣で俺にくっついている。


「大丈夫だよ。多分」

「怖いんだから仕方ないじゃない・・・」


やっと家に帰れる。

家帰ったら、めちゃくちゃ時間過ぎてたりしないだろうな・・。

何十年後とかシャレにならない。

今は無事に帰れるまで考えないでおこう。


目の前に白い大きい扉が現れた。


「リアナ開けて」

「わかった」


扉を開けると、そこには・・・。

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異世界転移して記憶を失った俺とパーティを追い出された彼女 月城 夕実 @neko6

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