第2話-② -deserve it.
ーー<西暦と呼ばれた時代が終わり4033年4月4日09時23分>ーー
翌朝目が覚めると、ユアがキッチンに立っていた。
ソファで寝ると腰が痛くなる。
腰をさすりながら、ユアの姿を見ると、軍の兵達が騒ぐのも納得した。
確かに美人だ。
俺の視線に気づいた、ユアが話し始めた。
昨日の夜、シエルがシャワーの使い方が分からなったり、ベッドでの寝相が恐ろしく悪かったなどボヤいている。
ユアがいて助かったよとおだてたら、気分をよくしたのか、鼻歌を歌いながら朝食作りを再開した。
ふと廊下を見ると、シエルが起きたようで、リビングに来た。
そして何故か全裸だった。
ユアは慌てて俺に見るなと注意したのと同時に調理器具を投げてきた。
「ユア、俺は色気がない女には興味がないんだよ」
『色気・・?』
あれ、シエルが反応した。
意味を理解しているのか。
ユアがシエルを寝室に連れていき、説教をしだした。
まるで姉妹だ。
朝から騒がしかったが、朝食が出来た。
ユアが作ったスープをシエルはすごく気に入ったのか、おかわりをしていた。
食事が終わり、準備をしていると、自分の服をシエルに貸すといって、ユアは一旦家に帰った。
何度もいうが、ホント騒がしいやつだ。
「シエル、うるさくてごめんな」
『ううん、あの人も暖かいです・・』
暖かい?
優しいって意味なのか。
昼になり、ユアが戻ってきた。
シエルが着たユアの服は少しだぶっとしていた。
『少し、大きいです・・・・腰のあたりが・・・』
シエル、それは言っちゃダメだ。
あぁ・・ユアがひきつった笑顔になってる。
俺は咳をならし、よし行くぞと二人に声をかけた。
グリアムの街は結構栄えていて、買い物をすることに不自由しない。
まぁ軍が近くにあり、兵士の殆どがこの街で生活しているからな。
街に出たシエルはかなりキョロキョロしている。
それを見て、ユアがあれこれ説明している。
目的のショップに着いたが恐ろしく待たされた。
どうしてこんなにも買い物が長いんだ。
『ザッド・・・』
シエルが店の中から呼んだが、どこにも見当たらない。
『ザッド、これどうでしょうか?』
シエルは試着室にいた。
「おう、どんな服だ?」
『凄く、動きやすいです』
そう言って、扉をあけたシエルが見せたものは下着だった。
シエルよ、このパターンはやめてくれ。
すでに俺の背後から殺気を感じる。
一通りの買い物が済んで、俺達は昼食にした。
シエルはめちゃくちゃ食べる。
俺達が引いてしまう程に。
ユアと俺は苦笑いしながらそれを見ていた。
そして、シエルはプリンが好物だということも知ることができた。
「少し、あそこのショップに寄らないか?」
二人はどこにいくんだろうという顔をした。
「ユア、これは世話になった例だ」
俺はユアにブローチを贈った。
女にはいつの時代もアクセサリーだろう。
案の定ユアは喜んでくれた。
ずっと大事にしますと大げさなことを言っている。
贈って正解だったな。
『ザッド・・・・、私には?』
え?
シエルも欲しいのか?
かなり意外だった。
仕方ない、シエルにはこれでどうだろうか。
俺はブレスレットを贈った。
横でユアが少しムスっとしているが、気づいてないフリをした。
『ありがとうございます』
シエルは左手首に付けたブレスレットをずっと見ている。
喜んでくれたのか、シエルの表情では分からなかった。
まぁ、いいか。
買い物を済ませ、俺達は家に戻った。
俺は、今日1日ずっと考えていたことを話すため二人を呼んだ。
「ユア、俺は国家付きの登録を解除し、一般傭兵になろうと思う」
ユアは予想していたのか、あっさり分かりましたと返事をくれた。
「明日ここを出発し、シエルと一緒にエンぺグリアを目指す」
ユアには申し訳ないが、軍との契約解除を頼んだ。
『中尉、わ、私は・・・・』
心配してくれているのだろう。
だが、ユアは少佐だ。
「お前は、自分の役目を大事にしろ」
ユアは少ししょげた顔をしたが、自分の立場を理解したのか、それ以上何も言わなかった。
「先ずは、ニュージーを目指すことにする。俺のこいつのメンテも兼ねてな」
俺は首の後ろにある、RFチップを指した。
『博士のところに行かれるのですね』
最初の行き先が分かったことで、ユアは少し落ち着いた様子だ。
「あと、シエルにも一般傭兵の手伝いをしてもらおうと考えている」
『戦うのですか?』
シエルが少し不安そうに聞いてきた。
「それを知って貰うためにな」
俺は笑顔でシエルに答えた。
移動手段は俺のビーグルを使おう。
3人乗りだから、何も問題ない。
ユアはさすがに明日も軍を休めないため、今日は帰ることになった。
帰り際凄く心配してくれたが、何かあればすぐに連絡するとなだめた。
それとシエルに手を出すなとも、くぎを刺された。
俺は色気がない女には興味がないんだが・・・。
シエルは俺のベッドで寝せた。
俺はシエルの横で床の上にマッドを敷いて寝た。
『ザッド、本当にいいのですか?』
シエルなりに気にしているのか。
「シエル、俺はお前を助けたいと感じた。これは本心だ。だから、何も心配するな。少し長い旅になるが、必ずお前を目的地まで連れて行くよ」
『・・あなたは優しすぎる・・・』
声が小さかったため、あまり聞き取れなかった。
FORCE-LINE CHRONICLE 夜摘 @Yotsumi
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