とある略奪女の末路
去年、私は夫に浮気され離婚し、娘二人を持つシングルマザーになった。
浮気していたとはいえ娘二人には愛情があったらしい元夫は毎月養育費を振り込んでくれている事と夫と浮気相手から貰った慰謝料で何とか生活しているけれど、やはり働かないと厳しい。
好条件で働ける会社に就職する事は出来たけれど、自分の時間が取れないことに鬱々としていた。
毎日、仕事して家に帰るだけの日々、離婚の際、地元に戻ってきたが地元の友人達は結婚して遠くに住んでいるから気軽に会うなんて事が出来ない。
娘達は仕事をしている私に気を遣って積極的に家事などをしてくれ、両親が時折見に来てくれるけど、離婚する前より不自由な生活に鬱憤が溜まっていった。
「大丈夫ですか? 手伝いますよ!」
ニコリと笑って私の仕事を手伝いを申し出た彼と出会ったのは就職して一ヶ月が過ぎた頃だった。
その日は上司のミスで仕事が溜まり、残業することになってしまった私に手を差し伸べてくれた。
それ以来、時折、仕事関係で彼に助けてもらうようになって、彼に好意を持つようになった私は御礼として彼を食事に誘った。
その時に。
彼女がいること、その彼女と結婚する予定だが気が乗らないことを話してくれた。
「周囲が結婚ラッシュでそれで流される感じで結婚という話になって、もう家族や友人達には結婚する事を報告してるんですが・・・・・・、気持ちが追いつかなくて。正直なところ、気が強い彼女とやっていくのは不安で」
それから、出るわ出るわ彼女の不満。
それを聞いていて。
――彼女より私の方が良いと思わせれば彼は私に向いてくれる?
そう思った。
彼が私を助けてくれる度、彼が私の夫になってくれればと思うときがあった。
彼女に不満を持ち、結婚に対して乗り気ではないのならチャンスはある。
「ねえ、そんなに彼女に不満があるなら私にしない?」
そう甘く誘うと彼は私の手に自分の手を重ね。
「実は俺、前から貴方の事を・・・・・・」
私に告白してきた。
嬉しかった、彼が手に入ったこと、彼女に勝ったことに。
この時、有頂天になっていた私は元夫と同じ事しているなんて考えてなかった。
関係を持ち、暫くして彼の彼女に私達との関係がバレた。
私と付き合っているのにまだ不満だらけの彼女と別れていなかったのかと呆れたが、彼が「周りが何と言おうと君を守る」と言ってくれたし、話し合いの場でも「別れたくない!!」と泣きながら縋る彼女さんに。
「俺の心はもう彼女のものだ!!」
と言い放った彼はとても格好良かった。
ワーワーと泣き喚く彼女を見て、私は笑った。
彼は私の物なのだ、彼の気持ちを無視して結婚しようとしたアンタが悪い。
きっと、この時が人生最高の瞬間だった。
「馬鹿者が!!!!!!」
話し合いを終え、家に帰ると両親が家に居た。
帰宅早々、私は父から思いっきりビンタされた。
暴力を嫌う温厚な父にビンタされたショックと、どうして両親が此処にいるの? と呆然としていたら。
「アンタ、自分があの人と同じ事をしたのよ!? 解ってるの!?」
今度は母にそう言われ、泣かれ、何が何だが解らなかった。
彼と付き合ってることは私は両親に話していなかった、さすがに婚約者持ちと付き合っていると言いづらかったのだ。
「知らないのに、どうしてという顔をしているな。お前、ここ最近、夜遅くまで遊んでいると絵美から聞いたぞ。調べてみたら、婚約者持ちの男と関係を持つとは・・・・・・」
「絵美が? あの子が?」
父から娘達の話を聞いて、彼と付き合うようになって娘達を蔑ろにしていた事を思い出す。
娘達よりも彼が大事だったから。
だから、次第に娘達を疎ましくなって、冷たく接するようになった。長女である絵美が祖父母にあたる両親にそんな私の様子を話すのは当たり前の事だ。
「ああ、仕事で遅いと思って心配して声をかけてもうるさいと言われ、会話もロクに出来ないどころか夕食はコンビニ弁当ばかり、恵麻がオムライス作って欲しいと言ってきたら怒鳴られたと泣いてたんだぞ!! 可愛い孫二人を悲しませ、婚約者持ちの男と寝る女なんぞ娘じゃない!!」
父は怒りからか調査報告書と書かれた封筒を私に投げつけてきた。
封筒から私と彼がホテルから出てくる写真やキスしている写真、赤裸々に私と彼の関係が記された書類が出てきた。
それを見て、私はようやく元夫と同じ事をしていたのだと理解した。
その後、両親には勘当され、彼の両親からは罵声を浴びせられ、娘達からは「貴方なんてお母さんじゃない」と拒否され、私は孤立したが彼が居るからと安心だと愚かにも考えていた。
仕事は彼との件がバレ、私は解雇、彼は遠方の支社へと左遷になった。
彼は左遷の件が相当ショックだったのか私に強く当たるようになり喧嘩別れという形で別れ、最終的に私は独りぼっちになった。
私は彼の彼女に対して慰謝料を支払う羽目になり勘当されたとはいえ慰謝料を払えるか見張るという意味で両親に徹底的に管理され、日夜、働きづめ。
こんな事になるなら彼に手を出すんじゃなかった!!
そう嘆いても、もう遅い。
後悔しながらフラフラと一人、夜道を歩いていたら。
――罪を償え。
私の耳に誰かが語りかけた。
「ねえ、知ってる? この前、集団自殺があったところ」
「ああ、S邸跡地ね。知ってる、また自殺者が出たんだって?」
「そうそう、この前と同じ、首切って亡くなってたんだって~」
「うっそ~、それ本当? 絶対、呪われてるよ、S邸跡地!」
「私もそう思う」
浮気して別れた元彼からの電話 うにどん @mhky
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