第30話 帰る方法

オレは、宿屋の窓から外を眺めていた。


「聖女か、今そういう奴いたっけ?」

夢に見たが、憶えていないな

オレはエリーゼに聞いた。

「わたくしが、知るわけないでしょう。あまりこちらに来ないというのに・・」

「それもそうか」


確かあの魔法には、聖女の魔法がいるはず。

「聖女がいないとなると、あいつ元の世界に帰れないかもな。知らない方が幸せなのか?」



****



本によると教会で・・と書いてあった。

「教会って、この世界では何か信仰があるのか?」

キリスト教みたいな?

「太陽と月の神様ミーダリア神を祭っているわね。その教会の事じゃないかしら」

でも、何か抜けている気がするんだよな。

何か重要な要素が。

「とりあえず教会に行って聞いてみるしかないか。他にも分かることがあるかもしれない」


****


「ちょうど王都に来ているから、大聖堂に行ってみましょうか?」

リアナは大きい建物を指さして言った。

総本山的なものだろうか。

大きい建物で、沢山人が入りそうだった。

信者なのだろうか、ちらほらと見かける。


「お祈りにこられたのですか?」

白い衣服をまとった女性が話しかけてきた。

「少しお話を伺いたいのですか、よろしいでしょうか」

リアナは臆することなく話す。


「異世界ですか・・勇者様・・あ、もしかしたら文献があるかもしれません。お待ちください」

女性は奥の方へ消えて行った。

「意外と親切だな」


この世界の住人は、一部を除いて親切な人が多い気がする。

「意外は余分でしょ」

すぐに女性が戻ってきた。

「恐らくこちらだと思います。聖女様が異世界への道を作ったとされていますね」


「聖女様とは?」

「1000年前は聖女様という方がいらっしゃったんですよ。その方しか使えない魔法だと思われますが・・」

「聖女って今はいないのか?」

俺は訊いてみた。

「わたくしの知る限り、いらっしゃいませんね。特別な力を持った方ですから」


「え・・マジか」

先ほどの大聖堂にいた女性によると、神の力を繋ぐことができる、聖女の力が必要になるらしい。

今は聖女はいないらしい。

数百年に一度現れるらしく・・。


「帰れるとおもったんだけどな」

俺は噴水のベンチにうなだれていた。

現実は甘くないってことか。


「今はいないけど、数年したら・・こともあるんじゃない?」

「・・・そうだな」

諦めるのは早いってことか。

しかし、何年も待ってはいられない。

死ぬまでに帰れるのだろうか。


「あ~考えるのやめた」

結論が出ないのを考えていても仕方ない。

また、冒険者やるしかないみたいだしな。

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