あとがき・解説
【あとがき――という名の簡単な解説】
はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。
吹井賢です。
……という挨拶はお決まりなので一応やっておきまして。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
改めまして、吹井賢です。
こちらの『一夜、二人、三度、四角』は、Skebの依頼を元に書かれた掌編です。依頼は「①既出のオリジナルキャラクターを一人選ぶ(・フルネームで登場している、所属組織名+コードネームが明らかであるなど、特定できるキャラクター、・会話の流れで名前が出ただけなどではなく、本人の姿が他キャラクターの目に触れたことがある)」「②先の項目で選んだキャラクターがプレゼントを渡す(・プレゼントは物理的に存在するもの、・『赤、緑、白、金』いずれかの色が使われている、・渡し方は自由)」「③渡す相手は人間(・既出キャラクターか否かは問わない、・一人でも複数でも構わない)」「④時期は冬」でした。
条件を見た段階で、「クリスマスの話ってことかな?」と思ったので、あえてそれは避けて(あえてね)、初詣、講義の一回目、冬のある日、と“私”とその想い人である戻橋トウヤの思い出を描きました。
忘れない内に記しておくと、今回の冒頭詩は「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」「よっつ」の数え歌になっています。「ひみつは君に」「ふとした瞬間」「みつめてしまう」「よるに聞こうか」ですね。一夜ごとに、二人の関係性を考えて、三度の出逢いを思い返し、四角い空を見上げて、彼への距離を指折り数える歌です。
まあなんと言いますか、“私”は、西尾維新著『クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識』のヒロイン二人(江本智恵と葵井巫女子)を合わせたようなキャラ造形ですね。分かる人にはすぐ分かったんじゃないかな? 普通だけど普通じゃなくて、でもその普通じゃなさがやっぱり普通、みたいな。このネタが分かると、“私”が、元ネタ二人と比べて、想い人に対して何ができなかったのかを対比できて、面白いと思います。
何を言っても蛇足になりそうなのでアレですけど、それでも色々書いてしまうと、“私”は『戻橋トウヤ』という人間のことを結構、的確に捉えていて、「普通であるだけの欠陥品」と己を卑下している彼女ですけど、言わば、「普通でしかない欠陥品」が『戻橋トウヤ』です。ですから、「似てる」「同じ」っていうのは勘違いじゃないんですよね。
そして、“私”は彼の笑みが空虚なものだと見抜いています。後半では、トウヤが珠子らしき女性と歩いている様子を目撃したわけですが……。さて、その時のトウヤの笑い方はどうだったんでしょうね? なーんて、ちょっと怖いことを書いておきます。
テーマソングは『光のどけき春の日に』。今回、テーマソングは滅茶苦茶悩んだんですが、結局これに決めました。「隠してきた答えを君に言いそうになって 慌てて顔をそらした春の午後 もう少しこのまま」「くだらなくてもいいから 話をしよう できるだけ太陽が沈むまで」辺りが決め手というか、影響を受けましたね。
曲のタイトルから分かるように、冬の話であると同時に春の話としても書いていて、今後、“私”がどうなっていくのかは作者も気になるところです。
この作品が、あなたの一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。
それでは、吹井賢でした。
一夜、二人、三度、四角 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010
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