第7話

 リサイタル後、私は、5年前に少年と出逢った「星降る丘」の頂上へと向かった。グランドピアノを象った石碑には、”Smileスマイル”という碑文の周りを包み込むようにして星の彫刻が施されており、“Shunsei Saekiしゅんせい さえき” という故人の名が刻まれていた。赤や黄色や白、ピンク、紫などの色とりどりの花々が、彼のピアノを褒め称えるように石碑を彩っていた。


 ピアノの神様に愛されながらも、不治の病で夭逝した天才ピアニスト、佐伯駿星さえき しゅんせい


 彼の命日である今日、「星降る丘」内に併設されている、彼の名を冠した「駿星ホール」にて、彼を偲ぶリサイタルのピアノ奏者として選ばれたことを、私は誇りに思った。


「ねえ、今日のお姉ちゃんの『星の夜』の演奏どうだったかな?」


「まあまあかな……まだまだ、だけどね」


したり顔をした少年が、一瞬見えた気がした。


昼間の熱気を帯びた生温い風が、ふわり、と丘を駆け抜けた。


星明かりに誘われるようにして、月見草の花が騒めき始めた。


Fin

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星降る丘の少年 喜島 塔 @sadaharu1031

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