第31話 諦め

俺は宗教は、死ぬ時と結婚式しか関りがないと思っていた。

幽霊とかと同じ。

目に見えないから。

信じない。

もしかして、認識を改めざるをえないのかもしれない。


「神様か…」

魔法が使える世界なのだ。

この世界では、神様が本当にいても不思議ではないのかもしれない。



****



「おや?」

家の倉庫を片付けていたら、何か古めかしいものが出てきた。

何だろうこれは?

大事そうに木箱に入った水晶。


「うーん」

思い出そうとするが思い出せない。

家には勇者にまつわるものが、ゴロゴロ転がっているのだ。

剣と盾はどうせ使わないからと、ノアにあげてしまった。


「何かのアイテムかしらね?」

わたしは首を傾げる。

見ると高そうな丸い水晶。

天然物だけあって結構な値段がするのだ。

「磨けば光るかも」

やることも今は特にない。

キレイにして飾ってみようか。


「いったい何を始めたんだ?」

夫のハイムが訊いてきた。

「倉庫で見つけたの。キレイになると思ってね」

キレイな布で優しく水晶を磨く。

そういえば、自分の杖もこんなに磨いたことないわね。


「お前さぁ、自分の杖も磨いたこと無かっただろう」

言われてしまった。

「そうだったかねぇ」

「それ、あれだ、伝説のって言われてたやつじゃないか?勇者が消えるときに使ったっていう・・・」



****



「聖女って何だ?」

「本によると、聖なる力・・回復魔法を使ったり、強力な光魔法を使う人ってかいてあるわね」


俺とリアナは本を図書館に返しに来ていた。

そのついでで、少し調べていた。

「聖女が現れると分るらしいわね。信託ってやつ?」

それで教会とか云々って出てくるわけか。

まぁ、今更か。


「どうするの?冒険者ギルド行って仕事探す?」

「う~んどうしようかなぁ」

一応義母ナタリアに言っておいたほうが良いかな。


「いや、実家に戻ろう。一応言っておいたほうが良いと思うし」

「それもそうね。私も実家久しぶりに帰ろうかな」


そういえば、リアナの家の話聞いたこと無いな。

「ちょっと、遠いけどね。田舎の村よ。あら、変なこと思い出しちゃったわ」

リアナは顔をしかめた。

アイツアレンと同じ故郷だから・・」

「もう終わった事だし、気にしないほうが良い」


そうは言っても、村に帰れば嫌というほど思い出すんだろうな。

そればかりは、俺もどうしようもないからな。


「そういえばさ、また馬車で移動するのか?」

地味に疲れるんだよな。

「まさか、飛んで帰りたいのかしら?ん~そうねぇ。途中からだったら大丈夫かしらね」

どうやら田舎の方へ行く分には構わないらしい。

都会の方が、魔法使いが多いって言ってたしな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る